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【広瀬煉】平和的ダンジョン生活。  作者: 広瀬煉【N-Star】
三章
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第十六話 報告会が始まる

 ――報告会会場にて


 本日は報告会。ダンジョンマスター達が不在となるため、全てのダンジョンは閉鎖となっているらしい。まあ、ラスボスが居ない以上、それは仕方がないのだろう。

 だ・け・ど!


 何で、報告会の会場がうちのダンジョン(にある宴会場)になるわけ!?


「仕方がないでしょ、聖。君の世界の発展の仕方って、結構特殊なんだもん。僕は実際に見聞きしたから理解できるけど、他の人は無理だよ」


 そう言って、縁は肩を竦めた。た、確かに……。


「だけど、手っ取り早くていいんじゃない? 幸いというか……君は自分の世界の技術を居住区に持ち込みまくっているからね。ダンジョン内のトラップだって、元の世界由来のものがある。ダンジョンマスター達にとっては、良い刺激になるはずだよ。彼らはこういった機会でもない限り、ダンジョンから出ることはないんだし」

「ああ、そっかぁ……だから『自分の世界以外の技術に触れる機会がない』ってこととイコールなんだね」

「うん。あと、他のダンジョンマスター達の居た世界って、魔法があるところばかりなんだ。だから、口で説明しても理解できないかもしれないってのも本当。こればかりは創造主の好みが反映されることだから、どうしようもないんだけど」

「そ、そう……」

「……? どうしたの? 聖」


 微妙に顔を引き攣らせる私に、縁は首を傾げている。対して、私は胸中複雑だ。



 あの、うちの創造主様は拳で説教する武闘派なのですが。

 もしや、それが『魔法を使わず、自分達の手で成し遂げる』という方向になった?



 なお、『努力』という言葉で纏めると大変素晴らしいことのように聞こえるけど、『魔法を使わず、自分達の手で成し遂げる』=『敵は己の拳で仕留めろ!』である。

 成し遂げるためには努力が必要なので、努力家なのは事実だろう。困難に立ち向かう不屈の精神も素晴らしい。兄貴(私の世界の創造主)はまさに、『努力で結果を出す神』なのだ……!


 そんな『努力で結果を出す神』がやらかしたのは、『クソ女神顔面殴打の刑』(意訳)。


 アスト達だって、目が点になっただろうな。まさか、神が己の拳(と足)で聖女と女神を沈めるとは思うまい。

 もうちょっと尊いバトルを期待してましたよ、創造主様……!


「ところで、その……凪はどうだった?」


 やや気まずげに聞いてくる縁に、ちょっと笑う。やっぱり、この子も凪のトラウマを心配していたらしい。


「大丈夫! 必要なことだって判ってるから、快く了承してくれたよ!」

「本当?」


 ひらひらと手を振りながら答えるも、縁はまだ不安そうだ。……ああ、この子は本当に優しい。だからこそ、心配になる。アストに語った危惧は決して、ありえないことではない。


「本人も『過去のこととして、区切りをつけなきゃならない』って言ってた。辛いことを思い出さないってわけじゃないけど、凪の中ではある程度、消化されたんじゃないかな」


 これは私だけの見解じゃない。皆……特に凪と仲がいいエリクやルイも『凪は最近、穏やかな表情になった』と言っていたもの。

 ダンジョンの子になった当初は憂い顔というか、思いつめたような表情が多く、私達も下手なことを言えなかったんだよねぇ……慰めの言葉さえ、『辛い過去』を思い出させてしまうから。


 私達は凪の過去を殆ど知らないし、無理に聞き出すつもりもない。

 だからこそ、迂闊に慰めてしまえば……凪自身がその表情の理由を語ることになってしまう。


 一度だけそんな表情の理由を聞いた時、凪は『罪悪感が原因』と言っていた。

 今が幸せだからこそ、自分にとってどうしようもないことであっても、人生を狂わせてしまった者達への罪悪感が募るのだと。

 こう言われてしまうと、『今が幸せなら、素直にそれを甘受しろ』なんて言えない。私達が凪に掛ける慰めの言葉さえも、彼を苦しめることになってしまうから。

 ――そんな時に場を和ますのは、『空気の読めないアホの子』ことサモエド。

 未だ、どう見ても大型犬――私が居た世界の大型犬・サモエドにそっくりだ――なのに、フェンリルの幼体のせいか、サモエドはシリアスな空気を全く読まずに凪へと突撃する。

 それはもう、『キュウ!』という嬉しそうな鳴き声と共に、白い毛玉が凪に勢いよく飛び掛かる。

 あまりのことに、突撃された凪だけではなく周囲の皆も呆気に取られる事態となり、強制的にシリアスモードは終了だ。

 そういったこともあり、サモエドはダンジョンの皆から『愛すべきアホの子』として受け入れられているのであ~る!

