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第33話 宝の在り処

 翌日、朝食を終えてから鍬と鋤を持ち村の広場で待機する。

 腰には袋と鉈も下げている。

 準備万端です。やる気も満タンです。



 暫くするとダノン班の面々が集まってくる。


「よし、みんな揃ったみたいだから行くか!」


 全員で村の東の畑へ向かう。

 畑には野菜や果物が実を大きくして、今や遅しと収穫を待っていた。


「今日はみんなで収穫だ。1人1つだけその場で食べていいぞ!」


 男達から歓声が上がる。

 それとは反対に俺からは疑問符が出る。


「あれ、ダノンさん。今日は開墾は・・・?」


「ん?ああ、今日は開墾しないぜ。なんせこの間旦那1人でやっちまったからな!はっはっは!」



 ああ、そうだった・・。

 この間の仕事で俺が張り切った結果、何ヶ月もかかる畑仕事を1日で終わらせてしまったのだった。


 あの時の俺を殴ってやりたい!まぁ戻れても殴らないが。




 そんな訳で今日は全員で収穫になってしまった。


 それはそれで悪くはないが、俺はやっぱり畑を拓きたい。作った道具の性能を確かめたい!スキルのレベルアップをしたい!

 ダノンにダメ元でお願いしてみる事にしよう。


「ダノンさん、俺は収穫じゃなくて開墾したいんですけど、ダメでしょうか?」


「あ?んー、別にダメじゃねえけどよ、折角だから旦那も収穫して一個くらい食べてみろよ?うまいぞ!」


「それはそうですね、じゃあ頂いてみますね」



 そう言って俺はトマトを一つもぎとり食べてみる。・・・確かに甘い。美味い!


「美味しいですね!どうしてこんなに美味しいんでしょうか?」


「どうしてかは分かんねえよ。でもみんなで精魂込めて育てたからじゃねえか?」


「そうですか、この野菜は村の宝ですね」


 もぎ取ったトマトを食べ終わった。


 このままだとただトマトを食べただけになってしまうので収穫を手伝う。

 今日全部取るわけではなく、今日明日で食べる分のみの収穫だ。


 それ自体はあっという間に終わったので、その後は村へ届ける組、雑草などの処理をする組に別れる。


 俺は勿論開墾組だ!1人だけど・・・。



 特に誰からも反対される事なく開墾組に抜擢される。ダノンに指示を貰い、今日耕す範囲を確認。


 前回の4倍程の広さだ。

 と言ってもダノンにも明確な根拠があって指示した訳ではなさそうだ。

 ダノンに開墾させてくれとお願いをしたところ、じゃあそこからそこら辺まで!とアバウトな指示が来ただけだ。


 それでも俺は自分の力を確認する機会を得たので張り切って作業開始する。


 まずは土を掘り返そう。

 昨日出来たばかりの鍬を手に俺は畑の前に立つ。やはり自分用に作った道具は馴染みが良いな。


 鍬を大きく振りかぶって一振り。

 先端が土に突き刺さる。その瞬間、鍬からまるで衝撃波が発生したかの様に土を盛り上げて切り裂いていく。


 衝撃波は15m程に及び、その部分の土は真ん中が抉れ両脇に畝を作っている。

 このままサツマイモとか植えられそうだな。


 隣の列に立ち同じ事を繰り返す。

 やはり同じ様に土は一瞬で耕し終わった。これは道具がいいのか、俺のスキルの練度が上がったのか。

 その両方だと思うが、予想以上の成果だった。


 このままであれば指示された場所もあっという間に耕し終わってしまう。まあいいか。

 とても楽しいので調子に乗って耕し続ける。


 ダノン班の面々は驚いた様な呆れた様な顔で俺を見ている。


 いいんです、これが俺の力なんです。

天職・作農家かも知れません!



