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第28話 お礼

  夕食の残りをリリが少し取っておいてくれたようだ。

  4人でその残りを食べて、ある程度腹を満たしたところで風呂に向かう。


  ・・・え?4人で?

  まぁミコトとコトネと毎日入り続けてる俺が言うのも今更だが、リリは村の一般人で俺と入らなきゃならない理由はない。

  いや、コトネもないんだが彼女は自分で入りたがってるからいいのだ。


「えっと、お風呂はリリも行くの? 一緒に入るの?」


「ええもちろん。何かまずいですか?」


「いや、俺は何もまずくないけどリリはいいのかなって・・・」


「村の英雄と一緒にお風呂に入れるなんて光栄な事です。末代までの誉れとしますわ。合わせてお願い出来るのであればコースケ様の子を授かりたいものです」


  どストレートだった。メジャーリーガーもビックリだ。

  こう言う時は見逃し三振しておこう。


「り、リリ! そう言うのは二人の時に言わなきゃダメよ! あっ、二人の時なら言っていいって事じゃないんだけど、なんて言うか、その。ちょっと今はコースケ様体調悪いからダメよ!」


「はいはい、冗談よミコト。でもコースケ様、二人に飽きたら声をかけて下さいませね。いつでも良いですわよ」


「あ、ああ、ありがとう・・」


 チキンの俺にはこれが限界だった。



  ミコトの光の精霊の力で足元を照らしながら温泉までの山道を行く。

  コトネ捜索中の時の、焦りながら進む山道ではないので歩くのは楽だった。


  一般用のお風呂の脇を抜け客人用の風呂に進む。

  その時にふと道が暗くなった事に気付き、後ろを見るとミコトとリリが一般用のお風呂に入るところだった。


「あれ?今日はそっちに入るの?」


「ええ、私たちはこちらに入ります。コースケ様とコトネはそのまま来客用に行ってください。そちらの方がきっと身体が休まりますからね。帰る時は声を掛けてくださいね。では後ほど」


  そう言って風呂に消えて行った。俺はコトネと二人残されて微妙な空気を感じる。


「ええと、コトネはこの事を知ってたの・・?」


「もちろん! コトネがお願いした事だからね」


「何をお願いしたの?」


「今日だけでいいからコースケ様と二人きりでお風呂に入らせて欲しいって」


「なんでまたそんなお願いをしたのさ」


「だって。コースケ様はいっつもお姉と一緒でしょ? そこにコトネが入る事はあっても、コトネと二人きりはあり得ないじゃない。だから今日だけはってお願いしたの。助けに来てくれたお礼をしたいからってね」


「そっか、そんなお礼なんて気にしなくていいのに。でも本当に二人きりで良かったの? 何かあったら大変だよ?」


「その時はコースケ様に娶って貰えばいいから、全然大丈夫! むしろ願ったり叶ったりかな!」



  この子の明け透けな所は好感度が非常に高い。

  ここまでハッキリ言われるとこちらも余計な心配しなくていいから凄く楽になる。

  もしかしてそれも分かってやっているのかも知れない。もしそうならば彼女は逸材だ。

  人間関係を築く上で相手の思いを読み取ることは一番大切な事だからな。


  それはある意味巫女の資格でもあるのだろう。



  コトネの言葉に心を軽くして共にお風呂へ入る。

  コトネも光の精霊の力は使えるが、元々光の精霊の力を上手く使えない上に今日は力を解放してしまいあまり体力がない。

  だから必要最低限の部分のみ照らしている。


  俺は一足先に風呂に入り身体を洗う。

  コトネはお風呂で飲む為の飲み物の用意をしてくれているようだ。


  身体を洗い終わり湯船に浸かっているとコトネが入ってきて、桶にコップを浮かべてそこに飲み物を注いでくれた。


「コースケ様。この村の特製の飲み物だよ。血の巡りを良くして体力と気力を回復するの。寝る前に飲むと明日の朝にはバッチリ元気だよ! 後でコトネも飲むからね!」


  そう言うとコトネは身体を洗いに行く。

  光は足元しか照らしておらず、見えるのは足だけ、体はシルエットしか見えない。


  やがて洗い終わったコトネも湯船に入ってくる。


「コースケ様、今日は本当にありがとう。あんなに早く誰かが助けに来てくれるなんて思いもしなかったよ。どうしてあんなに早く着いたの?」


  コトネは自分も飲み物のコップを傾けながら聞いてくる。


「ああ、あの時ちょうどミコトとリリと一緒にコトネを探してたんだ。見つからないから一回村に戻ろうかっていう話をしていたらあの光が見えた。原因は分からないけど、もしかしたらコトネかもって思って急いで向かったんだ。その時森の一番近くにいたのがたまたま俺だっただけだよ」


  俺もコトネに入れて貰った飲み物を傾ける。

  ダモの樹液ベースでアルコールも入っているみたいだ。

  更に味はエナジードリンクみたいな感じで、鼻血が出そうだ。


「そっか、その時にはもう探してくれてたんだね。コトネね、洞窟でゼンさんと話をしててとても怖かったんだ。ゼンさんは普段優しい人なんだけど、たまにこっちの話が通じなくなるからさ。ゼンさんも怖かったし、彼が呼び出した魔物も怖かった。ゼンさんの事を一瞬で倒したみたいだし、私にも飛び掛かってきた。たまたまコトネの精霊達が助けてくれたけど、それでも怖くて蹲ってるだけで精一杯だった。その後魔物はコトネを襲っては来なかったけど、でもいつかは襲ってくると思ってた。コトネはこのまま誰にも会えずに殺されるんだって思った・・。本当に怖かった・・・。まだやりたい事も沢山あったし、やらなきゃいけない事も沢山あった。でも力が足りない、何にもできない。その時にコースケ様が来たの。コトネは本当に嬉しかった」



