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1.裏切り

 千年前、魔人王と勇者リトリスとの大きな戦いがあった。

 戦いの中で傷を負った魔人王は

「千年後に復活する」

 と言葉を残し消滅した。


 そして千年の時が流れた今、魔人王の復活が近づいていた。

 人間たちは魔人王の脅威から世界を守るために聖剣により勇者を選抜。

 そして勇者は腕の立つ冒険者たちとパーティを組み、修行を行っていた。


 リアム・オトフィール 十六歳 勇者パーティ所属

 それが俺だ。

 聖剣に選ばれた勇者アルベルトと俺を含めた四人でパーティを組んでいる。


 そして今はダンジョンで戦闘訓練を積んでいた。


「おい、リアム。さっきの戦闘、攻撃のタイミングが遅れていたぞ。ちゃんと魔物を使役(しえき)しろ。気が(ゆる)んでいるんじゃないのか? 罰として野営(やえい)用の荷物はお前が運べ。--いいな?」


 アルベルトが俺を責め立ててきた。

 ()いで残りの二人からも罵声(ばせい)が飛んでくる。


「俺がタンク役として敵の攻撃を受けてやってるってのに、こんなんじゃあ俺が痛みを受け損じゃないかよ。--ったく、しっかりしろや。このグズが」


「ほんとよ。あんたは魔物を操るだけなのになんでミスなんかしてるのよ。つかえないわね」


 パーティメンバーは俺のことをこき使ってくる。戦っているのは召喚した魔物であって、召喚士の俺は命令するだけで楽をしている。そう思われているらしい。


 (くそっ 魔物を操るのがどれだけきついと思ってるんだ)


 召喚した魔物を操るのはとても難しい。

 少しでも気を抜けば暴れ出してしまいみんなを傷つけかねないのだ。

 だからかなり集中して戦闘に参加している。

 なのに、俺が楽をしているからって決めつけて色々なことを押し付けてきた。


 (それにタンク役はライオス! お前の役目だろ!)


 最初は荷物持ちに始まり、夜の見張り。

 (しま)いにはライオスがタンク役のはずなのに、魔物なんて使い捨ててやればいいんだと言わんばかりにタンク役まで押し付けられた。


 パーティの回復役兼後方の守備担当のエレノアも俺のことを目の敵にしている。

 勇者に(こび)を売るために、勇者たちと一緒になって俺に嫌味(いやみ)を言ってくる。


 こんな扱いを受けているがパーティから抜けることはできない。

 国王の命令でこのパーティに参加しているリアムはどれだけ理不尽な目にあっても我慢するしかなかった。


 リアムの扱いはどんどん酷くなっている。

 最近では夜中にストレスでうなされるほど追い詰められている。

 ここの所、ろくに眠れず疲労もどんどん溜まってきた。


 (でも今は耐えるしかない……)


 リアムはそう自分に言い聞かせて、言われた通り野営(やえい)用の荷物を肩に背負いアルベルト達の後をついて行った。


 だがそれから三日も経たないうちに俺は絶望に叩き落とされる。


「この辺りの魔物のレベルにも対応できて来たし、さらに奥に進もうか」


 アルベルトの自信ありげな発言にライオスとエレノアは同意していた。


「そうだな。せっかくの訓練だってのにこんな弱い奴らを相手にしてたら逆に腕がなまっちまうぜ」


「でも、食料とかが枯渇(こかつ)してきてるし一回戻って色々補充(ほじゅう)した方が……」


「うるさいわね。パーティの士気(しき)を下げるようなこと言わないでよ。このまま訓練を続行した方がいいに決まってるわ。それにあんたが食べるのを我慢すれば食料もまだまだ()ちそうじゃない」


「そうだね。まあなにも食べないとなると戦闘に支障(ししょう)がありそうだし…… そうだ、お前は召喚した魔物を食べればいいんじゃないか?」


「ハハッ! そりゃいいな。自分で魔物を召喚してそれを食べれるなんてお前は一生食い物には困らないだろうな!」


 三人がリアムのことをバカにしている間にダンジョンの一つ下の階層に降り、しばらく進んでいた。


 そこでリアムはあることに気がつく。


 (おかしい…… 魔物が全然いない……)


 リアムがそう思っていたが、その答えはすぐに目の前に現れた。


「な、なんだこいつ…… なんでこんな化け物がこんなところにいるんだ……」


 アルベルトたちの目の前にいたのは巨大な黒狼(ブラックウルフ)の群れだった。


 黒狼(ブラックウルフ)たちはその口元を血で()らしながらなにかを取り囲んでいた。

 そのなにかをリアムはすぐに理解した。


 (ここはこいつらの狩場だったんだ。だからここまで魔物に遭遇(そうぐう)しなかったのか)


 そしてここが狩場である以上、黒狼(ブラックウルフ)たちが次に取る行動は一つだった。


 黒狼(ブラックウルフ)たちがリアムたちを捕食するために一斉(いっせい)にこちらに向かって走り出した。


 と、同時にリアムは背中を()られ前に手と膝をついてしまった。

 なにが起こったのかと戸惑いながら後ろを振り向くとアルベルトたちが少し離れた位置にいた。


「悪いな、リアム」


 そう言い残し、彼らは上の階層へと続く階段の方へ走っていった。


 リアムは見捨てられた。彼を(おとり)にすることでアルベルトたちはここから脱出しようとしていたのだ。


 その目論見(もくろみ)は上手くいった。

 黒狼(ブラックウルフ)たちはアルベルトたちを追いかけずに、その場で動けないでいるリアムの周りを取り囲んだ。


 恐怖(きょうふ)と悔しさと苛立ちなどがリアムの胸の中で酷く渦巻(うずま)いていた。


 (ああ…俺はあいつらに見捨てられたのか……)


 (今まで耐えてきたのはなんのためだったんだ……)


 そんなことを考えている暇など無いのだが、リアムは完全に絶望しきっていた。


 そして黒狼(ブラックウルフ)たちはその(すき)を見逃さず、容赦(ようしゃ)なく襲いかかって来た。


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