 ……。


 多分、フェンリル扱いすることに抵抗もあるんだろうな。威厳の欠片もないもの、サモちゃん。


 そんなことを交えながら楽しく語ったら、縁も漸く、安心したようで笑みを浮かべた。


「そっか、それなら良かった。君達に興味津々なダンジョンマスターもいるから、ちょっと心配してたんだ。だけど、大丈夫そうだね」

「あ~……結構、エグい質問とか来そうな感じ?」


 嫌な予感を感じて尋ねると、縁は当然とばかりに肩を竦めた。


「うん。この世界にとっても、他の創造主の降臨なんて初だったしね。それもあって、どうしても聖達は注目されちゃったんだ」

「まあ、それは仕方がないでしょ。こっちも隠す余裕なんてなかったし」


 それどころか、あの聖女が他のダンジョンを潰して回る可能性だってあったと思う。

 凪が女神よりも私を選んだ時の様子を思い出す限り、ダンジョンを『女神様に盾突く者達の巣窟』とでも認定して、排除しかねなかったからね。

 それほどに、聖女の女神への傾倒っぷりは凄まじかった。本来、聖女が居るべき世界の人達からすれば、彼女はまさに『聖女』と呼ばれる存在に相応しかったんじゃないかな?

 そんなことを考えていると、アストが凪を伴ってこちらにやって来た。


「創造主様、聖、そろそろ皆様がいらっしゃる頃合いですよ」

「もてなしの準備はすでにできている。問題があるとすれば……」


 そこで言葉を切り、凪は少しの不安が混じった視線を私へと向けてきた。ああ、うん、その気持ちも判る。私だって、ちょっと不安だもの。


「一番の問題は、『私の世界の酒や料理が受け入れられるか』ってことだよねぇ……」


 これなのよね、今の私達が抱える不安要素って。


「ルイやソアラとも相談して、酒好きの人達からも話を聞いて。『この世界の基準で【美味い】と思われるもの』は用意したから、多分、大丈夫のはず」

「私もできるだけのことはしたと思います。と言いますか……聖、貴女が『美味い酒と料理で場を乗り切ろう!』と言い出したからなのですが」


 姑息なことを思い付きますね、とアストは呆れた眼差しを向けてきた。い……いいじゃん! 少しでも難しいお話と例の一件への追及から逃れたいんだもの!

 だが、凪はアストとは違った反応を見せている。何だか、物凄く申し訳なさそうな表情だ。


「聖、俺のことなら気にしなくていいんだぞ? どうせ、避けては通れない道だ。俺とて、いつまでも終わったことに囚われているつもりはないのだから」

「でも、私達は凪の古傷を突こうとは思わないし、突かせることもしたくないよ。っていうかね、詳しい事情を聞きたいなら、うちの創造主様に話を聞いた方がいいと思うんだ。そんなわけで、創造主様にメールしちゃった♪」


 ほらほらー! と、傍のテーブルに置いておいた紙を見せる。言うまでもなく、兄貴(私の創造主)からのメールをプリントしたものだ。


「は?」


 思わずといった感じに、呆けた表情で声を上げるアスト。


「え? ええぇぇぇ!? 嘘でしょ、聖! 僕、何も聞いてないよ!?」

「あ、大丈夫! さすがに来れないけど、メールで事情説明してくれただけ。勿論、暈さなきゃいけないところは暈しているけど、神という立場・第三者視点って感じだから、凄く判りやすいよ」


 盛大に驚き、予想外の事態にビビる縁。そんな縁を、私は背中を撫でながら落ち着かせて事情説明。大丈夫、大丈夫、相手は君の先輩創造主だから、おかしな真似はしないって!


「あの方、本当に面倒見が良いんだな。何度も助けて貰って、何だか申し訳ないよ」


『申し訳ない』と言いながらも、少し嬉しそうな凪。

 神と神に連なる者達を憎んでいた凪にとって、今ある幸せを叶えてくれた縁と兄貴は『心から尊敬できる神』。元は神官だったこともあり、彼らへの敬愛は確実に根付いているのだろう。

 勿論、あの一件で助けてくれた創造主様達全てに感謝はしている。だけど、割と身近な縁と、私達と会話までした兄貴はやっぱり別格なのだ。勿論、私にとってもね!


「聖……貴女、また勝手な真似を……!」

「ちょ、痛いって! 肩を掴むのはいいけど、あんまり力を込めないでってば!」

「お黙りなさい!」


 きゃんきゃんと喚き合う私達。縁は何故か、疲れたような顔で、私達を眺めていた。


「聖の世界の創造主って……聖の性格にも影響を与えてない?」

「そういえば、どことなく似ているな」


 そこの二人、それはどういう意味で言っているのかな?

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