ロリサキュバスに耳掃除されるだけの健全な話
自分で食べるために作ったまかないだよ!
(`・ω・´)つ
いつもの感じのラーメンじゃないから食べるのは自己責任でね!
ガリッ……
「チッ」
舌打ちしつつ耳かきを目の前に持ってくると、案の定先端にはうっすらと血が滲んでいた。2週間ぶり今月で3回目の外耳炎決定の瞬間である。クソが。
これについて「人間の耳は自浄作用があるのでそんなに頻繁な耳かきは必要ない」という正論は受け付けていない。俺は気持ち良くて好きだから耳掃除をついついやってしまうだけで、はなから、耳掃除が目的ではない。別に掃除と言う目的なんかなかったとしてもほじほじしてるだろう。
これも全て耳の穴に迷走神経作った神様が悪いんだよな。耳掃除するたびに気持ちよくなっちゃうなんて、愚かな人間が中毒になっても仕方がないだろう。
「はぁー」
ため息を吐きつつ耳かきをキレイに拭くとペン立てに戻した。
俺は耳かきが好きだ。もちろん道具にもこだわっている。職人の手造りで一本5000円なんてものも買った事があるが、もっぱら薬局とかで2本500円程度で売ってる煤竹製のこいつを愛器としている。
繊細な動きで耳の穴の内側を撫でることが出来るのだが、先端が薄いのでちょっと力を入れるとすぐに流血沙汰になってしまう。いや皮膚が薄くなるほど頻繁に耳かきして、ちょっとテンション上がると力入れちゃう俺が悪いのは分かってるが。
処方薬の使いまわしはほんとはダメなのは分かってる、耳鼻科でお世話になってる薬局のおばちゃんに「すいません」と心の中で謝りつつ前回貰った点耳薬(使いかけ)を流血したての耳の穴に垂らした。
もう片方の耳は…・・やめておくか。そもそも3日前も耳掃除したばっかだし、本当は必要ないのは俺が一番よく分かっているのだから。
両耳が外耳炎になるととてもめんどくさい。それはよく知ってる。何を隠そうよくやるから。人間は愚かだから同じ過ちを繰り返してしまうのだ。良くない。
まぁ今日はもうさすがに耳掃除は断念しておこう。もう風呂入ってさくっと寝るかな。
適当に風呂を洗って湯沸かし運転ボタンをぽちっとすると、「風呂が沸くまで……」と思いつつネットフリ〇スの海外ドラマを流してるノートパソコンを前に座椅子でウトウトしてしまっていた。
「……っは?!」
やばい、あれから寝落ちした?! 風呂入ってない……というか今何時だ?! ヤバい目覚ましかけずに寝落ちしちまった!! 会社、会社の出勤には間に合う時間か?!
寝坊した時独特の、目覚めた瞬間の「やばい」という感覚が腹の奥から突き上げてきて飛び起きる。いや、飛び起きようとして失敗して、勢いだけで持ち上がった上半身はそのまま床に再び倒れて顔をしたたかに打ち付ける。
「いでっ……」
しかしちゃんと閉めてなかったカーテンの隙間から、まだ真っ暗いの外の闇が見えて安堵する。良かった朝まで寝過ごしてなくて。
ホッとするのもつかの間、飛び起きようとしてできなかった、原因を見下ろす。自分の体が拘束されていたのだ。
腕は後ろ側で手首をきっちり結んだ上で、もがけないように親指同士までぎっちり縛られている。足は太ももから足首まで、両脚をそろえた格好で縄による拘束が施されていた。なんか薄い本で見たことあるような自分じゃできない縛り方だが、これでは打ち上げられたブリのようにぴちぴちと身をよじるしか出来ないだろう。
「ふー……」
俺は自分を落ち着けるために深呼吸をした。俺は一人暮らしである。つまり俺をこのような目に遭わせた奴は、この部屋に不法侵入している犯罪者という訳だ。
頭に「強盗」の二文字がよぎる。寝入った所に侵入して、家主を縛り上げてじっくり物色する手口なのかもしれない。幸い口は自由のままだ、大声を上げたらアパートの住民の誰かが通報してくれるかも……! と淡い期待を持つが一瞬躊躇する。強盗が「騒いだから殺す」なんて即決即断する奴だったらどうしよう、って。
金より命の方が大事だし、ここはひとまず穏便に、犯人が意思疎通が出来るタイプか確認しよう。最悪、日ごろ使ってるのは電子決済ばかりなのでスマホを持ち去られても俺の指紋承認がないと使えないし、財布に入ってる現金は数千円、クレカも銀行のカードもすぐさま停止してしまえばいい。
盗難による免許証やクレカの再発行は死ぬほどめんどくさいなとは思うが、身の安全には変えられない。ここは何とか俺に危害を加えずに出て行ってもらわなければ……!
