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鳴久野花音、辱められる

「お母さん。これ変じゃないかな?大丈夫かな…?」

「もう、何回目よぉそれ聞くの?いつもそんなに気にしないじゃない」

「きょ、今日は下手な恰好は出来ないのっ!だから凄く不安で…」


 今日はいよいよ裕理ちゃんと不知火さんと一緒にお出掛けする日です。

 男の子と遊びに行くなんて初めてで、ついつい不安に駆られて何度もお母さんに服装を確認してもらってます。

 お母さんにも相談して決めた、白を基調としたワンピースの上に肌色のカーディガン……こういう可愛い服装はお母さんが「私に似合うから」と買って来てくれるだけで、今までは着てこなかった。

 でも今日は不知火さんも一緒だから、ちゃんとした服装で行かないと失礼になる。だからこうして着てみたんだけど…。


「うぅ……恥ずかしい…。本当に似合ってる?」

「だから似合ってるって!自分に自信を持ちなさい。花音は昔の私に似てて、可愛いんだから」


 なんでお母さんはこんな自信満々に言えるんだろう…。うぅ、なんでこの性格までは遺伝してくれなかったの?お母さんが羨ましいよ。


「全く。友達と遊びに行くだけなのに、なんでそんなに気にしてるんだか…。男が苦手な花音に彼氏が出来るとは思えないし」

「か、彼氏じゃないよ!友達だよっ!」

「でしょ?じゃあ気にせず行ってらっしゃいな。新しく出来た友達に、いつまでも緊張してても意味無いんだから」

「う、うん……行ってきますっ。お父さんも、行ってきます!」


「……………ん?んー…」


 お母さんと、実はさっきからボーっとパンを加えてテレビを眺めていたお父さんに行ってきますの挨拶をして、緊張で強張っている身体をなんとか動かして集合場所に向かった。


「本当、なんであそこまで緊張する必要があるのかしら?そりゃ裕理ちゃん以外の初めての友達ってなると、緊張もするだろうけど…」

「……………さっきの会話」

「ん?どうしたの、あなた」

「花音。彼氏は否定したけど、友達は女の子だって訂正してなかったな~と思って」

「……………」

「ナチュラルメイクくらいした方が良かったんじゃね?」

「言うのが遅ーいっ!?」

「ごめん。頭寝てた」


――――――――――――――――――――――――


「大丈夫、大丈夫、大丈夫……お母さんも変じゃないって言ってくれてたんだから…」


 道中、自分に暗示を掛けるように呟きながら歩く。近所の人たちが妙な物を見る目で視線を向けてくるけど、私はそれに気付かない。

 それくらい私は緊張している。


 初めての男の子とのお出掛け……裕理ちゃんも一緒とはいえ、やっぱり不安で心が押し潰されそうになる。

 ……先に裕理ちゃんのお家に行くべきかな?予定とは違うけど、目的地は同じなんだし、一緒に行っても不思議じゃないよね?

