イマジネーション
リアルが忙しくて遅れました。
そんな不思議で、少々(?)バカげたこともあって、現在の葬式に至る。
一応葬式らしくお坊さんがお経を唱えた後だったが、それからはもう飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎ。
普通の人間ならあんな遺言は無視して、ちゃんとした葬式を開くんだろうけど……これも爺ちゃんがなんかやったのかな?
「はっはっはっはっは!いやー、天国に行く前にまたこうして皆と騒げるなんてな。なぁ聖人?」
「……そうだね」
そして最初も最初に言った通り、ここには爺ちゃんがいる。幽霊になって飲み食いしている爺ちゃんが。
「あれ?宮臓の棺桶の上に置いてあった供え物が減ってねぇか?」
「気のせいじゃろ。それよりも早く、お前さんも歌え。さぁさぁ」
「あー!わかったわかった。つうかお前は飲み過ぎだ」
こんなに騒がしいと、お供え物が急に消えても皆気付いていないみたいだ。
まぁそれはちゃんと爺ちゃんが食ってるし、何も問題はない。
ちなみにこうして爺ちゃんの幽霊が見えるようになった理由は、聡い人ならもうわかるだろう。
そうだよ、俺だよ。
お坊さんがお経唱えている時に、『お経であの爺ちゃんが成仏するんだろうか?』と思っていたら、爺ちゃんの棺桶の上に座った下半身が透明な爺ちゃんが現れた。
いや。元からそこに座っていたらしいから、見えるようになったというのが正しいか。
どうやらこの魔法(仮名)は、一度気になり出したり、『だったら良いのに』などのたられば話を想像すると、それを実現することが出来るみたいだ。
なんの会話か気になって耳を澄ました時や、魔法の力が発現して病気が治れば良いのに、とかそういうものだな。
それと同じで、爺ちゃんはちゃんと成仏したのか気になったから、爺ちゃんの幽霊が見えるようになったんだろう。
「いやー。さっそく聖人もその力を使いこなしているようで安心したぞ!」
「別に使おうと思って使った訳じゃないんだけどな…」
小声で幽霊になっている爺ちゃんと話す。爺ちゃんは俺と目が合った瞬間に、『お!見えてんのか聖人?いやー、さっきから暇で仕方なかったんだよー』とずっと喋っている。
まぁこの後ちゃんと成仏するらしいし、最後にこうやって話せるのは俺も嬉しいから喜んで話し相手になっている。
「てか、これって暴発したりしないの?腕が急に生えて来た時みたいに」
「ああ。それについては安心しろ。腕が生えたことに関しても、お前が心の底から『欲しい』と思ったから腕が生えたんだ」
実際生えたら気持ち悪くて嫌だったけどな…。
二度と生やすか。
「まぁ下手に焦ったりすると、周りに悪影響を与えちまうがな」
「それって親父のことか?」
「その通り。はーっはっはっはっは!にしても口から魂が抜けるなんて能力、俺は使ったことは無かったがなっ。お前さんは俺よりも相当想像力が豊かなんだろうな」
「想像力?」
爺ちゃんはこの魔法について、詳しく説明してくれる。なぜ今になって説明してくれるのかと言うと、この魔法を授けてくれた人に「あまり公言してはいけないぞ」と言われてたかららしい。その力を利用しようとする奴が現れるからと。
授けてくれた人については特に教えてはくれなかった。
爺ちゃんが言うには、この魔法の正式名称は『イマジネーション』。
想像した事をなんでも具現化する、夢のような力らしい。青い猫型ロボットもさらに真っ青になるような能力だ。
ただし俺が慌てふためいたりすると、親父みたいに周りに危害が及ぶくらい不安定で危険な代物でもある。
爺ちゃんが今まで作った伝説も、このイマジネーションのおかげ。爺ちゃんだからという理由で母さんたちが納得していたのも、この力で疑問を持たせないようにしていたかららしい。
流石に初対面相手にはそんな催眠効果は効きにくいらしいが、最低でも『そんな人もいるんだな』程度には思わせることが出来る。マジで影響力半端ないな、イマジネーション…。
「制御方法とかは?」
「下手に想像しないことだな。力が強すぎて、ちょっとしたことなら簡単に具現化しちまう。お前の腕が生えた時みたいにな。さっきは心の底から欲したら、なんて言ったが、無自覚に欲して発動することもあるからそこだけマジで気を付けろ」
なるほどね。漫画やアニメみたいに、強すぎる力の代償が付き纏ってる状態か。
……なんかラノベの主人公みたいだな。こんなヤバい能力だと。
「聖人」
粗方説明を終えた爺ちゃんは、今度は真剣な表情で話しかけてくる。
その表情は以前病院で、俺に人を悲しませるようなことに使うなと言った時と同じだった。
「前に言ったように、イマジネーションは好きに使うといい。神さんがそれを許してくれた能力だからな。だが……」
「大丈夫だよ」
爺ちゃんの言葉に被せるようにして言う。
爺ちゃんは無茶苦茶で、破天荒な人間だったけど、決して人を不幸にはしなかった。
宴で騒いでる人たちが、その証拠だろう。
「イマジネーションは、ちゃんと正しく使うよ」
「……………そうかっ!それを聞いて、爺ちゃんは安心だ!」
爺ちゃんとの最後のお喋りは、翌日の火葬の時まで続いた。
その間母さんと親父が心配そうに俺を見つめていたことは気にしない気にしない…。気にしないったら気にしない…。
駆け足なのをお許しください。
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次は『陰キャ男子高校生と天真爛漫なアイドル』を投稿します。
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