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第25話 失踪

 村に着いて今度こそ今日の作業は終了する。

 手に入れた石材はとりあえずミコトの家の前に置く。家に入るとミコト一人だった。


「ただいま、ミコト。無事に怪我なく山から帰ってこれたよ。」


「怪我がなくて何よりです。お帰りなさい、コースケ様。」


「うん、ありがとう。おかげさまで必要な物も見つかったし、石も手に入れられたからね。今日は収穫が多かったよ。ちょっと疲れたけどね。そういえばコトネはどうしたの?」


「コトネは、今日は流石にリリの家に帰らないと何言われるか分からないからって、さっき帰りましたよ。」


「そっか、そりゃそうだよね。最近ずっと一緒でずっと3人だったもんね。」


「ええ、どこに行くのも何をするのも3人でした。私がコースケ様のお世話係なのに。コースケ様もコトネに甘いからコトネも調子に乗ってコースケ様を誘惑したり絆したりと、私は気が気でなかったですよ・・・」


「ええっと・・・、ミコトさん?」


「やっと久しぶりに二人きりですね。コースケ様、遠慮はいらないですよ、私にして欲しい事なんでも言ってくださいね。私だけにして欲しい事・・」


 いかん、ミコトが暴走した。

 思ったより色んなフラストレーションが溜まってたみたいだ。どうすれば発散出来るのか・・。

 俺も溜まってるモノを発散すればお互い発散出来てWIN-WINじゃないか?

 いや、でもそれでいいのか?良いわけないし、まだ昼間だし、誰か入って来たら困るし・・。


 そこで俺はミコトに提案をした。


「じゃあさ、ミコト。お願いがあるんだけど・・・」


「はい!なんでしょうかコースケ様!お使いでも側仕えでも性奴隷でもなんでもやりますよ!」


 性奴隷はマズイだろう。そんな事一言も求めた事はない。


「今日は山を駆けずり回って疲れたからさ、マッサージをお願いしてもいいかな?無理にとは言わないんだけど・・。」


「マッサージですか?精霊の治癒術でなくて?」


「うん、ミコトの手で揉んで欲しいな。」


「そんな、精霊よりも美しい手でなんて・・・。そんな事言ったら精霊達に怒られますよ!でも、仕方ないですね。コースケ様がそこまで望むのであれば私はそれに応えるだけです!ではコースケ様、服を脱いで横になって下さいね。」


 マッサージをされるのに服を脱ぐ必要はないので、脱がずに横になる。

 ミコトを見ると自分も服を脱ごうとしてるので慌てて止める。どうしてマッサージをする人もされる人も全裸で行う必要があるのか。


 でもミコトのマッサージは思ったよりも気持ち良くて、色んな意味で天国に行きそうだった。

 しばらくすると睡魔が襲ってきて気づいたら俺は意識だけ天国旅行に行ってしまった。



 〜〜〜〜


「コースケ様、起きて下さい。そろそろ夕食の時間ですよ。」


 そう言われ俺の意識は覚醒する。

 そうか、俺はミコトにマッサージをされてそのまま寝てしまったのか。申し訳ない事をしたな。

 と考えていると、頭の下に柔らかい感触がある。そう言えばミコトの声も真上から聴こえてきたな。


 ゆっくりと目を開けると、ミコトは聖母のような微笑みで真上から俺も見ていた。

 ほぼ間違いなくこれは膝枕って奴だ。

 膝枕とはいいながらも俺の頭はミコトの太ももの上だ。少しはだけた袴から見える真っ白な太ももが理性を掻き乱す。


 俺は理性と本能が闘っている横でミコトの太ももをスリスリ触りながら冷静さを取り戻す。


「ミコト、おはよ。ごめんね、気持ち良くって寝ちゃったみたいだ。ありがとうね。・・・後なんで膝枕?」


「おはようございます。コースケ様寝るの早かったですよ?マッサージし始めたらすぐに寝息が聞こえたのでどうしようかと思ってました。一緒に寝ようかとも思ったのですが、コースケ様の寝顔を見てたら居ても立っても居られなくて気づいたらこの体勢に・・。」


