日常の終わり
僕の名前は王鷲 鷲一。特徴的なことはこれといって、何もない普通の男子高校生だ。
‥‥いや、一つだけあった。自分は今、いじめられている。いじめられ始めたのは先月くらいから。
いじめられている理由は恐らくいじめられていた奴を助けたからだろう。
いじめていたやつらは新しいおもちゃを買ってもらった子どものように、前のやつには目もくれず、僕に対して殴る蹴るの暴行を加えたりをしてくる。
僕が助けた奴も友達も自分とは一切関わらなくなった。まだいじめられて最初の方は普通に話したり一緒に下校したりしてたんだけどな‥‥
はぁ、あんなことををしなければ‥‥
重い足取りで僕は今日も学校へと足を運んだ。
ガラガラ――
僕は教室のドアを開け、教室に入った。
その時、背後から突然誰かに押され、倒れてしまった。
「痛っ!」
「プッ!ギャハハハハハハハ!相変わらずとろいなー」
今、僕を押した奴は剛力武志という。この学校の中で一番体が大きく、力も強い男だ。
そして、下品な笑いをした奴は原田力也という。
元サッカー部のエースストライカーらしく、キックの威力ががとても強い。蹴られた時は真面目に死ぬかと思うぐらいの激痛が走った。
「おいおい、大丈夫か?ほら、手貸してやるから立てよ」
そう言ったのは薮下大介。よく問題ばかり起こしているらしく、何度か停学になっている。
嫌な予感がしたがいじめているやつに刃向えるはずもなく仕方なく手を借り、立ち上がろうとすると腹を蹴られた。
「ガハッ‥‥」
「おいおい、せっかく手を貸してやったのによー。そんなに床が好きなら床と結婚したらどうだ? 」
「ギャハハハハハ、それいい案だな。誓いのキスの手伝いしてやるよ」
武志はそういうと僕の頭を掴み床に押し付けた。
「ハハハハハ!武志ナイスー」
武志達がこんなことをしているのにクラスメイトは見て見ぬ振りだ。当然だろう、僕を助けたところで、何の得もないし、いじめの標的になるのがオチだ。それなら、関わらない方が良いに決まってる。
「おっとそろそろ先公が来るな。おい、立て。」
素直に武志の言葉に従う。そもそも、先生にバレたところでこいつらは一切反省はしないし、逆らったらいじめがエスカレートするだけだから、選択肢は従う他ない。
「お前ら座れー」
今日も、地獄のような一日が始まった‥‥
◇
キーンコーンカーンコーン
昼休みになり、いつも通り、武志達に屋上に連れていかれた。
「おい鷲一、ついて来い」
「オラっ!」
屋上に着くと同時に武志に腹を殴られる。
「ガッ‥‥」
「お前さーちょっとは反抗して来いよ。つまんねーだろうが。‥‥まぁ、いいや。力也、大介、ちょっとこいつの体押さえとけ」
「オッケー」
「あとで俺らにもやらせてくれよ?」
力也と大介に片腕ずつ持たれる。これで、逃げるという選択肢は塞がれた。まぁ、逃げれば後からボコボコにされるので、逃げる気はさらさらないが。
「わーってるよ」
それから僕は気絶するまでずっと殴る蹴るの暴行を加えられた。
「とりあえずこんぐらいでいいか。さて、教室戻るか‥‥ってあれ?」
武志が屋上の扉を開けようとするも、扉は開く様子がない。
「どうした武志」
「いや、開かねーんだよ」
「んな訳ねーだろ。ちょっと貸してみろ。‥‥開かねーな。こうなったら力づくで‥‥オラっ!」
力也はドアを思いっきり蹴った。だが、ドアはビクともしなかった。
「くっどうなってやがんだ!」
「おい、武志、力也これ…なんだ?」
「あ?何が‥‥なっ!なんだこれ」
武志達の足元にはゲームでよくあるような魔法陣が刻まれていた。しかも、その魔法陣からは光が溢れ出している。
「おい、やべーんじゃねーか?さ、さっさと逃げよーぜ!」
慌てた様子で大介はいうが、少しキレ気味で武志は言葉を返す。
「だから、ドアが開かねーんだよ」
「じゃ、じゃあ飛び降りれば‥‥」
「アホか。ここ屋上だぞ。死ぬ気かよ」
「じゃ、じゃあどうすりゃいいんだよ!」
そんなことを言っている間に魔法陣の輝きは強くなっている。
「真面目にやべーってこれ。武志、お前力強いだろ。力づくで開けろよ」
「だから、それでも開かねーんだつってんだろ!」
武志がそう叫んだ瞬間、魔法陣は眩い光を発し、武志達を包み込んだ。
そして、光が収まった後の屋上は最初から誰もいなかったような静寂に包まれていた‥‥