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4.勇者たちの帰路

4.勇者たちの帰路

 

「なんだ、今の感じ……」


 リアムを(おとり)にして逃げだした勇者アルベルトたちは、ダンジョンから脱出するために来た道を引き返しているところだった。

 聖剣により選ばれた勇者は魔人王が復活した気配を捉えることができる。

 しかし、アルベルトは勇者としてのレベルが低いため魔人王の気配をしっかりと捉えることはできなかった。

 せいぜい鳥肌(とりはだ)が立つような違和感を感じる程度だ。


「おいっ どうしたんだよアルベルト集中してくれ!」

「やばい! 後ろから魔物がきてるわ なんとかしてよ!」


 魔物の攻撃を受けながら踏ん張っているライオスと、そのライオスに回復魔法をかけているエレノアがアルベルトへと振り返る。


「--あ、ああ すまない 今行く!」


 アルベルトは感じた違和感を押し殺し、仲間の援護(えんご)へと向かった。


「なかなか危ない戦闘だった。--二人とも平気か?」

「ええ、大丈夫よ。特にケガはしてないわ」

「俺も大丈夫だ。--それにしてもなんかさっき来た時よりも魔物たちの強さがかなり上がってきた気がしないか?」

「ああ俺もそんな気がしている。さっきの黒狼(ブラックウルフ)のことといい、ダンジョンになにか起こっているのか?」


 アルベルトたちは戦闘を終えてひと息付きついていた。

 彼らはダンジョン内の魔物のレベルが上がっていると思っている。

 しかし実際の魔物の強さは大して変わっていなかった。

 魔物が強くなったと感じる原因はリアムが抜けた穴が大きかったからである。

 今まではリアムがライオスの代わりにタンクを無理やりやらされ、後方の安全確保まで()()っていた

 魔物たちはその穴をついてきているだけである。


 リアムが抜けた穴から勇者パーティは徐々に崩壊(ほうかい)を始めていた。

 だがアルベルトたちは楽観的(らっかんてき)に敵のレベルが上がっていると考えその事実に気づかない

 --いや、気づこうとしなかった。


「ところでアルベルト。さっき戦闘中になにか考え込んでいるみたいだったけどよぉ。--なにかあったのか?」

「あ、ああ……このダンジョンの下の方から妙(みょうな気配を感じた気がしたんだが……」

「私はそんな気配感じなかったわよ」

「俺も特に気になる気配はなかったぞ--まあ俺たちは戦闘に手一杯(ていっぱい)で遠くの気配を探る余裕なんてなかったがな」


 ライオスの皮肉(ひにく)にも取れる言葉に、アルベルトは困ったような顔を浮かべていた。


「いや、俺も気配に気を取られて戦闘がおろそかになった。わるかったよ。それにはっきりと感じ取ったわけじゃない。なんというか…… 鳥肌(とりはだ)が立つような違和感を感じたくらいなんだ」


 ライオスとエレノアはアルベルトの説明に、釈然(しゃくぜん)としない様子だった。


「ま、よくわからないならなら考えても仕方ねえが……気になるなら国王に報告して調査隊を出してもらうか?」

「そうね。気配をはっきり感じなかったっていうことはそれほどの脅威(きょうい)ではないだろうし。王国の調査隊でも十分対応できると思うわ」

「そうだな。あの気配がなんにせよ報告はしておいたほうがいいだろう。--よし、一度王国に戻るとしよう」

「となると、いつ出発するかだな。--エレノア、ここから王国へ戻るのにどれくらいかかりそうだ?」


 エレノアは荷物から地図を取り出し、現在地と王国までの距離を確認した。


「今から、出れば三日後の昼までには着けると思うわ」

「それなら国王への面会もそのままできるな。報告はできるだけ早いほうがいいし今から戻ろうか」

「わかったぜ。それじゃあ荷物まとめるか」


 アルベルトたちは広げていた荷物をまとめ始めた。

 そこでふと、エレノアが疑問を口にした。


「そういえばリアムが抜けた四人目の枠。誰を入れるの?」

「具体的に誰にするかは決めてないけど、王国に戻った時にギルドで募集(ぼしゅう)をかけるつもりだよ」

「そりゃあいい。勇者パーティに入りたい奴なんて大勢いるしすぐ見つかるだろ」

「今度はちゃんと囮以外にも使い道のあるやつにしてよ〜」

「わかってる。ちゃんと能力をチェックして使えるやつを選ぶよ」


 アルベルトたちはリアムのことをただの使い捨ての駒くらいにしか思っていないような会話をしていた。


「あれ、そういえば……」

「どうした、アルベルト」

「いや、リアムで思い出したけどさっきの(みょう)な気配を感じた場所……俺たちがリアムを置き去りにしたあたりな気がして……」

「そうなのか、もしかしたら気配の主に出くわしてるかもな」

「あいつ弱いし、その前に黒狼(ブラックウルフ)たちに殺されてるでしょ」

「はは、そりゃそうだ。使えない魔物しか召喚できないあいつが、あの群れから逃げる方法なんて無いだろうからな」

「リアムがどうなっているかに興味はないが、なんにせよ急ごう」

「オッケー」


 リアムが気配の主と接触(せっしょく)しているかもしれないという予想は正しかった。

 だが彼らはその気配の主を呼び寄せたのがリアム本人だなどということは、微塵(みじん)も思いもしなかった。

 その出会いによって世界の情勢(じょうせい)が大きく変わるということも知らずに……

 そして勇者は地位も名誉も名声も、今まで欲しいがままにしてきたそのすべてを失うことになる。


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