「うん、良くわからないけどありがとう。気持ちよかったのは本当だし、膝枕も初めてで気持ちよかったよ。足は痛くない?」


「・・コースケ様の初めて!頂いてしまいました!この足は一生大切にしますね!」


「膝枕関係なく自分の足だから大切にしてあげてね。さあ、ご飯を食べに行こうか。昨日みたいに遅くなると申し訳ないからね。」


 そう言ってミコトと連れ立って村の広場へ食事をしに行く。




「あれ、コトネいないね。リリと一緒かな?」


「そうですね、コトネはリリと一緒の可能性もありますけど、リリは今日食事のお当番だったと思いますよ?それでコトネと一緒は考えにくいですが・・。」


 そんな話をしていると配膳しているリリを見かける。


「こんばんは、リリちゃん。今日もお当番お疲れ様。コトネは一緒じゃないの?」


「こんばんはコースケ様、ミコト。コトネはそちらと一緒じゃないのですか?昨晩色々あったと噂は聞いてますが、それからコトネは戻っていませんよ?」


 嫌な予感が一瞬頭をよぎる。


「俺が今日の作業を終えて山から戻ってきたらコトネはもういなかった。リリちゃんの家に戻るという事だったみたいだけど。」


「ええ、コースケ様が帰ってくる10分くらい前に家を出てリリの家に戻ると言っていました。だからリリの家にいると思ってました。」


「そうなんですか?さっきも言った通り今日は私の家には来ていないです。昼間作業してる時も見かけなかったからずっとそちらに居るものだと・・。コトネはどこに行ったのでしょうか。」


 コトネはどこに行ったのだろうか。

 村のどこかにいるのであればいいが、いない場合は不味い事になっているのではないか?


「とりあえずみんなで探してみようか。どこにいるかな。」


  俺はミコトと二人で、リリとは別に探しにでる。

 リリは自分の家、コトネの家、その他村の中を探すとの事だったので俺達はまず風呂場を見に行ってみることにした。




 客用の風呂も村人用の風呂もコトネの姿はなかった。 村に戻ってリリと話しをするが、やはりコトネは家にもおらず、トイレなどもリリが見てきてくれたらしいがいなかったそうだ。


「どこかに隠れているのか、いなくなったのか。とりあえず長老様に聞いてみようか。」



 俺はミコトとリリを伴って長老宅へと向かう。


 長老宅ではダノンとユキムラがおり、打合せをしていたようだ。


「打合せ中失礼します、長老殿。」


「おやおや、こんな時間にどうされましたかの。突然の訪問ですから何かしら理由がおありかな。」


「ええ、その通りです。皆さんが居場所をご存じであればいいのですが・・・。」


 俺は掻い摘んでコトネが居なくなった事を伝える。

 もちろん勘違いや思い過ごしである可能性もあるが、現状ミコトの所とリリの所に理由もなく姿を現さないのであれば、やはり何かが起こったと考えるべきであろう 。


 ダノンとユキムラはこの時間から集められる班員全て呼び捜索にあたることを約束してくれた。


 俺たちは心当たりを探す事にするが、そもそも広くない村である。リリがざっとさがしてくれたし、隠れる方が難しい。そうすると村の中にはおらず、どこか村の外という事になる。


「ミコトはどこか心当たりはあるか?」


「村の外での心当たりというと、一箇所あるにはあるのですが、そこに行っている可能性は低いと思います。」


「それでも闇雲に行動するよりいいだろう、そこを見に行こう。」


 そうして俺はミコトとリリと共に村の外を捜索に行く。





「ミコト、心当たりのある場所はどこなんだ?」


「ええとですね、この村のお墓です。」


「墓?」


「ええ、この村に住んでいた人達が亡くなったらそこに埋葬されます。」


「いや、ごめん。墓の事は分かるんだが、なんでそこにコトネがいるかも知れないんだ?」


「お墓には私達両親のお墓もあります。私もそうですが、コトネも困った事があればよくお墓で相談をしていました。何もなくとも両親のお墓の前でぼーっと過ごす事もあります。だからまずはそこを見てみようと思いました。」