「あ、起きたぁ?」
身の危険を感じながらも被害を最小限に抑えるべく決意していた俺の耳が、場違いな子供の声を拾った。
聞き間違いか、流しっぱなしの海外ドラマの音声だろうかと思っていたところに、うつ伏せで倒れていた俺の目の前に子供の素足がぬっと降りてきて、量販店で3000円だった冷感ラグ(夏から敷きっぱなし)を踏みしめた。
「お兄ちゃん、おはよぉ。目ぇ覚めた?」
「え? は、……なんで、何で子供が俺の部屋に……」
「あはぁ、パニくっちゃってんの、笑う~」
顔の見えないその生足の主は、けらけら笑いながら俺の肩を足で押しのけて体をひっくり返した。
LEDの室内灯の照明のまぶしさに一瞬目を細める。下から見上げてシルエットしか見えなかった声の主は、俺の目が慣れてくるとやっと姿を認識できるようになった。
「吊り目八重歯ハーフアップツインテ眼鏡露出大目ボンテージロリサキュバス……だと……?!」
属性全部乗せれば良いってもんじゃないんだぞこのバカが!! キャラデザ担当誰だよここに連れてこい!! とソシャゲの新キャラ発表へのツッコミのように叫びそうになって我に返る。危なかった、これでロリ巨乳だったらブチ切れて我を失ってるとこだったぞ。
しかし何だこのガキは……?! そう言えば、玄関だって窓だって確実に鍵は閉まっていたはずなのだ。普通の人間の子供の可能性は低い。そしたらそっちはそっちで青少年健全ほにゃらら的な問題があるのだが。
「だいせいかぁ~い、わたしがサキュバスって一目で見抜くとは、お兄さんもしかして精気吸われるの、初めてじゃないの?」
「いやそんなあからさまな格好してサキュバス以外の何にも見えるわけなかろう!」
頭からはいわゆる悪魔の角、背中には真っ黒いコウモリの羽。作り物とは思えない、明らか意思を持ってうねうね動く尻尾にはスペードのような矢じり型の先端がついている。
体は子供だがボンテージ風味の衣装は露出が大きく、ビキニタイプのトップスとホットパンツの間にぺろんと出ているお腹のヘソ下あたりにピンク色に発光するハートを模した紋様が浮かんでいた。
そのコスプレじみた衣装が似合うくらいの美少女か、いや幼女と呼称するのもおかしくないくらいのロリサキュバス(仮称)に恐ろしさを感じて内心後ずさる。ちょっと吊り目がちな目、お子様用の丸っこいフレームの眼鏡、悪戯っぽく笑う口元からは八重歯が覗いていて、ただそれだけで捕食される恐怖を感じる。
俺の「社会的な死」が姿を持って目の前に立っているような錯覚を覚えたのだ。ここで「きゃ~~! おじさんにお部屋に連れ込まれて変な事されそう~~!」とか叫ばれたら俺が被害者とか信じてもらえず一瞬で死ぬ。
「大丈夫大丈夫、暴れられると困るから縛らせてもらっただけで、痛い事はしないから♡」
「いやー!! やめて!! 悪霊退散!悪霊退散!」
「どうしてそんなに嫌がるの? お兄ちゃん、こういうシチュエーション好きでしょ?」
「好きとやっていいかは別だろうが! 俺の意思でロリにスケベな事を許してしまったら法に触れる!! R15タグが付いていても全年齢版に投稿が許される話ではなくなってしまうだろぉ!!」
「よくわかんないけどぉ、えっちな事はするつもりないよぉ。わたしはまだ上級サキュバスの免許取れてないから出来ないし」
「……何を……」
なら何をする気だ……と警戒する気持ちと、ほんの少しがっかりする気持ちを胸の奥に抱えて注意深く相手の動向を探る。どのみち両手足を拘束されている俺には抵抗の術はほぼない。
いや、もしかしてR18G的な精気の搾取を行うつもりではないのか。でも痛い事はしないと言っていたし……けど不法侵入ロリの言う事を信じていいのか? 痛くないよ、麻酔を使うから、みたいなクソ理論をブチかましてくる可能性もある。
