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第45話 全面戦争

 ん?どうしたんだ?俺にはさっぱり分からない。


「こ、コースケ様。今なんて仰いましたか?」


「ん?ウエノを正面からぶっ潰すだ!なんかおかしいか?」


「いや、おかしいとかではないんですが、不可能かなーって思いました。先程のお父さんの話を聞いてましたか?」


「ああ、勿論。聞いていたよ。その上でこの結論だ」



 俺は自信満々に答える。

 他に平和的解決が出来る手段があればその方が良いのだが、その手段を取る為には時間が圧倒的に足りない。

 相手の弱みを握るのも、裏で工作をするにしても時間が掛かるのだ。


 それであれば自分の所の強化を図った方が今回は容易い。


「だから今回はウエノと正面から戦おうと思ってる。相手が鉄の武器を持ってる?じゃあこちらも鉄の武器を作ればいいじゃないか。その上で相手の武器が通じないような防具や設備を作る。大丈夫、俺の力を使えばなんとかなる」


 俺は言い切ったが、実は少し不安だった。


 だけどやるしかない。じゃなければ俺達が考えている幸せの形が無くなってしまう可能性が高い。


「と、言う訳だから早速村に戻って準備をしよう。長老殿に相談してダノンさんとユキムラさんにも協力して貰おう」


 俺はミコト両親にお礼を言い、また会いにくる旨伝える。

 ミコトは不安げな顔をしているが、それでも俺について来てくれた。


「コースケ様、本当に正面から戦うつもりですか?」


「そうだな、戦いたくはないが、自分達を守る為だ。戦う必要があれば戦うぞ」


「ウエノの町はこの村よりも遥かに規模の大きな町です。本気を出せばこの村などあっという間に蹂躙されてしまうでしょう」


「普通に考えればそうだろうなぁ。それでも多分大丈夫だと思うけど、それを確認しにダノンさん達にもう一回会いに行く。ミコトは家でコトネとリエの事を面倒見といてくれ!」





 ミコトに2人を任せて俺は再度長老宅に向かう。

 まだいるかな?

 俺の心配は杞憂に終わったようで、長老宅ではまだ熱い討論が交わされていた。


「遅くにすみません、私も入れて頂いて宜しいでしょうか」


「おお、旦那。随分早い戻りじゃねえか。何かあったのか?」


「ええ、一応私の考えがまとまったので皆さんの意見を聞かせて貰いたくて参りました」



「ほう、それはどういう考えでまとまったんだ?」


「ウエノの町と正面切って戦いたいと思います」


「なんと・・!コースケ様、それは正気ですか?」


「至って真面目に答えています。ただ、その為に皆さんの知恵を貸して下さい。勝てないとは思いませんが、より勝つ確率を上げる為の事です」


「旦那よ、まだウエノの奴らが武力で攻めてくるとは決まってないぜ?」


「もちろん平和的解決が出来るならそれでいいのですが、そうではないだろうと、ミコトの両親からも言われました。この村で鉄が取れるという事、この村が鉄を取る準備をしているという事もおそらくウエノ側は把握してるだろうと言っていました。なので最終的には武力での衝突になるだろうと思っています」


「そうですか、ヤマトとマツリもそう言っておりましたか。であれば間違いなく奴らはこの村を襲うつもりでくるじゃろうな。さて、ダノン、ユキムラ。どうするか」


「シンゲン様よ、俺はそんな難しい事考えられねえからよ、旦那がそう言うんであればそれに全力で従うさ」


「俺は考えなしという訳にはいきません。ただ、コースケ殿の考えで今回は良いのではないかと思いますね。きっとコースケ殿には俺達では考え付かないような方法があるのでしょう。それを村のみんなに周知してすぐに対応出来るようにしましょう」


