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3話「苦節三十年、ここまで粉骨砕身の思いでやってきたことが遂に実を結びましたね」

登場人物紹介

旦那様:雇用契約破棄が出来る。

メイドさん:詠唱破棄が出来る。

作者:投稿拒否が出来る(出来ない)。作中には微塵も登場しない

「旦那様お飲み物をお持ち致しました」


「お、ありがとう」


「粗茶です」


「そこは嘘でも上等品って言ってほしかったなぁ!」


「そんな、私のような者が旦那様に向かって法螺を吹くなどとてもとても……」


「世の中には、優しい嘘もあるんだよ?」


「ですが、どれだけ取り繕おうがそれが嘘な事は変わりありません。嘘を付くことで安っぽい夢を見せて人を傷つけてしまうぐらいならば真実を告げることで他人を現実へと導きたい。私は、常にそう在りたいと思っております」


「お茶一杯の夢すら見させてくれないのか君は。素晴らしい心掛けではあるけども……ん? ていうか君、俺を騙してここで働いてるよね?」


「はい。然し、私はあの時は虚言は申し上げておりませんのでセーフかと」


「それを王都では詭弁って言うんだよ?」


「存じ上げております」


「煽り耐性カンストか」


「このような場面では、都ではドヤ顔を披露するとお聞きしました。どうなさいましょうか?」


「煽り性能もカンストか。しなくていいよ」


「……ドヤ」


「やるんだっ!? そして全く動かない表情筋ッ!」


「如何でしょうか」


「百人に百人がドヤ顔ではないと言うだろうけど個人的には百点満点中百点」


「恐縮で御座います。お恐れながら採点理由をお聞きしても宜しいでしょうか?」


「十割内申点」


「苦節三十年、ここまで粉骨砕身の思いでやってきたことが遂に実を結びましたね」


「ティーンエイジャーでしょう君。頭を悩ませてたり、汗を流してるとこなんて見たことないし」


「旦那様の御前で苦悶の表情を浮かべるなど、メイドとしてあってはならないことです」


「いやいや、雇用契約を結んでいる以上、幾ら貴族と平民という関係であれども業務上は対等な関係であるべきなんじゃないか? 悩みを隠されたまま仕事がおざなりになっても困るし」


「なるほど。では旦那様、私日頃からある悩みを抱えておりまして」


「……聞こうか」


「旦那様が性衝動に駆られるよう日頃から努力しているのですが、それでも私が襲われないというのは……もしや、旦那様は勃起不全(ED)でいらっしゃるのですか?」


「業務上は対等な関係と言ったけどガッツリセクハラしていいとは言ってないからね?」


「旦那様、失礼ですが些かセクシュアル・ハラスメントに対して敏感になっているのでは御座いませんか?」


「敏感も何も、今の時代は容姿を褒めるだけでも嫌悪感を感じたと言われてわだかまりが起こる時代だし、気をつけるに越したことはないんじゃないの?」


「旦那様の仰る通り上流階級の方々のフォーマルな場では、そういった『配慮』が求められることは確かで御座います。然し、大衆酒場の様なカジュアルな空間ではこの程度のやや淫猥な発言は日常茶飯事と言っても過言では御座いません」


「……そうかもしれないな」


「勿論、度を過ぎた発言は御相手を傷つけてしまうだけでしょう。然しながら、仲間内で言い合うことのできる思いやりの籠もった軽口のような物であれば、性を匂わせる発言もセクシュアルハラスメントたり得ないのではないでしょうか」


「なるほど……君、取り敢えず道徳的な事を言ってお茶を濁そうとしてるよね?」


「はい、本日の茶葉はアディアから伝来した加工法によって独特の濁りを含むものとなっております」


「違くてだな……兎も角、俺はその……そういうものではないよ」


「では男色家でいらっしゃるのですか? もしそうなのであれば人体変成術を使用しますが」


「軽々しく禁術の類を使おうとしないでくれ。貴族ではそういう性癖は珍しくはないけども、俺は平民の生まれだし男に夢中になってる暇なんてなかったよ。そもそも、男色を嗜んでいるなら嗜んでいると、既に君を遠ざける理由として言ってる…………ん、確かにこのお茶は不思議な味だな。少し驚いたけど嫌いじゃない」