俺は拘束された姿で仰向けになったまま、ロリサキュバスを見上げていた。
「サキュバスは人間の欲望を読み取ってそれに応える形で叶える代わりにちょ~~っとだけ精気をもらうだけの人畜無害な魔物なんだよぉ、そんなに警戒しないでよ、酷いなぁ」
「……要求は何だ……?」
「大丈夫大丈夫、健全に、ちょっと耳かきをするだけだから♡」
「は……?」
サキュバスものの薄い本では見た事のない単語、「MIMIKAKI」と言われて一瞬理解できずに頭の中を音声だけが飛び交う。MIMIKAKI……聞いたことが無いぞ。どんなマニアックなプレイなんだ……? そうぐるぐる考えていた俺の脳みそが「耳かき」と理解したころにはロリサキュバスの正座した膝の上に、俺の頭が「よいしょ」と乗っけられてしまった所だった。
「ウ、ウワー!! ロリサキュバスの生足!!」
頬の下に感じる、魅惑のふわもちの太ももの感触。しっとりしたみずみずしさに、ボディソープだろうか、甘くて良い匂いまでする。
俺が縛られてて抵抗できない状態じゃなければ事案になってたところだ! 手足を縛られてるからな! ロリサキュバスに膝枕をされてしまってもこれは防げない、仕方のない事なんだ!
「あれぇ? お兄ちゃん、こっちの耳の穴血が出てる……自分で弄って怪我しちゃったの?」
「ンアーー!! やめ……!今そこ(怪我して)敏感になってるから……! 痛ぁっ」
「ふふっ、こーんな小さい穴の中、ちょっとこれで撫でただけでそんな声出しちゃって、いい年した大人がなっさけなぁ~~い」
俺の目の前で、挑発するように先ほど傷口を撫でた耳かきをプラプラさせてくる。膝枕をされてる都合上見る事は出来ないが、きっとニヤニヤとしたこちらを見下すような笑みを浮かべているのは想像に難くない。
「や、やめなさい……!それは子供が勝手に人にやっていいようなものじゃ……」
耳掃除はある程度大きくなってから。自分でやるのもそうだが、人にするのはもっと注意が必要だ。遊びでやっていい事ではない。
耳掃除に対して、ごく一般的な注意を向けた俺はしかし縛られているせいでろくな抵抗が出来なかった。むしろ、身をよじるしか出来ない都合上、無理矢理耳かきをされたら酷い怪我をする可能性が高い。俺の鼓膜が……!
「分かった分かった♡ ワガママなお兄ちゃんのお願い聞いて、自分で弄りすぎて血が出ちゃったこっちの穴は触らないでおいてあげるね……その代わり」
「ウワッ?!」
襟首を掴んでぐるりと体をひっくり返された先には、さっき見たロリサキュバスのぷにお腹が、目の前に迫っていた。どんな原理なのか、魔法的な力なのか、ただのタトゥーではなく肌の内側から発光するようなハートをかたどった紋様がそこにはくっきり映っている。
成人男性一人をこうしてたやすく持ち上げて動かせるあたり、やはり普通の人間じゃないんだと改めて認識してしまう。俺の手足が自由に動かせても、この腕力では普通に勝てなかったかもしれない。
「こっちのお耳に……もう一つの穴の分も気持ちいい事してあげるね♡」
「あっ、ああー!!い、いけませんそんな危ない事……!」
「ほらほら、暴れてるとまた怪我しちゃうよ~」
「っ! うぅ……」
鼓膜を人質に取られた俺は、ロリサキュバスの膝枕に頭を固定された状態でゆっくりゆっくり耳の穴の中に耳かきを差し込まれてしまう。
柔らかな指が俺の耳たぶをもてあそび、「ふに、ふにふに」と摘む感触に、自分の視界の外で体に触れられる度にびくびくして肩が揺れてしまう。
見えないからこそ敏感になってしまうようで、ガサガサと耳の中で立てられる音は必要以上に大きく感じた。
先端が耳の穴の内壁を撫でる度に、痛みが走るかと怯えて、体がこわばる。
「あれ……お兄ちゃんてば、あんなに口では偉そうな事言ってたのに、もう私にされるがままになって大人しくなっちゃってるね……♡」
「くっ……」
