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第49話 愛の巣の作り方

評価&感想

いつでもお待ちしてます!是非宜しくお願いします!

  まだ茅葺屋根の家は壊していないので、今ならきっと家にいるはずだ。


  家を覗くとミコトとコトネがリエをいじめていた。……もとい、いじっていた。

  髪の毛を結わいてみたり解いてみたり、服を着せたり脱がせたり……


 おっ、もうちょい。も、もうすぐ見え……


 突然マリモアタックを受けて仰け反りながら転がる。

 クソ、あのマリモめ!


「あ、コースケ様お帰りなさいませ。今日はもう宜しいのですか?」


「ああ、ただいまミコト。コトネもリエもただいま。俺は話があって戻ってきたんだけど、お前ら何してたんだ?」


「リエチーがだいぶ元気になったから、服着替えさせたり髪型変えたりしてみた! リエチーって美人じゃん? あんまり見窄らしいカッコは勿体無いからさ!」


「オレはそんな事頼んでないし! 別にカッコなんてどうだっていいんだよ!」


「そんな事ありませんよ、リエちゃん。せっかく美人に生まれたんだから、着飾るのは1つの楽しみなんですよ。愛しい殿方に自分を見てもらうだけで幸せになります」


 そう言ってミコトはチラッとこちらに視線を向ける。

 意味深な視線は辞めてくれ……


「まぁ、女性が着飾るのは俺は反対しないぞ。コトネの言う通りリエは美人だと思うし、若い女の子はもっと綺麗を楽しむべきだと思う」


 そう言ってリエを見ると、ちゃんと食事と睡眠を取っているためか、遺跡の中にいた時よりもふっくらとしてきた。

 元々整った目鼻立ちだった為、健康になれば間違いなく美人と言えるだろう。

 少しツリ目で、髪はゆるふわウェーブ。ミコトもコトネも美人だが、リエはキツイ性格の美女っていう感じだな。まだ15歳だが。


 俺の言葉に一番過敏に反応したのは自分で言い出したミコトだった。


「そ、そうですよねコースケ様! ちなみに若いっていくつまでですか? 18歳は若い子に入りますよね? よね?」


 ミコトが必死になって言ってくる。その言葉には強烈な思いが見え隠れしている。

 大丈夫、18歳もおじさんからしたら十分若いよ……


「それで、コースケ様は何しに戻ってきたの? 最近ずっと忙しそうだから余り困らせるのは良くないってコトネ達大人しくしてたんだよ?」


「あ、そうそう。今日はみんなに相談に来たんだった。喜べコトネ、ついに家を立て直すぞ!」


「ええっ! 本当に!? やったー、これでやっと一緒に住めるね。どういう家にするの?」


「それを相談に来たんだ。建てる場所と間取り、後その他で希望があればそれも聞かなきゃな」


「コトネはみんなでゆっくり寝られる広さの部屋が欲しいな! 後、自分の部屋!」


「そうですね、私も自分の部屋は欲しいと思いますね。洋服とか荷物とか、人に見られたくないものもありますからね」


「みんな自分の部屋が欲しいんだな。俺も自分の部屋と言うか、物置や工房として使える部屋は欲しいな。それで、リエはどうする?」


「……え? どういう事だ?」


「一緒に住むかって聞いてるんだ。コトネは俺達と一緒に暮らすからリエもそうするか?」


「いや、オレはその……。迷惑かけてるし、いつまで居られるか分かんないし。別にいいよ」


「リエチーも一緒に住もうよ! 流石にコースケ様は譲れないけど、でも一緒には暮らしたいな! リエチーも精霊使いって巫女みたいな立場なんだから問題ないんじゃない?」


 俺の事を譲るとか譲らないとか辞めてくれ。

  俺は俺のもんだ!


「そうですね、今はリエちゃんは村の人ではないからお客さま扱いでいいかも知れないですね。リエちゃんがもし住まなくても、私達の所には来客が多いかも知れません。一部屋くらい多めにあっても問題ないですよね? コースケ様?」


「そうだな、確かにそうだ。じゃあリエ。嫌かも知れないけど一緒に暮らすぞ。そのうち自分専用の家とかも作れると思うから、それまで俺達は一緒の家な」


「あ、ああ。でも、本当にそれでいいのか?」


「勿論だ。その為にはリエにも色々協力してもらうからな! 頼りにしてるぞ」


 こうして俺達は4人で暮らす事が決まった。

 間取りとしては4LDKになるのかな。この村で一番大きな家になってしまうかも知れないけど、まあいいよね!


