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小説家になろう 2021 夏のホラー

『部屋と金庫と頭の中』

作者: 木尾方

僕は、債務者だ。かなりの借金をしている。

普通に働いては到底返せない額だ。


たぶん、ここに居る三人も似たようなもんだろう。

今、僕たち四人は、10m四方の真っ白な部屋に居る。


金を稼ぐ為に、ここに来た。…いや、呼ばれたのだ。


数日前に自分のスマホにショートメールが届いた。

内容は、「借金を返済もしくは、金を稼ぎたければ、ここに来なさい。」と書かれていてファイルが添付してあった。怪しいとは思ったが、これ以上の底辺な生活などないからと、ファイルを開いた。すると、ある場所の地図が載っていて、そこに向かうと、新たにショートメールが届いた。添付ファイルを開くと また、別の場所の行先が載った地図が出てきた。3、4回 移動する。いたずらメールかと思った矢先、ある倉庫にたどり着いた。

倉庫の入口には、違和感なく作業着を着た数名が、僕を無言で見ていた。僕は、ここに来た経緯のショートメールを見せると、作業員は、僕を倉庫の中に案内した。

倉庫の中には、数台の大型バスがあった。僕はその内の1台に案内された。バスの中は、それぞれ、個室で分かれていて、空いている半畳ほどの部屋に入れられた。外から鍵がかけられた。あー、逃げられない。殺される、来るんじゃなかったと思った。

個室の椅子に座ると、正面にあるタブレットが動き、文が出てきた。

「ようこそ。債務者たちよ。このバスは、あと1時間ほどで出発する。声を出さなければ、自由にしていてかまわない。食べたい物は、タブレットのページから注文してくれ。作業員が運んでくれる。トイレは、タブレットで通知してくれれば、鍵を開けて案内しよう。それから、椅子の下にある作業着に着替えてくれたまえ。私物は、全てここに置いておくこと。タブレットの右上の数字と、作業着についている番号が一緒か確認しておいてくれ。違っていたら、作業員を呼び出してくれたまえ。…。」

まだ、いくつかの契約があったが、僕はタブレットに同意のサインをした。

簡単に言うと、「どんなことされても、構いません。」という契約書だ。



バスが移動し、2時間ほど走ったと思う。目隠しをされ、ヘッドホンをつけられ、タブレットを持って作業員に連れられて、謎の場所に来た。

目隠しを外して、見た場所は、窓がない小奇麗こぎれいなワンルームだった。


タブレットに通知が来た。


「呼び出されるまで、部屋でくつろいでください。」と


拍子抜けしたが、呼び出されるまでは、命があるとのことだろう。


僕は、安眠することにした。


…どれぐらい時間が経っただろう。タブレットが鳴っている。


「タブレットに表記されている道順をたどって指示された部屋まで来なさい。」か。


部屋のドアに近づくと解錠かいじょうされ廊下に出た。カメラモードのタブレットがナビゲートしてくれた。


長い廊下を渡り、エレベーターに乗り、タブレットの誘導するまま誰にも合わずに、ある扉の前に着いた。


鍵が自動で開いた。タブレットには、「入りなさい。」の文字が出てきた。


僕は、中へと入ると鍵が閉まった。


入るとそこは、10m四方の部屋だった。四方それぞれに扉がある。そこから別の場所で待機してた人が、それぞれの扉から入ってきた。皆、同じ白い作業着とタブレットを持っていて、胸には番号が書かれていた。


言葉を交わす前に皆、部屋の中央に置かれている金庫を見て驚いた。


金庫の扉が開いていて、中には大量の現金が入っていたのだ。


「す、すげー!」細身の中年男性が声を出した。胸には、7418970の文字


「い、いくらあるのかな?」次に声に出したのが、少しポチャリした若いギャル風の女性、胸の番号は、45777100の文字


「あなたたち、これぐらいの お金見たことないの?」そう言ったのは、60歳は過ぎているマダムらしき熟女だ。胸の番号は、621379143。


そして、僕の胸の番号は、325424787だった。


すると、全員のタブレットに通知が来た。


《これから、『かくれんぼ』を行います。

全員が『鬼』に見つからなければ、ここにある10億を差し上げます。

見つかったのが一人ひとりなら、この中で一番負債が多い人の金額がも貰えます。

見つかったのが二人ふたりなら、全員の負債を半分にします。

見つかったのが三人さんにんなら、借金は、そのままです。

全員見つかった場合は、借金は倍となります。》


「な、なんだって!」中年の男が叫んだ。


間を開けずに、タブレットに次の通知が来た。


《100秒後に『かくれんぼ』開始です。『鬼』が来るまで、あと、99、98…》


カウントダウンが始まった。


「ど、どうするの?隠れる場所なんてどこのもないわよ。」熟女が叫ぶ。


「だめ、扉開かないよ。」ギャルが騒いでいた。


「…み、皆さん!僕の言う事を聞いてください。いい案があります。」


「ど、どんな?」


「早く言いなさい!」


「とりあえず、金庫の10億を出してください。時間がありません。」


皆、大慌てで現金を金庫から出した。


「それで、どうするだ?」


「あなたたち、三人なら金庫に入れます。」


「それじゃ、あなたが見つかってしまいます。」


「そ、そうよ。借金をチャラにしないと困るのよ。」


「きっと、大丈夫です。時間がありません早く中に入ってください。」


僕は押し込むように三人を金庫に入れた。


は、早くしないと…


僕は、一辺を金庫を背にし札束で塀を三方向作り その中に隠れ、頭上は、1万円のバラで頭を隠した。


「…間に合え。」


タブレットの表示が、『0』になった。鬼がくる…


どこかの扉が開いたようだ。


うずくまって札に身を隠しているせいで、周りは見えない。


ただ、獣臭さと、うめき声が聞こえる。


本当に鬼がいたら、このような臭いがするのだろうかと思った。


暫くすると、扉が開き、また閉まる施錠する音がした。


「…終わった?」


タブレットが震えて鳴り響いた。「わぁ!」びっくりして札束の塀から出てしまったよ。


『おめでとうございます。全員クリアーです。』


「や、やったー!!!!」僕は大声で喜んだ。


金庫の中に居る人もクリアーしたのがわかったようだ。金庫が揺れている。


「早く、開けてあげないと、窒息死してしまうかもしれない。」


金庫のハンドルを回したが。動かない。


「え?、なんで?」


鍵がかかってしまっているのだ。金庫の開け方など知らない。


「ど、どうしよう。」


すると、タブレットに、『金庫の開け方、5億円』と書かれている。


そして、タブレットには、僕たち四人にビデオ通話が始まった。


「早く、開けてくれ。」


「息苦しいから、早く。お願い。」


「10億よ。10億。私のお金。」あははは。



僕のタブレットの隅には、『金庫の開け方、5億円』と『窒息まで5分』の文字があった。




読んで頂き誠にありがとうございます。


夏のホラー作品です。


お気づきかと思いますが、全員の数字を、足してみてください。


10億もらっても、すんなり山分けとかにならないだろうな。


それでは、またお会いいたしましょう。m(._.)m

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