 その調子でどんどん開墾を続けていく。

 暫くすると作業が終わったのか、ダノンが俺に声を掛けてくる。


「旦那、こっちの作業は終わったんだが旦那はどうするんだ?」


「今ノッてきてるんで、これを続けさせて下さい!」


「構わねえけどよ・・・。荒れ果てた土地にだけはしてくれんなよ」


「もちろんです!任せといて下さい!」


「じゃあ俺らは先に戻るから、旦那もあんまり無理すんなよ。終わったら適当に上がってくれな」


「了解です、お疲れ様でした!」



 ダノン班のみんなは村に戻っていく。


 俺は土地を耕し続けた。

 村人達がいなくなって30分程で土地の開拓が終わる。

 これで準備は整った。


「よし、じゃあちょっとだけ冒険してみるか」



 俺は前々から考えていた一つの案を実行する。


 その為には人目はなるべくない方がいい。今日このシチュエーションは俺の案を実行するのにおあつらえ向きだった。





 俺は村から見えにくい場所を選び、畑の真ん中に立つ。

 本当はスコップを持ってきたかったが、流石にそれを持ってくると変な目で見られるかも知れないと思い自重した。


 立っている場所の足元を鍬で掘る。

 今度は力が真下に向くように意識する。俺はここの地面を真下に掘りたいのだ。


 どれくらい掘ればいいのかは分からない。

 その昔であれば5mか10mか。

 それくらいで目的地に辿り着いただろう。


 だがそこから1000年経っている今は表土が堆積したのか、削られたのか分からないのだ。

 なので自分の力が及ぶ範囲で深く堀る事にする。



 そうして5m程掘った時、これまでの土ではない硬い感触が手に伝わる。

 目的の物かも知れない。


 最初に手に当たった、硬い感触の部分の周りを広げるように土をどかしていく。

 そうすると明らかに土ではない白い地面が見えた。

さらに土をどかす。


 ・・・間違いない、俺が探していた物だ。


 そう、これはコンクリートの表面だ。地下5mに埋まっているコンクリート。恐らくは昔の入谷駅だと思われる。

 線路の部分か駅のホームかは分からないが、このコンクリートの中には線路か駅の施設があるはずだ。



「本当にあったんだな・・・!」


 俺は予想はしていたが信じてはいなかった。

 自分で探していた物だが、見つけて想像以上の驚きがあった。



 この入谷駅のコンクリートには鉄筋が使われている。

 また線路の中であればレールにも鋼材が使われている。そのどちらかでも手に入ればこの村に鉄製の道具を用意する事が出来る。

 そうなれば俺の力などなくとも開拓も伐採も全て自分達で出来るようになるだろう。

 まずは開発の第一歩という所か。


 今後必要になるのはこの中の鉄を加工する方法だ。

 知識では知っていても実現出来ない方法では仕方ないからな。加工の方法はおいおい考えるにしても、今日の冒険はここまでだ。


 あまり遅くなると色々疑われるからな。

 全ての段取りが出来たらみんなに報告しよう。




 俺は掘った穴から這い出ると穴を埋め始めた。


 さて、このまま埋めたら場所がどこか分からなくなってしまう。

 しかも畑の真ん中に穴を掘ってしまった。

 いつかここはトマトやらキュウリが乱立する緑の楽園になる事だろう。流石に畑の中を何度も掘り返す訳には行かない。


 俺はとりあえず全てを埋める事にし、当時銀座線が走っていただろう方角に見当をつけ、次の穴を掘る目安とした。


 そこは畑から500m程離れた平地の中で林となっており、その中であれば人目に付かず作業が出来る。


 今日の所の成果は十分に得られた。

 自分の力も確認出来たし、鉄の宝庫であろう場所も確認出来た。


 家に帰ったら鉄の使い道を良く検討しよう。後加工方法もな。



 久々の満足感を得て俺は村への帰路に着く。

ここまで読んで頂きありがとうございます。


冒頭部分を大幅に削りました。


多少は読みやすくなっていると思いますので、今後とも宜しくお願いします。

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