「勿体なきお言葉に御座います。所で旦那様、お茶に含まれているカフェインは媚薬効果があるという説があるのはご存知でしょうか?」


「ブバッ!? ゲホッゲハッい、いきなり何を……ゴホッ」


「と、申しましても学術的な根拠はないのですが…………旦那様、水も滴る良質な書類が御出来になりましたね」


「うぉああああっ書類がっ! なるべく早く拭くもの持ってきてくれる!?」


「畏まりました。では僭越ながら私の下着を……」


「マジで! ふざけている! 場合じゃないからッ!」


「軽率な発言で御座いました。では……魔力回路起動、簡易術式展開、『集え』」


「お、おお。溢れたお茶が水球になっていく……そういえば君、魔術研究機関(アカデミア)の出だったね」


「はい、高位召喚術式における人柱の必要性について三年間研究しておりました。といっても、先程のものは常用魔術の応用に過ぎませんが」


「いや、それでも魔法を普段の生活で誰かの為に使うことが出来る人は凄いと思うよ。肉体強化(ドーピング)なんて普通に生活してたら何の役にも立たないからね」


「そんなことは御座いませんよ。力に溺れず、ただ真摯に人と向き合ってさえいれば、たとえ忌むべき力であろうとも誰かの為に奮うことができると……私は偉大な冒険家の方にそう教わったことが御座います」


「……そういうもんかね」


「そういうもので御座います」


「それはそうと」


「如何が致しましたか、旦那様」


「セクハラは程々にね」


「私の一存では決め難い案件ですので一度社の方に持ち帰り前向きに検討させていただきます」


「せめて善処してくれたまえ。それと、君の社は此処で雇用主は俺だ」


「私は旦那様の事を一番に考え行動致しますが、旦那様の権力に屈する気は毛頭御座いません」


「メイドの台詞じゃねえ……何でマーサは君にお茶汲みを任せたんだ……」


「メイド長は私に『愛嬌以外は最高のメイド』と言ってくださいました」


「くっ、流石にマーサに対して性的な話はしなかったか……」


「いえ、アディアから伝来した房中術が如何に優れた健康法なのかということを八千文字のレポートに纏め提出しましたところ、『臆せず積極的にガンガン行け』とのアドバイスをいただきました」


「既に俺の貞操門番が破られているッ!?」


「話は変わりますが旦那様、この後十六時間程私とエッティな事をする御予定はありませんでしょうか?」


「死ぬわッ! 話微塵も変わってないしッ!」


「……キャッキャウフフする御予定はありませんでしょうか?」


「うん無いよ? 表現をマイルドにしても無いものは無いよ?」


「旦那様、貴族に貞操観念など不要なのですよ?」


「んなわけあるまい。それに、無表情でまぐわってくれと頼まれたとて、美人局や詐欺の類を疑うのは当然なのではないか」


「なるほど……所で旦那様、ここに先程魔術によって集めた水球が御座います」


「あるね」


「この水球を完全なる水とそれ以外の成分に分離し、水以外は焼却処分致します。『爆ぜろ』」


「何をしようとしてるかは見当も付かんが、呪文物騒だね」


「このままでは量も不十分なので、空気中の水分も集めましょう。対象詳細指定、範囲指定検索開始、『集え』」


「?」


「そしてそれを被ります」


「ファ!?!?」


「旦那様、僭越ながら私めを抱いていただけないでしょうか?」


「え? ん? いや、ナニヤッテイルンデスカキミハ?」


「趣向を凝らし、水も滴る良い女という方面でのアプローチで御座います。如何でしょうか?」


「それは元々良い女が水を被るから通用するのであってだな……ん、なら間違ってないのか? ああもう、兎に角これで拭きなさい」


「いけません、旦那様のジャボ(首のヒラヒラ)が汚れてしまいます」


「比較的安物だから問題ない。君に風邪をひかれるほうがよっぽど面倒だ」


「申し訳ございません……旦那様、何故目を合わせていただけないのでしょうか?」


「メイドとして、そこはスルーしていただけると助かる」


「?」


「何でこんな時はニブいんだ……はぁ、早く部屋に戻って着替えてくれ。」


「畏まりました。それはそうと旦那様、随分と体温が上昇していらっしゃるようですが」


「誰かさんのせいでね……」


「おや。マンドラゴラ印の発情薬に気付いていらっしゃったとは、流石は旦那様です。」


「いや媚薬盛ってたのかよ!?」

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青い鳥(ツッタカター)
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普段書いてるやつも良かったら読んでね!!!!(クソデカボイス)
誰か銭湯の男湯に美少女(ロボ)が居た時の正しい対処法を教えてくれ。
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