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第1話 プロローグ〜神との邂逅〜

 激しい爆発音と衝撃、そして身を灼かれる熱さに俺の意識は遠くなる。


 なんだこれ、何が起こったんだ……


 俺は今日は歌舞伎町でお客さんを接待していたはずだ。


 初めて接待するお客さんだからって気合いを入れた高い店でご飯を食べて、みんな上機嫌になったからってそのまま2軒目に行ったんだよな。


 その2軒目がぼったくりバーで俺達は金を毟られたんだ。

 お客さんに払わせる訳にはいかないからって、俺一人でうん十万も払ったんだ。


 それでムシャクシャしてパチンコに行ってさらに負けて、店の外に出たら裏カジノがあるってキャッチに声掛けられて……


 その裏カジノでスロットを打った。

 確かミリオンゴッズって言う台を打って、いつまで経っても当たらないから


「当たれ当たれ、火を吹け、爆発しろ!」


 なんて言いながら打っていた。




 だからって本当に爆発しなくたっていいじゃんか……

 俺の記憶が確かなら、気が遠くなる前に打っていたそのスロット台が突然爆発したのだ。


 その衝撃で俺は吹き飛ばされ、左手は千切れ、吹き荒れた火によってウェルダンに焼かれていた。


 そこまでは覚えている。


 えっ! なんだコレ! 台が爆発したんだけど。

 爆発の意味が違うだろ!

 火も噴いたけど、そうじゃないだろ……


 いや、慌てるな、落ち着け。まだそんな時間じゃない。



 ……いや、そんな事ないな。十分慌てる時間だな。


 体を動かそうにも全身で衝撃を受けていて思うように力が入らない。

 声を出そうにも衝撃で声帯をやられたのか、声にならない声で俺は呻き声をあげていた。


 こんな事ならもっと遊んでおけば良かった。会社に入ってから働きアリの様に働き続け、ネットで社畜とバカにされる程頑張ってきたのに、この仕打ちはあんまりだ……。


 しばらくもぞもぞと芋虫のように(うごめ)きながら今度こそ俺の意識は遠のいていった。




 ◆◆◆◆◆◆◆◆




 濁った意識が、目覚めを迎えるようにゆっくりと覚醒していく。


 眠りから覚めるようにぼんやりと景色が頭に染み込んでくると、俺は真っ白な部屋にいた。


 なんだここは……?


 さっきまで歌舞伎町の裏カジノでスロットを打っていたはずだ。

 それなのに突然こんな場所に現れた。


 さっきまでの歌舞伎町の出来事が、現実か嘘かも分からなくなってくる。

 ただ、今は見渡す限り真っ白な部屋にいて、他には何もなかった。


 暫く呆然としていたが、突然目の前の空間が光り怪しい老人が出て来た。


「よう、おぬしよ。儂はゼウス。全知全能の神じゃ!」


 はは、まさか。何言ってんだこのオッサン。


 ゼウスと名乗る老人は、俺を神の子だと言った。

 正確には神の血を少しだけ宿している者だそうだ。


 そんな神の子の俺は世界を良い方向に導くんだと。


「おぬしが元いた世界は遠からず滅びるのじゃ。だからおぬしにはその世界が滅びない様に導いて貰おうと思ってな!」


 俺がいた世界は、某米の国と某4000年の歴史を持つ国との争いが全世界に波及し、世界大戦となり遂には人類滅亡の歴史を辿るそうだ。


 その時に、神の子の俺が世界を破滅から救うという。俺普通のサラリーマンだけど……



「おぬしは儂ら神の血を引き継いでおる。とても薄くではあるが、その血はおぬしに特別な力を授けるものじゃ」


 血の絆と呼ばれる、神の血のおかげでスキルと呼ばれる特殊な力を発揮してこの世界を導いていく。

 歴史の中でナポレオンやチンギスハンなど、偉人と呼ばれる人達はその血の絆で偉業を成し遂げ名を残したそうだ。


 余談だったが、偉業を成し遂げていないけど、神の血を宿している者もいるらしい。その人達に与えられた加護。それは……


 健康な身体と禿げない頭らしい。


 俺はどちらかと言えば後者じゃないかな。会社を欠勤した事ないし。頭フサフサだし。


「この世界以外にも並列世界が無数にあり、そのどの世界でもおぬしは指導者として世界を導いておった。スキルと言われる力を最低2つ、最大で10個程度使用して世界を救っておった」