「ではコースケ様の話を聞かせて頂けますか?どうすればウエノと戦えるのかを」


 俺は俺の考えを3人に話していく。

 俺のスキルありきで考え作戦だが、だからこそ成功の確率は普通よりも高いと思う。

 心配なのはウエノの精霊使いがどれだけいるかという事だが、それも出来るだけ対処するつもりだ。


 元々この村を発展させるつもりで考えていた事が、まさか戦の役に立つなんて思わなかった。

戦いは好きではないし正直怖いが手の届く範囲の人を守る為、今回限りは俺は鬼になる。





 俺はこの村を砦にする事にした。

 どちらにしても今の家屋なんかは全て建て直すつもりだったので、一回リセットのつもりで全て取り壊してしまおう。


 ただそれではみんなの住まいがなくなってしまうので、木造の大きな建物を一つ作る。


 元々の構想では村の集会所にするつもりだったが、今は体育館代わりの仮設住宅にする。

 ゆくゆくは各個人それぞれの家を建てるつもりなのでしばらくは我慢して欲しい。



 村の周りの防備は堀を巡らすつもりだ。

相手がどんな兵器・武器を持っているか分からないが、今の文明でそんなに大掛かりなものを持っているとは思えない。精々破城槌等が良いところだろう。

 それくらいの物では越えられない堀と防壁を作り備える。


 武器は色々考えたが、既に村人が使っていて使い易い物を作るつもりだ。

 何にせよ材料が色々必要なのでまずはその採取にあたる。


「長老殿、ダノンさん、ユキムラさん。この一週間で全て出来るか分かりませんが、最大限努力します。なのでご協力をお願いします」


「勿論ですじゃ、コースケ様。さて、儂等はどんな事をしたら良いですかの」


 俺は長老の返事に安堵し、指示を出させて貰う。


 この村の働き手は約30人。

 食料確保の為、10人は狩りに出て貰う。畑仕事は申し訳ないが女性達に出来るだけ頼む事とする。


 残った男手を10人ずつの2つに分け、1つは鉄の回収を、1つは木と石灰石の回収、及び避難所の建設を頼む。


 俺はその間に堀を作り、鉄を加工する為の炉を作り、板材を作らなければならない。

 どれも同時に行わなくてはならないので非常に大変だが、今やらなければこの先の未来が潰えてしまう。ここで躊躇っててはいけない。




 翌朝、長老に頼んで村の男手を集めてもらう。

 昨日のうちに説明した事をダノン、ユキムラが再度村人に説明をし、班分けを行った。


 狩りについては得意としているダノン班の、特に狩猟が得意な面子で行って貰う事にした。大変だろうけど、一週間お願いします。


 残りの20人で、力のある人間を鉄の回収に廻す。残りは俺と一緒に木と石を集めに行く。


 まずは木だ。ダノンと相談して、風呂に行くまでの道及び風呂周辺の木を切る事にした。最終的にはここも整備するが、今は材料確保が優先だ。


 俺は風呂周りの木を自分の鉈で切りまくる。切っては板材にし、村人達に村まで運んで貰う。

 予想通り時間はそれ程掛からず必要な量の板が揃った。

 本当は避難所建築の指示も出したかったが仕方ない。これはユキムラにお願いをしておいた。


 次に石だ。山をそのまま上り石灰石の鉱脈に辿り着く。


 石は重たいので余り大きく切り過ぎると運べなくなる。

 また、無闇矢鱈に切り出すと山が崩れる恐れもあるため、慎重にかつ大胆に切り出して行った。

 ひと塊り30キロくらいのサイズにし、村人に何往復もさせる。

 村の作業場に運ばせ、手が空いた人間に石を細かく粉砕させる。

 粉砕した石灰石を焼き生石灰を作る。とりあえずここまでを村人に頼んだ。


 最終的には土壁を防壁代わりにするので、それを作る時に混ぜ込んで強度を上げる予定である。

 本当はこの方法を建物の基礎に使って大きな家を建てようと思っていたんだがな。



自分で出来る村への貢献が、こんな形で戦争の役に立つなんてな。

俺は求めていたものとの結果の違いに、大きな溜息を吐いた。


ここまで読んで頂きありがとうございます。


今後ウエノとの戦いに向け一気に準備が進みます。


戦闘シーンの描写は予想以上に難しいですね。


楽しんで頂けるようなお話に出来るように努力しますので、今後とも宜しくお願いします。

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