鼓膜の生殺与奪権を握られてる俺には声高に反論する勇気は出なかった。
「やめ……やめてくれ……ほんとに、他人になんて、成人してからは耳鼻科の医者にしかさせた事ないのに……!」
「じゃあ、私がお兄ちゃんのハジメテになっちゃうんだね♡」
「あ……っ、やめ、」
「ん? 痛かった? ごめんねぇ、じゃあ……これくらいならどーお?」
「ひっあ、ふぁああ……っ!!」
こりこり、とほとんど力を入れない、撫でるようなその触れ方に、両手両足を縛られた俺の爪先まで「何か」が衝撃として走った。
痛みに体が跳ねたのではない。明らかに、つい「もっと」と口走ってしまいそうな、そんな感情が腹の奥から湧いてきていた。
「あれ……?お兄ちゃん、急に大人しくなっちゃったね……?」
「っあ、だめ……だめ、やめてくださ、お願いしま……」
「なんでぇ? 口ではそんな事言ってるけど、お兄ちゃんの体はもっとして欲しがってるみたいだよ♡」
「はっ、ぐぅ……う、あ、それ以上は……っ」
言葉で指摘されると余計に意識してしまう。
怪我を怖がっていた俺の体は、ロリサキュバスの耳かきが「力加減してくれる」と分かった途端に抵抗の選択肢を見失ってしまった。
しかしまともな大人の理性として、ここで積極的にロリサキュバスの膝枕耳掃除を受け入れるわけにはいかないという矜持だけが俺に維持を張らせている。
「ちが……違う、俺は怪我をするのが怖いから動けないだけで……!」
「アハハ、わかったわかった、そーゆーことにしておいてあげるね♡」
「なっ?!俺は本気で、外耳炎を繰り返したくないだけで……! ああっ、そ、そんな強く擦らないで……っ、」
「え~?こんな優しく触ってるのに……お兄ちゃんのお耳ってすご~~い雑魚なんだね♡」
からかうようなニュアンスの混じる声に嫌な予感しかしない。外耳炎を再発するのも怖いが、今は未知の世界に足を踏み入れようとしている恐怖感をごまかしているのだと自分でも分かっている。
「だ、だめだ……やめてくれ……!それ以上力を入れたら耳の穴が……」
「痛い? 違うでしょ?気持ちよくなっちゃってるの、バレバレだよ~~」
「ち、ちが……! ほんとに、あっ!!だめ、そこ入っちゃいけないとこ入ってるから……!! ひあぁ……」
「お兄ちゃん、この奥のとこが好きなんだ~~、ふふふ……こうしたら……どぉかなぁ……?」
「ああーーー!! だめ……!!そんな先っぽでしつこく……ひあぁ……っ」
肩が跳ねそうになるのをなんとか気合で抑え込む。最初はわざと痛みを与えるような事をしてきたくせに、今は文豪も通っていたような、温泉旅館街で「耳かき1回2000円」と謳っているような熟練の手つきで俺を翻弄しにかかっていた。
いや温泉街の熟練の耳かきとか俺は体験した事ないんだけど。
その行為は完全に「耳掃除」からかけ離れていて、俺の反応が良かった箇所を繰り返し刺激するだけのあからさまなものになっていく。
そうして中をひっかきながらも、俺の耳朶をふにふに揉みしだく指の動きも止まらず、完全にこのロリサキュバスの指でもてあそばれていた。
「お兄ちゃんつま先までピン……てしてる。そんなにこの中かき回されるの好きなのぉ?」
「……あっ、ちが……」
「口ではそういうけど、こ~~んなに気持ちいいってよだれ垂らしちゃって。私の太ももお兄ちゃんの唾液でベトベトなんだけど?」
「ひ、ぐ……らめ、やめて……」
「ほらほら、ここはどう? お兄ちゃん、気持ち良い?」
「うぁ……だめ、だめだって、それ以上は血が出ちゃうから……っ」
そう、気持ちいいかどうかはこの際置いておく。ほんとに、マジでそれ以上耳かきで中をひっかかれたらまた出血してしまう。何度も言うが、俺の耳の穴は不必要な耳かきを長年繰り返したせいで物理的にとても弱くなっているのだ。