 ダイニング兼リビング1つと、応接が1つ。それと部屋が4つだ。そうと決まれば早速行動しよう。




  板材は集会所を作るのに全て使ってしまったので、追加で取ってくる必要がある。


  温泉周辺の木はほぼほぼ切ってしまったので、今度は作業場から森に向かった方の木を頂こう。

 その方が加工なんかもしやすいしな。


 俺は今回はリエを連れて森まで行く。まだリエはこの村に慣れていないだろうから道案内も兼ねてだ。

 適当な木をバッサバッサと切りどんどん板材にして行く。

 リエはそれを見ながらしきりに感心していた。


「お前、結構凄い奴だったんだな。こういう事自体ほとんど見た事はないが、それでもお前の手際が普通じゃないというのは分かる。たいしたもんだ」


 何処と無く偉そうだが、リエは俺に対しては最初からそうだったので、あまり気にならない。


「それで、これだけの材料をお前一人で運ぶのか?」


「う……」


 勿論元々一人で運ぶつもりではあったが、流石に量が多い。誰か村の人間に手伝って貰えばよかった…。


「はぁ……。あんまり考えなしではやってくれるなよ。今回はオレが手伝ってやる。・・・色々迷惑かけてるからな」


 そういうとリエは手を組み目を閉じる。精霊に祈る時のアレだ。


 しばらくすると、俺が切って加工した板材がカタカタ震えだし、宙に浮いた!

 そのままスケートのリンクを滑るように板材達は動き出し、村に向かい始める。


「ほら、ボサッとするなよ。おいていくぞ?」


 リエは当たり前のように歩き出す。

 ちょっと待て、色々聞きたい。


「これはリエの妖精の力なのか?」


「ああ、そうだ。彼に頼んで運んで貰っている。何か問題でもあるか?」


「いや、問題っていうかスゲーとしか言いようがないんだが。アイツは風の妖精なんだよな?」


「ああ、そうだな。風を司っているぞ」


「風を司るとこんな事も出来るのか?思い出したけど、お前と初めて会った時空気中の酸素を無くして俺達を殺そうとしたよな?アレもこいつの仕業なのか?」


「う……。あ、あの時は、その、す、すまなかった……。オレの与えられてた役割だったからな。」


「そんな事は今更いいんだ。それで、その風の妖精の力なのか?」


「ああ、そうだ。風の妖精は空気を司る。今は板の下に空気の塊を潜り込ませて浮かせている。お前達と初めて会った時は、空気の中の成分を偏らせたんだ。それでお前達の周りの酸素を無くして殺そうとした。オレの必殺技だったのにあんな返し方があるなんて思ってもいなかった。流石だな」


「風の精霊は空気を司るのか・・。そういえばミコト達も光の精霊は浄化の力って言ってたもんな。一般的に言われてる姿形でなくて、本質を考えればその精霊の力は見えてくるのか」


