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第59話 反撃開始

評価&感想はページ下部に御座いますので、是非宜しくお願い致します。

 ウエノの連中は嘲笑と共に自分達の馬車へと帰っていった。


 対して我々のイリヤの村は静まり返っていた。

 長老であるシンゲンを亡くし、若者のまとめ役のダノンは大怪我、巫女のミコトは辱しめを受け気絶させられている。


 ウエノの奴らを撃退すると息巻いて作った防壁や鉄製の道具は何の役にも立たなかった。

 ゴンザが何処まで考えて行動をしていたかは分からないが、結果的にウエノの思うままに踏み躙られてしまった。


 悔しい。悔しいが、ゴンザが余裕を見せて引き返したこのチャンスを無駄にしない。



 防壁上でウエノの連中の様子を伺っていると、コトネが近寄って来た。


「コトネ、ダノンさんはどうだ!?」


「とりあえず大丈夫と言える所まで治療出来たよ。ダノンさんは丈夫だから命に別状はないけど、あの足じゃ歩くまでに相当時間がかかると思うな」


「それでも命があるだけ良かった。ミコトの方はどうだ?」


「お姉は、体は大丈夫なんだけど多分相当強い悪意にやられたんだと思う。さっき目を覚ましたんだけど、ずっと震えてる」


「そうか……。すまない、俺が何も出来なくて。長老様の葬儀も間も無く執り行われるんだろ?その前にミコトに会っておきたい」



 コトネと一緒に防壁を降りて自分達の家に向かう。

 ちょっと前までは、不安を抱きながらも希望の方が大きかったのに今じゃこの有様だ。この家だって何の為に建てたのか。


 ミコトの部屋のドアをノックする。


「ミコト、俺だ。コースケだ。入ってもいいだろうか」


「……はい」


 蚊の鳴くようなか細い声で返事が来る。普段からミコトは闊達では無いものの、決して元気のない少女という訳ではなかった。こんなミコトの声を聞くと心が締め付けられるように痛くなる。


 部屋に入るとミコトは布団の上に部屋着で座っていた。目は虚ろで、どこを見ているのか焦点が合っていない様に見える。


「ミコト、大丈夫か?さっきはすまなかった。助けてやれなくてごめん。ミコトが心配できたんだ」


 ミコトからは返事はなかった。

 その代わり、近づいた俺の顔を無表情で見つめ返してくる。

 その顔には無表情の中に戸惑いや怒りの感情が映っているように見えた。

 そしてじっと見つめ合って暫くするとミコトの表情が無から笑顔に、そして泣き顔に変わっていき、遂には目元から大粒の涙が溢れてくる。


「コースケ様……。コースケ様コースケ様コースケ様!コースケ様、怖かった。私怖かったよぉ……」


 ミコトはそのまま俺の腰に手を回し、胸に顔を埋めてくる。

 わんわんとなく様はまるで子供だ。普段気を張って生活しているからだろうか、反動で余計に子供の様に感じる。

 俺はミコトの頭を優しく撫でてやる。頭を撫で、肩を摩り、背中を軽く叩く。

 暫くするとミコトは落ち着いたのか、泣き声は聞こえなくなってきた。


「ミコト、本当にごめんな。何もしてやれないで。長老様も俺のせいで殺されてしまった……。仇は必ず取る。ウエノは、ゴンザは必ず俺が倒す」


「はい……。私はコースケ様を信じております。ですが、命だけは……。コースケ様が危険と感じたら何を置いてでも逃げて下さい。二人でも構いません。コースケ様が生きていてくれれば私は何もいりません。どうぞ無理はしないで下さい……」


 俺は無言で頷きミコトの手を取る。

 一緒に立ち上がるとシンゲンの葬儀へと向かう。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 本来、村の長の葬儀なので盛大に行われるべきなのだろうが、今はそんな事をしている場合ではない。

 明日にはまたウエノは攻めてくると言っているのだ。


 かと言って葬儀をしない訳にはいかないので、ユキムラを長老代理として、ミコト、コトネの姉妹で葬儀を執り行う。



 葬儀は無言の中で執り行われた。

 シンゲンの死を悼み静かに泣く者はいたが、誰一人言葉を発さずシンゲンは火葬された。


 葬儀が終わって俺は戦いの指揮すべき人間を全員集めた。


 ダノン、ユキムラ、ミコト、コトネ、リエ。この5人と俺で村人達を指揮してウエノに勝たなければならない。


 ダノンは治療はされたものの、まともに動くにはまだまだ時間が掛かるので戦力としては考えられない。


「俺が今の考えている基本的な方針を皆さんに伝えます。それは遠距離からの奇襲です」


 奇襲の言葉にダノンとユキムラが顔を顰める。


「旦那よ、奇襲はあんまり好きじゃねえな。まぁ今のところそれしかないんだろうけどよ。それで、その遠距離からの奇襲ってどうやってやんだよ?」


「防壁の上にバリスタがあるのは分かりますか?あれは普通の弓よりもよっぽど強力です。あれを使って奇襲を仕掛けます」


「だが、あれで相手の元に届くのか?」


「いくら強力なバリスタと言えど、普通に撃てばあの距離を届かせる事は不可能です。その為にこの村の巫女と、妖精使いのリエがいます」


「私達は精霊や妖精の力を使って、皆さんの矢を相手に届く様にすればいいのですね?具体的にどの様にしたらいいのでしょう?」


「そこらへんは多分リエが一番詳しい。だろ?俺たちと初めて会って戦った時、リエの矢には音がなかった。アレは妖精の力を借りて何かしたんだろ?」


「お前……、良くあの瞬間に気付いたな。アレはその通り、妖精の力で風の抵抗を無くしたんだ。だから矢は何処まででも飛んでいく」


「だそうだ。だからミコト、コトネ。リエにやり方を教わってくれ。それでお前達3人はそれぞれ一機ずつバリスタを受け持って援護してくれ」


「わかった!任せて、コースケ様!」


「それと、ダノンさん。負傷した体に鞭打つ様で申し訳ないのですが、バリスタ部隊の補助をお願い出来ますか?村一番の弓の名手に照準をお願いしたいのです」


「旦那、村を守る為だ。俺が死んだって村は守ってやる。任せとけ」


「多分これでウエノの奴らのほとんどは倒すか足止めが出来るはずだ。問題はゴンザだ。アイツを仕留めるのは簡単ではないと思う。方法は今考えているから、俺に任せておいて欲しい」


「俺達はコースケ殿を信じる他ない。ここで負けたらもう後はないのだ。全力でやるぞ。コースケ殿、案がまとまって俺達が力になれるのであれば言ってくれ」


「ユキムラさん、ありがとう。じゃあみんな、夜明けと共に作戦開始だ」



 これが最後の夜明けかも知れない。



 そんな弱気な考えが一瞬頭をよぎるが、右手と左手に感じる温もりを守るため、全力でやりきってやる。

おはようございます。


ここまで読んで頂きありがとうございます。


今日までは何とか更新出来ました!


が、明日は難しそうです…


埋もれないようにブックマークして頂けると幸いです。


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