 そんなまさかな。俺は剣道一級とか英検三級くらいしか持ってないぜ? それで世界を救えるのか?


 ただゼウスは至って真面目だった。

 どの並列世界でも、大国同士の争いは避けられないものらしい。

 それでも、事が起きた時には俺が持てる力を以ってその(いさか)いを収め世界の均衡を保って来たそうだ。



「だがな、今のおぬしは何も力を持っておらん。本来なら生まれつきスキルを持っている筈なのに、何もないのじゃ」



 だからゼウスと名乗る怪しいオッサンは直接俺と接触する事に決めたそうだ。そして俺に力を授けるつもりらしい。


 力を授ける方法なのかなんなのか、俺にペタペタ触ってこようとするから拒否したら泣いてた。

 いいオッサンがメソメソすんなよ。



 最終的にはこの真っ白な世界から出る時に力が授かるみたいなので、とりあえず俺は受け入れる事にした。

 受け入れるも何も一方的に与えられるのでどうやら拒否権はなさそうだけどな。



「これから手に入れるだろう力をどう使うかはおぬしの自由じゃ。直接的に世界を救えとは言わぬ。ただ、世界が進む方向を少しでも良い方向に持って行って欲しいというのは儂の本音からの願いじゃ」



 はあ、やだなぁ。変な事に巻き込まれたなぁ。


 ぼったくりバーもそうだし、裏カジノもそうだ。極め付けに世界を救う救世主だって。

 そんなのどっかの世紀末覇者に任せとけよ。



 俺は社畜と呼ばれようがなんだろうが、仕事をしていた方が落ち着く。サビ残休出喜んでだ。

 俺には救世主なんて出来そうにない。

 ヤル気もなければ実力もない。そんなの自分が一番良く分かってる。せいぜい出来るのは社畜以上のサラリーマンだ。


 とりあえず自称神様の怪しいオッサンに話を合わせて、早いところ家に返して貰おう。


「そうそう、最後にこれだけは伝えておく。おぬしがこれから世界に戻って、どうしても儂と連絡を取りたくなったら頭で儂を念じるんじゃ。儂はここからおぬしを見ておる。念じれば通じるはずじゃ」


 それともう1つ、帰る場所と時間を調整出来るそうだ。これは助かる。

 出来るなら、場所は俺が住んでいる入谷へ、時間はぼったくりバーに引っかかる前に戻して欲しい!


 入谷なんて言って分かるのかなって思ってたら、このオッサンは入谷近くの鶯谷の韓国エステに良く行ってたそうだ。だから知ってるらしい。

 この色欲大魔神め。



 とにかく、帰る手段は手に入れた。

 力とかスキルとかは、そんなの良く分からない。そのうち必要な時に発揮出来ればいいなぐらいで考えておこう。

 今はぼったくりバーや裏カジノに行ったあの時間がなくなるだけで満足だ。ぼったくられたお金も、失った信用も無かった事になる。もう一度やり直せる。



 怪しいオッサンは俺の頭を掴むように触り力を込めた。



 意識は段々と薄らいでいき、眠るように俺は気を失っていった。

この小説を読んで頂きありがとうございます。


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今後長く続けて行く為、気に入って頂けたら評価・ブックマーク・コメント等何でも結構ですので足跡残していただけると嬉しいです。


宜しくお願い致します。

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