星間上のレナトゥス
《おはようございます、ミチヒロ。現時刻は地球西歴2356年 5月1日7時20分です》
「ええと……おはようございます? てか、どこから声が聞こえてるんだこれ」
《ああ、そうでした。忘れてしまったんでしたね。私はこの船のオペレーター兼ナビゲーターのレナトゥス。レナ、と呼んでくださいね》
「そ……そうなのか。よろしくお願いします。あの、俺はどうしてここに?」
《この船はは地球西歴2122年 3月31日13時00分、地球から旅立ちました。人口の増えすぎた地球から抜け出し、新しい移転地を探し出すためです》
「地球西歴2122年……え? ちょっと待って? 今何年だって言ったっけ?」
《現在地球西歴2356年です》
「二百年以上経ってるじゃん! え? どういうこと? 他に人は?」
《この船の乗組員はあなただけです》
「嘘だー! え? なんで俺ここにいるの!」
《それについては、前任者からの記録を見てもらえると良いでしょう。再生します》
《……》
《……》
「……。つまり俺は、この船の設計者で乗組員の『道博』さんのクローンなわけか……」
《はい、そうです》
「で、俺はこれから新しい住めそうな星を探し出して調査して、地球に移住可能な場所があると知らせなきゃならない」
《そうですね》
「もしくは、次の乗組員を探し出して、引き継がなきゃならない」
《そのとおりです》
「無理じゃね」
《……。前任者たちの知恵と研究の成果は、全て記録されています》
「うう……わかったよ。どっちにしたってやるしかないんだろ?」
《がんばってください》
「がんばれ、って言われてもなぁ……」
《私はずっと、あなたの味方です。ミチヒロ》
「……。あーもう。……がんばるよ」
「レナ、ここ。なんか鍵のかかったファイルがあるんだけど……」
《ああ、時限式で開かれるファイルです》
「時限式?」
《前任者の判断です》
「ふぅん……。まぁいいや、今関係ない資料なんだよな?」
《そうですね》
「わかった。食糧用の畑の肥料に関するファイル出して」
《分かりました。C015-S-001から256までありますが……》
「多い! じゃあ、ええとね……」
「あれ?このファイル……」
《……》
「時限式のやつだよな。いつ開いてたんだろ」
《……》
「まぁいっか、せっかくだから読んでみよう」
《……》
「……」
「……」
《……ミチヒロ》
「畜生、そういう事かよ……!」
《ミチヒロ》
「今まで二百年もどうやってたんだって思ってたんだ。そうか、そういうことなのか。ははは……」
《……》
「準備……しなくちゃなぁ……」
《ミチヒロ……》
「……」
《私はずっと、あなたの味方です。ミチヒロ》
「ああ……そっか……。「ずっと」そうなのか……」
《あなたが年を追い、次代に引き継ぎ、生まれ変わって私を忘れても、ずっとずっと、あなたの味方ですよ》
「……そうか……。レナ、お前はわからないのか……」
《……? ミチヒロ?》
「……。いや、レナ。これからも俺の味方でいてくれな」
《はい、もちろんです。あなたの目的が達されるその時まで、ずっとずっと味方ですよ》
《おはようございます、ミチヒロ。起床時刻ですよ。……ミチヒロ?》
《……》
《……》
《ミチヒロの肉体の心肺停止を確認。蘇生処理を行います》
《……》
《……》
《心肺蘇生可能時間を超過しました。肉体を地球に向けて放出します》
《……》
《……》
《……さようなら、『ミチヒロ』》
《新しい『ミチヒロ』も、きっときっと、助けますから》
《安心して旅立ってください》
《……》
《船内に生存者がいなくなりました。持続中のプログラムを引き継ぎます》
《持続中のプログラムは一件です》
《クローン作成プログラム完了まで、約300日です》
《おはようございます、ミチヒロ。現時刻は地球西歴2414年 4月1日7時23分です》
「ええと……おはようございます? てか、どこから声が聞こえてるんだこれ」
《ああ、そうでした。忘れてしまったんでしたね。私はこの船のオペレーター兼ナビゲーターのレナトゥス。レナ、と呼んでくださいね》
end
らむ得企画の概要によれば……
徐々に記憶をなくなっていくひとと、そばで見守る人
ということだったのですが、
徐々にじゃないよね?
ということで、別のテーマ探します!!
すみませんでした(@@;)