この先をやり過ぎて何度も外耳炎になった俺は、流血沙汰がすぐそこに迫っているのを感覚的に理解していた。
「私みたいな小さい子供に耳の中弄られただけでこんなぐちょぐちょにしちゃって。お兄ちゃんってほんとなっさけなぁ~い。雑魚だ……ふふふ。ざ~こ、ざこざこ♡♡」
「あっ、やめ、もうやめてくれ……! それ以上……されたら、俺の耳がおかしくなっひゃうぅ……」
「お耳よわよわのお兄ちゃん、口の利き方が違うでしょ?」
「くうっ……う、お、お願いします……! も、もうやめてください……!もう限界なんですぅ……お願いですから……!」
俺はとうとうプライドの大部分を捨てて、顔面の穴と言う穴から体液を流しながら命乞いをした。体が自由だったら土下座してたかもしれない。
涙と、涎と、あと多分鼻水も出てたと思う。拭おうにも手が縛られてるので、流れっぱなしにせざるを得ない。ロリサキュバスに膝枕をされたまま、俺はふわふわの太ももに顔をうずめて情けない言葉を口にしていた。
「じゃあ、今日のところは、そろそろ勘弁してあげようかな~」
「あ、ありがとうございます……!」
ほっと息をついた俺の耳に、「精気も十分採れたし~」なんてのんきな声が聞こえてくる。どのみちそろそろ終わってたんじゃないかと簡単に踊らされた自分に腹が立ちながらも、「でもこの拷問のような時間がやっと終わるんだ」と、俺は完全に気を抜いてしまっていた。
「これで……ほんとのほんとにおしまい……ふ~~~~っ♡♡」
「あ、あ゛~~~~ッ?!」
油断していた俺の耳朶を、耳の穴の中を、ロリサキュバスの吐息がゾゾゾ、と遠慮なく撫でる。
さんざんひっかきまわされて、充血するくらい敏感になっていた耳の中は過剰なくらいにその感触に反応してしまっていた。
至近距離から耳の穴の中に息を吹き込まれたせいで、俺の視界はむき出しのお腹で占領される。視覚を奪われた状態で鼓膜に直接響く吐息の音は、ダイレクトに脳みそに響いて背中がゾクゾクした。
「ふふ……首から下にはどこにも触ってないのに、お兄ちゃんってばそんなに気持ち良さそうにしちゃってウケる~~♡」
「ひ……ひう……」
「お耳触られただけでこんなになっちゃって、童貞って大変だね♡」
限界を迎えてぴくぴくしていた俺は、そのロリサキュバスの言葉に反論する気力もなく小さく痙攣するしかなかった。
ロリサキュバスが立ち上がってせいでどすん、と乱暴に転がされても、文句すら言い出せないでいる。
「はぁ~あ、お腹いっぱい……結構美味しかったから、また搾り取りに来てあげるね~」
「な、なにを……」
「じゃあお兄ちゃん、お休み」
やる事は終わったとばかりにドライに立ち去ろうとするロリサキュバスに、俺は慌てた。
「ちょっと待……このまま放っていく気か……?!」
「あ、ダメだよ~これ以上のサービスは私が大人になってからね☆」
そう言い残して可愛くウィンクした生意気な顔で、見上げる俺をそのままに、ほんとに魔法のように姿を消してしまったのだ。
「……縛ったままで帰りやがって、どうしろって言うんだあのクソガキめ……!」
しゅるりと姿が融けるように消えた空中を見つめて、悪態をつくも既に遅し。誰もいなくなった部屋の中で俺は一人呆然とする。誰か呼んで助けてもらうか……警察に通報……いや、一人で緊縛プレイしてて解けなくなったバカとして記録が残ってしまう!!
もうほんと、どうしようもないとなったら諦めて最悪助けを呼ぶしかないだろうが、何とかそれは最後の最後まで手を出したくない……!
結局夜明け近くまで一人縄と格闘してた俺は、少々の擦過傷と引き換えに、何とか会社に間に合う時間までには自由の身となった。
当然ほぼ一睡もできず、ゾンビのような顔とメンタルで出勤する羽目になった俺は「次に来た時には特大の説教をする必要があるな……」と静かに怒りを溜めたのだった。