「成る程、それはあるかも知れないな。でもコトネが自分の意思で行動出来ていない場合はそこには辿り着けないだろう。とりあえずはお墓に急ごうか。」


 村の墓地は裏山と村の間にあった。温泉へ向かう途中の道を西に逸れていくと辿り着いた。


「ここが村のお墓か。コトネはいるかな・・。」


 街灯もないのでもちろん真っ暗だ。

 星明かりで足元は見えるが遠くまでは見渡せない。これは探すのが大変だと思っていたら、急に空が優しく明るく照らされた。


 ミコトの方を見ると手を組んで祈りを捧げているように見える。


「これはミコトがやったのか?」


「ええ、光の精霊にお願いをして照らして貰いました。流石にこの時間は暗いですから。人を探すには明かりくらい欲しいですからね。」


「そうか、こういう事も出来るんだな。ありがとう。さあコトネを探そうか。」


「コースケ様、ミコトの家のお墓はあちらです。コトネがいる可能性はそちらの方があるでしょう。」


「ああ、ありがとう。案内してくれ。あれ?ミコトどうした?」


「え、いや。あの。なんでもないですが・・。」


「そんな事言ってなんでもない訳ないだろ。何かあったのか?」


「コースケ様、ミコトは放っておいてあげてくださいな。彼女はお化けが怖いんです。」


「ああ、なるほど・・。だって巫女の力で自分の亡くなった両親と話しが出来るんだから怖いものもなさそうだけどな。」


「そ、それとこれとは別ですよ!お父さんもお母さんもそんじょそこらのお化けではないですし・・!」


「あ、でも結局お化けなんだ・・・。」



 そんな話をしながらミコト両親のお墓へ向かう。

 ミコトは俺の手をそっと繋いできたが、今は何も言わないでおこう。



 この村のお墓は、日本の様な立派な墓石ではなく、どっちかと言えば塔婆が刺さっているだけに見える。その塔婆の足元に大き目の石というか岩の様なものがあり、塔婆には物故者の名前が書いてあるようだ。



 ミコト両親のお墓周辺には特に何もなかった。

 もちろんコトネもいない。周りには新しい足跡もないから此処には来ていないだろう。


 俺達は次の心当たりを探そうとするが、ミコトが此処で立ち止まる。


「どうしたんだ?」


「いえ、せっかくだから両親にコトネの行き先を聞いてみようと思いまして。出てきてくれるかは分かりませんが。」


 そうか、ミコトの両親はここにいてもし誰か来ていたら見た可能性はある。直接聞けるなら有力な手掛かりだ。


 ミコトは両親の墓の前に膝を付き、両手を組んで祈りを捧げる。


 ミコトの体全体が薄く輝いていき、祈りの対象のお墓も合わせて輝き始めた。少しずつ輝きが強くなり、遂には直視出来ない程になったかと思うと、輝きは収束し今迄通りの光景が戻ってくる。


 そしてそのお墓の前に二匹のネズミがいた。


「あ、お父さん、お母さん!来てくれたのね!」


「ああ、ミコトの強い感情の揺れを感じたからね。何かあったんだろうと思って急いで来たよ。」


「そうよ、ミコトはおっちょこちょいだからすぐ慌てるけど今日は少しいつもと違ったわ。どうしたのかしら。」


「うん、ええとね、コトネが居なくなったの。リリの家に帰るって出たんだけど、リリの家にもいないしうちにも戻らないの。だから、もしかしたらここにいるかもって思って来たんだけど、お父さんお母さんはコトネの事見てない?」