  そこまで言うと湯船の中でコトネが近付いてくる。

  俺の腕を取り自分の腕を絡めて、肩に頭を乗せて話を続ける。



「コースケ様が魔物に襲われた時は時が止まったかと思ったよ。突然肩から凄い量の血を吹き出すし、もうダメだと思った。コトネの治癒術はお姉程強力じゃないし、あの傷は治せないって分かったからね。でもコースケ様は生き残った。あの魔物を倒した。コースケ様は気付いてないかも知れないけど、魔物って凄く強いんだよ?槍や斧なんかじゃ毛皮に弾かれて刃が通らないんだって。そんな魔物を一撃でコースケ様は倒したんだよ。ビックリしたよ。でもね、かっこよかった。御伽噺の王子様みたいだって思ったの。この人がコトネを助けてくれるんだ、世界を守ってくれる人なんだって」


  コトネは腕を取っていた手を俺の背中に廻してくる。

  身体は正面から向き合ってくる形だ。

  暗がりで気付いていなかったが、いつもみたいにバスタオルは巻いていなかった。



「・・・だからね、コースケ様。これは感謝の気持ちなの。受け取ってね」


  顔をゆっくり近づけてくる。

  その両手で俺の顔をそっと挟み潤んだ瞳で見つめてくる。

  そしてその唇がそっと・・俺の頬に触れた。


  触れた後に正面から抱き合ったままコトネは、俺の肩に自分の顔を乗せてくる。


「コースケ様、大好き。今日は助けてくれてありがとう」


  俺はコトネの真っ直ぐな気持ちにくすぐったくなったが、ちゃんと受け止めた。

  今日だけは茶化したりしないで、コトネを抱きしめる。


「どういたしまして。コトネが無事で本当に良かった。もう危ない事はするなよ」


「別にコトネが好きで危ない事した訳じゃないし・・・! うん、でも気をつけるね。コースケ様以外の男には着いていかない事にする!」


「いや、そう極端なのもどうかと思うけど・・。俺だって危ない奴かも知れないぞ?」



「ふふ、コースケ様が危ない人ならコトネはもうきっとダメになってるよ。それにコースケ様なら・・・いいよ」



  耳たぶをカプっと噛まれる。

  やめてくれ! 理性が飛ぶ! 今日は特にまずい、お互い全裸で抱き合ってしまっている。


  俺のマグナムは発射準備を完了してる、後は照準を合わせるだけだ。


「コトネ、そう言うのはやめなさい。大人をからかうんじゃないよ」


「別にー、からかってないし! でもまあお姉に怒られるから今日はこれくらいでいいかな」



  コトネはもう一度俺の頬にキスをして離れていく。

  ふう、今日も俺のマグナムのトリガーは引かれずに済んだぜ。

  そろそろ暴発しそうだ。


「じゃあミコト達も待ってるだろうからそろそろ行こうか」


  俺はすぐには湯船を出られない状況なので先にコトネを出るように促す。

  少しおさまってから風呂を出て、ミコトとリリを迎えに行った。



  ミコト達は既に風呂を出ていたみたいで、俺達が来るのを待っていたらしい。

  特製の飲み物を相当量飲んだようで、分かりやすく酔っ払っていた。


「もう、コースケ様ぁ、遅いですよぉ!そんなにコトネが良かったんですかぁ?まだ私には何もしてくれないのにぃ」


「あら、コースケ様、そんなにお風呂で楽しんだのですか? じゃあ今度は閨で楽しみましょうね。たまには私でもよろしいでしょう?」


  そんな事を言っている。

 ミコトはともかくどうしてリリまでとは思わないでもないが、俺よりも過敏に反応したのはコトネだった。


「お姉もリリも、コースケ様が困ってるでしょ!? 二人ともそんなにコースケ様の事好きじゃないでしょ? そんな気持ちでコースケ様に近付いちゃダメだよ。コトネはコースケ様の事大好きだから、コトネがこれからコースケ様の側に居ることにするから!」


「そんな事ないし! コトネなんかに負けないし! コースケ様のお世話は私の役割なの!」


「じゃあお姉の覚悟見せてよ! コースケ様の側にいるっていつも言うけど、結局巫女だ仕事だって言ってるだけじゃん! コトネはコースケ様が好きなの。だから側にいたいの! お姉はどうなのよ!」


「わ、私だってコースケ様のこと・・・、そりゃす、好きだけど。どこがとか何がとかって言われると難しいけど・・。でも、私だってコースケ様の事好きよ! 一緒にいたいわ!」


「じゃあそこまで言うならコースケ様に決めて貰おうじゃない! どっちが側に居た方がいいか。ね、コースケ様!」


 あれ、なんかデジャヴだなこの話。

 前も同じ流れで俺に結論を求められた気がするぞ。


「ほらほら、3人とも。この話はこの間しただろ?俺のお世話はミコトとコトネ両方に頼むって。それにミコトとリリは酔っ払い過ぎだぞ。明日またシラフでその台詞言えたら本気で考えてあげるよ。さあ、身体が冷めないうちに家に帰ろう」


  3人とも不貞腐れた顔をしながら俺に続く。

 本気だったんだか冗談だったんだか。とにかく今日は疲れたから家に帰ろう。


  コトネは今日もリリの家には帰らず、俺達は3人で寝る事になった。


おはようございます。


いつも読んで頂きありがとうございます。


俺TUEEEの展開はあまりありませんが、今後少しずつ進展は早くなる予定です。


ご要望、ご意見等ありましたら是非ご連絡ください。


宜しくお願いします。

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