1話「旦那様、僭越ながら申し上げますが私めに欲情していただけないでしょうか」
登場人物紹介
旦那様:辺境の領主。最近の悩みは他人から領主らしくないと言われること。
メイドさん:短期で雇われているメイドさん。最近の悩みは夕食の材料であるワイバーンの調達に手間取ること。
「旦那様、僭越ながら申し上げますが」
「何かね」
「私めに欲情していただけないでしょうか」
「なんて?」
「私めを抱いていただけないでしょうか」
「グレードアップしてない? え、いや待って待って待って、本当にどうしたの君ッ! いつものクールで寡黙で冷静沈着な仕事が恋人な君は何処へ!?」
「旦那様、私も只己の欲求のままに抱いていただきたいと懇願しているわけでは御座いません」
「それはそうだろう。そうじゃなかったら只の痴女だからね」
「寧ろ旦那様の顔はそこまで好みでは御座いません」
「じゃあ抱けなんて言うなよッ!」
「というかそこまでイケメンでもありませんし、無精髭を生やされている御姿や寝起き姿などは、この年齢になると中々に見るに堪えません」
「雇用主を貶して何がしたいの? 一応言っとくけど俺ここら一帯の領主よ? 地位高いよ? ある程度の権力はあるのよ?」
「そんな中途半端な権威を振りかざしても虚しさしか残らないと思われますが?」
「ホント何なんだコイツ!?」
「と、まあ旦那様との戯れも程々に、私めを抱いていただけないでしょうか」
「ん゛ん゛っゔんっ…………取り敢えず、理由を聞こうか」
「はい、遡りますは今から七千と六百飛んで九年」
「嘘つけぇいっ! 文明が在ったかすら危ういわっ!」
「ジョークで御座います」
「真面目に話したら死ぬのか君は……」
「さて、五十代手前に差し掛かりいいお相手の一つも居ない彼女居ない歴イコール年齢の旦那様で御座いますが」
「ぶっちゃけてきたね君。いーんだよ、平和なこの時代にぱかすか人を増やしても邪魔なだけだろうし。それに、そもそも出会いの場が無い」
「出過ぎたことを言うようですが、茶会等に御出席なされば宜しいのでは?」
「茶会ねぇ……こんな辺境の地のしがない領主が出ていっても浮かない?」
「ある程度の権力はあると、先程仰っていたではありませんか」
「……偶々一兵卒の甘ちゃんが、片腕引き換えに当たりくじを引いただけだよ。沢山のハズレを引いた奴がいた中俺だけが残った。だから仕方なく、御国から英雄扱いされただけだ」
「ですが、残念ながらそれなりの領地はございます」
「そうそう、それなりには領地が……って、今残念ながらって言った!?」
「この国は世襲制でございます。例え聡明であろうと愚鈍であろうと、親が権力を持っていれば子はそれを無為に受け継ぎ、そしてそれをまた次の世代へと繋ぐのです」
「なるほど、言わんとしていることはわかった。つまり君は俺に跡継ぎをつくれと言いたい訳だね?」
「ええ、あらゆる生命は自身の生きた証を遺そうとします。それは人間とて同じ事。偉大な偉業を書物に纏め、きらびやかな建造物を建て、子を成し、自身が築いたものを未来へと遺す。それが生きるという行為です」
「…………その理論でいくと俺はもう十二分に生きたんだから、わざわざ、その……子孫を遺す必要はないと思うんだが。領地は国に還せばいいし?」
「何をおっしゃいますか。旦那様に命を散らすその最後の一秒まで確固たる意志を持って生き抜いていただかねば、使用人の格まで下がってしまうというものです」
「有期労働契約な癖に……何なら臨時雇用な癖に……」
「嗚呼、数年前の猛々しい旦那様の姿が懐かしい……」
「軽々しく過去を捏造しないでくれ」
「…………話を戻しますが」
「話を逸らすの間違いなのでは?」
「今現在嫁探しもせず、領地を繁栄させる気概も無く、微塵も生きる目標を持たず、只々余生を貪る怠惰で愚かな旦那様には生への渇望を……具体的には、私めが物理的に一肌脱ぐ事で性的に活発になっていただきたく存じます」
「その発言だけ聞くと君は只のド淫乱だが、その発言以外とセットにしても端的に言って頭がおかしいからね?」
「そもそもこの御時世に僻地の領主であらせられる旦那様の使用人を、更には低賃金でしている時点で今更でしょう?」
「事実は時に人を傷つけるんだぞ? ……ていうか働かせてくれって言ってきたの君だったよね!?」
「はて、何の事やら。それはそうと旦那様、交合いは今夜で宜しいでしょうか?」
「言い方」
「……合t――「何でよりストレートを選んだ!?」――ジョークで御座います」
「……あのねぇ、そもそも何も言われていないのに自分から抱かれに来る使用人というのは如何なものかと思うわけですよ」
「なるほど、旦那様は既に調理が終わっている料理が食べたいのではなく、御自身で材料を吟味し調達した料理が食べたいと、そう仰っているのですね?」