「どうしたんだ、難しい顔をして。ブサイクな面が辛気臭くなって目も当てられないぞ?」


 うるせっ。そこまでブサイクとは言われた事ないわい。


「ちょっと色々思うところがあってな。今度またリエの精霊の力を教えてくれよ。勉強になる」


「構わないが、勉強したところで精霊が使えるようになるとは限らないからな?」


「もちろん分かってるよ。でも頼む」


 こうしてリエのおかげで必要な板材は一回で運ぶ事が出来た。



 さて、もう一度家の構造を良く考えよう。


 本当はレンガ造りなど洒落込んだものが良かったのだが、そんな時間はない。

 敢えて普通の家にするが、住む人数が多いので長老宅に匹敵、もしくはそれ以上の家になるだろう。


 土地は幸いいくらでもあるので、ある程度目安を決めて地面を均す。

 建物は四角い方が使いやすいだろう。長方形の土地に、俺の作業場が少し出っ張るような形で付属する。

 耕し、均し、生石灰で改良し、基礎までも簡易コンクリートで作った。

 その上に木で梁を作り、柱を立て、屋根を掛ける。

 俺の部屋兼作業場はぱっと見はイナ○の物置みたいだ。それでも10畳程のスペースを確保する。


 各部屋の間取りを決め、扉や壁を作っていく。

 表の玄関の扉は少しだけこだわった。一枚の木を使って削り出しで作り、彫刻も施した一品物だ。


 そんなこんなで、細かい所はまだだが、俺達4人で暮らす愛の巣(?)が無事に出来上がった頃には夜になっていた。


「す、すごいですぅ、コースケ様 ! こんな立派な家が私達の住む家なんですか?」



 ミコトは率直に喜んでくれた。


「これで狭い思いをしないで皆んなで寝られるね! たまにはコースケ様と二人で寝てみたいなぁ」


 コトネは妄想を交えながらこの家を気に入ってくれたようだ。


「ウエノの町にあるどんな家よりも住みやすそうだ」


 リエは簡潔に感想を述べた。


 3人ともこの家を気に入ってくれたようで良かった。

 勿論俺だって気に入っているぞ。

 初めて作った長老宅での経験をもとにこの家を建てているからな。質の高さは折り紙付きだ。


 4人で新しい家のリビングで食事をしながら乾杯した。


「無事に家が出来て良かった。リエの妖精にも手伝って貰ったからだいぶ時間が短縮出来たしな」


「オレも一緒に住ませて貰えるという事だったからな。手伝える事は手伝う。気にするな」


「ああ、でもありがとう。助かったよ。それで、この後の行動について皆んなに相談がある」


「誰と一緒に寝るとかですか? 勿論私が最初ですよね? コースケ様!」


「違う、そうじゃない」


「じゃあコトネと寝るって事?みんなの前で言わなくてもコトネはいつでも良かったのに・・」


「それも違う。というかそういう話題から離れてくれ。お前達忘れてないか?これからウエノの町が攻めてくるかも知れないと言う事を」


 リビングを気まずい沈黙が包む。

 ここで唯一まともだったのはリエだった。


「勿論忘れていないぞ。ウエノから攻められるのを想定してこの村を砦にしたのだろう?ではこの後はどうするんだ?」


「それなんだが、俺は、一度ウエノの町を確認に行きたいと思っている。前は地下から行ってしまったからな。実際の町を見ていない。みんなはどう思う?」


「その意図はどこにあるんですか?」


「まずは単純なウエノの町を確認しておきたい。町の規模、人数、人柄。情報収集がどこまで出来るか分からないが、可能なら奴らの考えも確認しておきたい。それで今後の対策も変わるかも知れないからな」


「なるほど、分かったよ。それでどうやって行くの? 誰と行くの?」


「それは逆に聞きたいんだが、ウエノの町は馬車じゃなきゃ行けないか? 歩きは無理なのか?」


「ええと、馬車だと遠回りで半日、もし徒歩なら山をまっすぐ行って1日でしょうか。但し進む道は全て山の中ですが……」


 リエがこの町に来てから4日経っている。

 往復2日、情報収集半日でギリギリか。

 果たして行く価値はあるのだろうか。


「……もしウエノに行くならオレも連れて行ってくれ。邪魔にはならない、きっと役に立ってみせる。頼む!」


「コトネも行きたい! 外を見てみたいし、リエチーに意地悪する奴らは出来るならやっつけてやりたい!」


「ミコトはそれでもいいか?」


「私は勿論コースケ様とご一緒したいと思います。ただ、コースケ様はそういうお考えではないのでしょう?」


「……ミコトは流石だな。今回は速さも必要だし、情報を仕入れられるかも大切だ。それに、出かけた後にこの村を守る存在も必要だ。だからミコトにはこの村に残って欲しいと考えていた」


「ええ、残念ですけど私はお留守番ですね。この村の事はお任せ下さい。その代わり無事に戻ったらお話はちゃんと聞かせて下さいね。2人きりで……」


「……よく考えておこう」


「それで、いつから行くの?」


「出来れば明日の早い時間には出掛けたい。それまでに準備を終わらせなきゃな」




  俺達はウエノに行くための準備をする事にした。


ここまで読んで頂きありがとうございます。


章管理はしていませんでしたが、もうすぐ第1章にあたる部分が完結です。


最後まで宜しくお願いします!

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