 もし不知火さんと二人きりで待つってなったら、気まずくなりそうだし。


「……いやいやダメだよ!そうなったら克服のチャンスだと思って、なんとかコミュニケーションを取らなきゃ」


 そう言いつつも、徐々に足取りが重くなっていくのを感じる。

 大丈夫。不知火さんは優しい人……怖くない、怖くない…。不知火さんは怖くない。

 昨日も「明日が楽しみだ」って優しい笑顔を向けてくれたんだもん。今までの男の子と一緒にしちゃダメだよ。だから安心して遊びに行こう。


「ふんふ~ん♪ん?あれ、花音。花音も今出たとこ?」

「え?あっ……裕理ちゃんっ!」


 ネガティブ思考にならないように自分を鼓舞し続けていると、偶然にも裕理ちゃんと出会った。

 裕理ちゃんを見た私は、身体の緊張が幾分か抜けて、思わず裕理ちゃんの腕に抱き着いた。


「うわっ!どうしたの花音?」

「ご、ごめんね。不知火さんはそんな人じゃないってわかってても、今までの男の子のことを思い出して、緊張しちゃってて…」

「あー。まぁ、そう簡単に苦手な物は治らないわよね。大丈夫よ、聖人さんは本当に優しい人だから。逆に今まで花音を虐めて来たような連中をぶっ飛ばしてくれるわよっ!」

「ぶ、ぶっ飛ばす?」


 裕理ちゃんのバイオレンス発言に戸惑いを憶えつつ、一緒になって集合場所へ向かう。

 集合場所は駅前。そこから電車で隣町まで行って、デパートへ向かう約束になっている。

 デパートなら男女関係なく楽しめる物があるだろうし、初めて遊びに行く場所としては無難だよね。


「それにしても花音、いつもより気合い入ってるわね?私なんていつも通りよ。これじゃ花音の引き立て役みたいね」

「そ、そんなことないよ!裕理ちゃんだって凄く似合ってるよ」


 裕理ちゃんの服装は、上はデニムジャケットで中に白のシャツ。下はジーンズというクールさを感じるコーデ。

 シンプルだけど、元々彼女は凄く可愛いから、ちょっと気合いを入れた私なんてとても敵わない。


「あははは。ごめんごめん、少し意地悪だったわね。ありがと、花音も似合ってるわよ」

「う、うん。ありがとう…」

「それにしても本当に珍しいわねぇ。花音がそんな恰好するなんて。いつも私と似たような服装なのに」

「だ、だって……不知火さんに悪い印象は持たれたくないし…」

「えっ?それっていつも通りの私は悪い印象を持たれるってこと?」

「ち、違うよ!そういうことじゃないよっ!?もーっ!」

「あはははは!ごめんって。からかい過ぎたわね。もう余計なことは言わないわ」


 そうやっていつもより少し意地悪な裕理ちゃんと話しながら歩いていると、あっという間に駅前に着いた。

 裕理ちゃんと途中で合流出来て本当に良かった…。一人だと足取り重すぎて、着くのが遅くなっていたかもしれない。


「聖人さんは……まだ来てないみたいね」

「ほっ……良かった~。不知火さんを待たせることにならなくて」


 とりあえず近くのベンチで座りながら不知火さん待つこと。


「全く。聖人さんったら、女の子を待たせるなんて酷いわね」

「まぁまぁ。私は逆に安心だよ。こっちから誘っておいて、待たせるなんてしたくないもん」

「それはそうかもだけど、やっぱり男の子なんだから、そこはねぇ?」


「悪かったね、気の利かない男で」

「え?」


 裕理ちゃんと話していると、声が掛かる。

 声の主は、待ち人である不知火さんだった。裕理ちゃんの言葉に苦笑している様子だ。


「女の子と遊びに行くってことで、どんな服装で行けば良いのかわかんなくてさ。まぁ彼女とデートって訳じゃないし、適当にパーカーとジーンズにしたけど」

「そ、そうなんだ。……に、似合ってるよ、不知火さん」


 不知火さんの服装は黒のパーカーにジーンズと、裕理ちゃんと同じようにシンプルな服装。

 少し詰まらせながら、不知火さんの服装が似合ってることを伝えると、いつものように優しい笑顔でお礼を言ってくる。


「ありがとう。鳴久野さんもその恰好、凄く可愛いと思うぞ」

「か、かかか、可愛い!?もうっ!からかわないでよ!」


 恥ずかしさのあまり、そんなことを言う。家族と裕理ちゃん以外にそんなことはあまり言われて来なかったから。

 だけど不知火さんは首を振って、それを否定した。


「からかってなんかない。俺は素直な感想しか言わないぞ」

「ひぅ…」


 不知火さんの言葉に、顔が熱くなるのを感じる。

 ここまで真っ直ぐに言われると、余計恥ずかしくなっちゃうよ…。本当に女の子慣れしてないの?


「へー。じゃあ私はどう?」

「可愛い!可愛い子は何着ても似合うって本当なんだな。至ってシンプルな服装なのに、それすらも裕理さんを引き立たせる最高の素材となっている」

「あ、ありがとう……嬉しいけど、そこまで褒められると少し引くわね…」


 そんな会話をした後、私たちは電車に乗って隣町のデパートに向かった。

 その間、不知火さんの言葉のせいで、顔に熱が籠ったままだった。


「うぅ~…」

「あーあー。聖人さん、花音を辱めちゃった~」


「人聞きの悪いこと言うな。……ほら、そんなこと言うから周りの視線が痛いじゃねぇか…」

聖人(久々にワープ使ったら二人の目の前に出て焦った…。こっち見てなくて良かった~)

↑実は初めて女の子と遊びに行くのにドキドキしてまともに眠れず、寝坊した。


この話が面白いと思ったらブクマ登録と高評価、いいねと感想をよろしくお願いいたします。

次回は少し波乱の予感です。


次もこちらを投稿する予定です。

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