「仰ってないです。そうじゃなくだね、俺が君を……その、『そう』した所で、特別手当とかは何も出せないわけでね?」
「旦那様に財も地位も無いのは承知の上で御座います」
「してる上で何故その選択肢にッ! 今更だけども君、美人だし、お茶淹れるの上手いし、料理も美味しいし、洗濯だってシワ一つなくこなすし、偶に寝落ちした時に毛布を掛けてくれたりの気遣いが出来るのに、何故此処で働いてるの!?」
「お褒めに与り、身に余る光栄で御座います」
「謙虚ッ!」
「此方で働きたいと思い至った理由、で御座いますか……特に御座いません」
「無いんだッ!?」
「はい。繰り返すようですが、生きる目的を失い、死んだ怪魚の様な瞳をした旦那様の元で働きたいなどと思う輩など、この世には存在しないでしょう。ましてや、このような辺境の地では尚更……」
「おおっと、今日中に解雇される覚悟を秘めたかのような鋭い心へのボディーブローだ。今なら退職願や退職届なら幾らでも判を押せそうだなぁ」
「残念ながら、私に甘やかされてこの数カ月を生きてこられた旦那様は、もう私抜きでは生きられない身体だと思いますが?」
「…………否定出来ない部分があることは認める」
「旦那様、私が見返りを求めてこの仕事を選んだとお思いですか?」
「思わないなぁ……メリットは皆無だし、そもそも数カ月前に此処で働きたいと言ってきた君は随分とみずぼらしい格好だったから、何かしらの切羽詰まった理由でもあるのかと思っていた」
「いえ、そのような理由は全く」
「無いの!?」
「寧ろ服は私自らズタズタに仕上げました。こうすればお人好しの旦那様は簡単に騙され、か弱い私をホイホイと雇っていただけるだろうと」
「狡猾!? 何でそうまでして此処に来たの!? 俺のことでも好きなの!? って、そんな訳ないでしょうが俺のバーカっ!」
「………………ええ、ソンナワケアリマセンヨ」
「……な、何でカタコトなんですかね」
「何でもないです、旦那様の事なんて微塵も好きではありません。こんな髪もボサボサで、目つきも悪くて、時折私の仕事を奪って家事を手伝おうとする気はあるのに上達する気配は皆無で、甘いものや脂っこいものを食べると直ぐに胃がもたれて、身体が鈍ってるのに気づかないで全盛期の様な運動をしようとして寝込んで、おっちょこちょいで、空気を読むのが苦手で、不器用で、綺麗な女性を見ると直ぐに赤面して顔を背けたり、毎日他人の事を考えて行動しようと心掛けていたり、食事を作ればいつも美味しいと言ってくださったり、寝言で私の名前が出てきたのでえっちな夢でも見てるのかと思えば『いつもありがとう』って言ってきたりするような人なんて全然好きじゃありませんよ、バーカバーカっ」
「えっ、えっ」
「…………ぁぅ」
「…………えっと、もう時間も時間だし、寝ようか?」
「……畏まりました、私としても初めての奉仕なので過激なプレイはお控えいただけると――「睡眠ッ、只の睡眠でお願いしますッ! せめて、せめて考える時間を下さいッ!!!!」……承知致しました」
*次の日
「おはよう御座います旦那様。僭越ながら、私めに欲情していただけないでしょうか」
「絶っ対に出会い頭に出る一言じゃないッ! 他を当たって下さいッ!!!!」
「……前向きに検討致しません」
さて、全なろうユーザーの皆様おはこんばんちは。残機1LIFE0です。
突然ですが皆様、メイドさんはお好きですか?
そう、メイドです。萌え〜な方でもリアリティ追求型でも構いません。兎も角、メイドお好きですか?
私は好きです。大好きです。好きじゃなかったらこんな妄想駄々漏れ作品書いてません。
さて、メイドが好きだとお答えになったそこの貴方。なろうでメイドがメインヒロインの小説って、パッと思い浮かびますか……?
なろうで「メイド ラブコメ」などど検索をかけてみてください。ジャンルでフィルターをかけてみてもいいでしょう。
お気づきになられましたか? 「メインヒロインにメイドが出てくる作品」って意外に少ないんです。主人公がメイドだったり、ハーレム要因として出てきたり、脇役にチラッと出てくるだけだったり(そういうのにメイドタグをつけないでほしいなっ!)……
兎にも角にも、私はメイド不足です。可愛いメイドさんがみたいです。だから書きました。誰か続き書いて下さい。いやいやそんなに簡単に私のキャラは渡せませんよへっへっへ(何だコイツ)
更新ペースと致しましては、もう一つの連載を更新したら更新するイメージでゆっくりやっていきますのでどうぞお付き合い下さいませ。
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ではまた。