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第52話 敵前逃亡

いつもありがとうございます。

評価&感想はページ下部にございますので、是非宜しくお願いします。

「な、な、なんだよアレ……」


「……コースケ様、信じ難いかも知れないけど、どうも精霊の力みたい。コトネの精霊たちがビンビン反応してる」


「ああ、彼もあの力に驚いているみたいだ。あんなとてつもない力を発揮できるものなのか……」


 巨大な火球は丘を焼き尽くして暫くすると消えていった。 それでも火球の残した爪痕は甚大な被害をもたらした。


 鬱蒼と生えていたはずの木々は跡形も残さず灰になってしまったし、土も溶けてドロドロで溶岩の様になっている。

 人間が仮にあの中にいたら影も残さず消えていただろう。


 逃げ出すのが一歩遅ければ、悪人面に囲まれ丘から出られず、あの火球の餌食になっていたかと思うと寒気がする。

 丘を囲っていた男達が一斉に町の方を振り返り傅く。 そこには音の精霊に追わせていたはずのゴンザの姿があった。


「まさかとは思うが、あいつがアレをやったのか……?」


「信じたくはないが、そうなんだろう。あいつの精霊は間違いなく火だな」


「そんな事はどうでもいいよ!早くここから逃げて村に帰ろう!このままあいつらが村に来たら皆殺しになっちゃうよ!」


 コトネが慌てて俺達を移動させようとする。

 俺もコトネの言葉に反応して、急いで村に足を進めた。

 進めたはずだった。


 突如俺の左足に激痛が走る。 突然の出来事に地面に足を付けずに転がってしまった。


 ――なんだ、何が起きた。


 左足を見ると矢が突き立っていた。村で使っている物よりも短い、金属製の矢だ。

 ちくしょう、やっぱりこの町は俺が思っていた事を先にやっていやがった!


 これはクロスボウの矢だ。 多分あの丘にいた奴らのうちの誰かが放ったものが当たったんだ。

 普通ならこの距離がクロスボウで届くはずがない。 巨大なバリスタか、もしくは精霊の力で補助を行ったのだろう。


 傷みを堪えて矢を抜く。すかさずコトネが治癒術を掛けてくれたのでなんとか大事には至らなかった。


 ただ、もう俺達の存在はバレている。 完全に俺のミスだ。あの丘に不用意に近づいたのもそうだし、精霊使いに精霊を嗾けたのも、よく考えればすぐにバレる事だ。

ただもう過ぎてしまった事は仕方ない。この先無事に生きて帰らなければ。


 山の中を逃げるにも男だけのあちらの方が速く行動できるだろう。 俺達は今あるこの距離のアドバンテージを減らす事なく逃げ切らなきゃならない。 少しでも遅れて囲まれたら今度こそ火の玉の餌食だ。


  最近なんだか難易度ハード過ぎやしないかい。



 ◆◆◆◆



 俺達は必死で山の中を走る。

 ただ、傷みは引いたはずだが、先程受けた衝撃故にどうしても片足を引きずってしまう。


 まずい、このままでは簡単に追いつかれてしまう。 嫌な汗が背中を伝う。 ここは覚悟を決めて対峙するべきか、それとも洞穴とかに逃げ込むべきか。

  どちらにしても生存の可能性が非常に低い。


 ーーせめてコトネとリエだけでも無事に逃がしたい!

俺が時間稼ぎをしている間にこの子達だけでも!


  「おい、オレに掴まれ」


 リエの突然の言葉に一瞬考えが真っ白になる。


「コトネ、お前もだ。オレに掴まれ」


 掴まれと言っておきながらリエは俺とコトネを逆に掴まえ、引き寄せる。


「コースケ、あの時の御礼だ。今度はオレがお前を助ける」


 そう言うと、俺とコトネの脇に腕を廻し、リエは飛んだ。


 一瞬だけ大空に舞いあがり、次の瞬間には木の上スレスレを超低空飛行だ。 その速度は鳥なんかあっという間に追い越し、馬でも追いつく事は出来ないだろう。

  敵に視認出来ないギリギリを飛び、追撃を躱す。


 これなら村まであっという間だなと思っていたら、背中から苦しげな息遣いが聞こえてくる。

 振り返るとリエが脂汗をかきながら俺達を掴まえている。


「おい、大丈夫かリエ!」


「うるさい、騒ぐな。気が散る。この技は凄い疲れるんだ。あんまり長くは保たないぞ」


 ちょっと待て!この速度で放り出されたらそれはそれで大参事だ!


「こ、コトネ!なんとかならないのか」


「なんともならないよ!リエチーの妖精君がコトネかコースケ様の事認めないと使役出来ないもん!」


 だあああ、ちくしょう!!


  「おい、マリモ!俺の力を使え!主なんて認めなくていい!俺から力を取って飛び続けてくれ!」


 マリモみたいな妖精は俺の眼前に現れ、突然体当たりをしたかと思うとそのまま消えていった。

 次の瞬間には途轍もない倦怠感に襲われ吐きそうになる。


 それでも、飛翔の速度が先ほどの比にならない程上がったのは俺の力を使ったからだろう。

 超低空飛行のまま、俺達は凄まじい速さで村へ飛んで行く。


 俺がぐったりする変わりに、その脇でリエの呼吸は整っていった。


「コースケ、すまない。肩代わりして貰って」


「いや、いいんだ……。どうせ俺じゃ制御出来ないんだろうし……。そ、それにしてもこれって凄い疲れるんだな……。生命の力を取られる感覚を初めて味わった……」


 ミコトもコトネもこんな感覚を常に感じながら精霊を使役しているのか。本当に頭が下がる。


  飛行状態のまま、なんとか村の近くの森まで辿り着いた。

 リエはそこで妖精を呼び出し一度話をしているみたいだ。


「コースケ、まずはありがとう。お蔭でなんとか帰ってこれた。彼もとても喜んでいる。」


「……おう、礼を言われる程じゃねえや……。リエがいなかったらあそこで終わってたからな。んで、マリモ野郎はなんで喜んでんだ?」


「いや、その……。言いにくいんだが……」


「なんだよ、言ってくれよ」


「あ、ああ。コースケから余計に力を奪ったから彼はどうやら満腹らしい。これからもたまになら力貰ってやってもいいぞって……」


 確かに頭にくるな……。 でも今回はマリモッコリに感謝だ。あいつがいなかったら俺達は多分ダメだった。

 多少多めの力を奪うくらいで済むなら安いもんさ。釣りはいらねえよ。


「普段ならイライラするけど、今日はいいや。マリモッコリにお礼伝えといてくれ。さあ、本当はゆっくりしたい所だけど今はまだダメだ。皆長老様の所にいくぞ」


 ウエノの町は色々と予想外だった。それも俺達の想像の斜め上を遥かに超えていった。


 イリヤを砦にしたが、これでは持ちこたえられないかも知れない。


 俺達はもう一段階上の作戦を考えるべく村に帰った。


ここまで読んで頂きありがとうございます。


最近は少し一話の長さを短くしてみました。


皆様どれくらいの長さが好みでしょうか。


思った通りの文字数で話を纏めるって難しいですね。


これからもよろしくお願いします。

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