「なんだって!それはいつの事だ!コトネは此処には来ていないが、どこに行ったんだ!」


「あなた、落ち着いて。慌てても仕方ないわ。それにコトネは強い力を持っているわ。すぐにどうこうはないから大丈夫よ。だから落ち着いて。」



 話が勝手に進んで行くが、俺は残念ながらついて行けてない。隣を見るとリリもポカーンとしている。

 うん、良かった。ミコトが巫女の力で両親と会話出来るとは聞いていたが、まさかこの様な形だとは・・・。

 というか両親ってネズミなの?生前はもっと大きなネズミだったとか、長く生きて特別な存在になったネズミだったとか・・。


 そんな俺達の存在に気付いたのはミコトの両親達だった。


「時にミコト、そちらにいらっしゃるのはどなたかな?ミコトのボーイフレンドかな?それともコトネのボーイフレンドかな?どちらにしてもそれは僕達にとっては敵かも知れないねぇ・・っ!」


 お父さん怖いです。そんな姿でもシャレにならない圧力を感じます。


「ち、違うわよお父さんってば!この人は村の言い伝えにあった伝説の方よ!お名前はコースケ様と言うの。巫女として私が側仕えを命じられたわ。今は一緒にコトネを探してくれているわ。」


「そうかそうか、それは失礼。コースケ様、突然のご挨拶失礼致します。私は既に肉体は天に召されておりますが、ミコトとコトネの父であります、ヤマトと申します。」


「コースケ様、お初にお目にかかります。主人のヤマトと同じくミコト、コトネの母でありますマツリと申します。以後お見知り置きをお願い致しますわ。」


「あ、ご丁寧にすみません。私は先日この村を訪れましたコースケと申します。縁あってミコトさんに身の回りの事をお願いする事になりました。伝説とかは私には正直分からない事が多いですが、村の為に出来る事は精一杯頑張ります。こちらこそ宜しくお願い致します。」


  意外な場所での初顔合わせを行なってしまった。ご両親はどちらも丁寧な方で良かった・・。


 でも実は俺の疑問は解決していない。


「それでミコト、あの、ご両親はその、ネズミに見えるんだが・・・。」


「え?ああそうですね、ネズミですよ!」


 な、なんだってー!衝撃の事実だ。

 ミコトとコトネのご両親はネズミだった・・。

 ミコトもコトネもいつかはネズミになってしまうんだろうか・・・。


「コースケ様、違いますわよ。ミコトのご両親の生前を知っていますが普通の人間でしたわ。コースケ様が考えている事は多分間違ってますよ。」


「え?そうなの?リリの言う通りだといいんだけど・・。じゃあ、ミコト。何故ご両親はネズミの姿をしているんだ?」


「あ!ああ、そう言う事ですね。ええと私達の持っている力でうちの両親の魂を呼んだんですけど、現世に顕現させる為に媒体が必要で、今回はたまたま近くにいたネズミさんが媒体になっただけですよ。タイミング次第で他の動物だったり、最悪虫だったりする事も・・。」


「そ、そういう事か・・。虫じゃなくて良かったよ・・・。何はともあれここにコトネは来なかった。現状ではどこにいるかも分からないという事だけど、これからどうする?」


「コースケ様、先程も申しましたが、娘のコトネはとても強い力を持っております。それは本人の力もそうですが、コトネに憑いている精霊が特に力を持っております。彼らは契約者に害がなされると感じた時には迷わず契約者を護ります。ですのでコトネの身にそうそう何か起きる事はないと考えています。ただ、今もまだ戻らないと言う事は危害は加えられていないにしても体の自由は奪われている可能性が高いと思います。私達には何も出来ませんが、どうか娘を、コトネを助けて頂けないでしょうか。」


「元よりそのつもりですよ。付き合いは短いですがコトネの事は理解したつもりです。あの子が傷付けられるような事があったら黙ってるつもりはありません。全力で探して守りますよ!」


「ありがとうございます。何も出来ませんが、ここから娘と皆さんの安全を祈っております。どうか宜しくお願い致します。」


「はい、勿論です!じゃあミコト、リリちゃん、行こう!」


 俺達は引き続きコトネを探しに墓地を出る。

おはようございます。


今日も暑くなるので、体調管理しっかりして、熱中症など気をつけて下さいね。

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