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【広瀬煉】平和的ダンジョン生活。  作者: 広瀬煉【N-Star】
二章
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第二十五話 『抗う者達 ~徹底抗戦上等!~』

 あれから即座に、今後の話し合いになった。銀髪ショタ(神)の体調不良は一時的なものだったらしく、今は温かいココアを飲んでいる。顔色も良くなってきた。


「さっきは驚かせてごめんね。とりあえず『聖に伝えなきゃ!』って気持ちだけが先走って、体にかかった負担を考えずにこちらに来ちゃったんだ」

「いいって! サモエドも怒ってないし」

「キュウ!」


 一番の被害者であるサモエドも銀髪ショタ(神)が回復したのが嬉しいらしく、尻尾を振っている。……こんな時だが、サモエドの能天気な性格と毛玉な見た目に癒される。


「ありがと。……聖達も何となく察してると思うけど、仕掛けてきたのは凪がいた世界の創造主だよ。多分、凪との繋がりが途絶えたから、気になったんだと思う」

「あれ? サージュおじいちゃんは『完全に繋がりが切れたわけじゃない』的な言い方をしたけど……あちら的には繋がりが切れた感じなんだ?」

「正確にはサージュの言い方が正しいよ? だけど、今の凪には『祝福』の影響が全く出ていないでしょ? 体もこの世界で創造されたもの扱いになって人の枠から外れてるから、これまでと比べて気配が感じ取れないに等しいんじゃないかな」


 成程、いきなり凪の気配が消滅したように感じたってことか。


「ということは……凪は未だ、目を付けられていると認識すべきでしょうか」


 難しい顔をしたアストが嫌な予想を打ち立てると、銀髪ショタ(神)は溜息を吐きながら頷いた。


「お気に入りなのか、苦しませたいのかは判らない。だけど、他の世界に土足で踏み込むような真似をする神ならば、自分から『祝福』を与えた存在が去るのは我慢ならないだろうね」

「うっわ、最悪!」


 思わず、声を上げる。いやいや、何だよ、その神様! 『世界の全ては自分のためにある!』とでも思ってそう。少なくとも、人の迷惑は考えていないだろう。


「すまない……やはり、俺が原因か」


 項垂れる凪。だが、ここには凪を責めるような奴はいないわけで。


「違うよ、凪。君が界渡りをし続けたことも確かに一因だけど、あの女神の『祝福』は色んな世界に迷惑をかけまくっていたんだよ。だから、君だけの問題じゃない。それに……その、ごめんね? 僕は前から君のことを知っていたんだ」

「そう、なのか?」


 銀髪ショタ(神)の言葉が意外だったのか、凪が驚いた顔をしている。……そういや、凪をうちの子にする際、随分と手際が良かったような?

 もしや、いつか凪がこの世界の住人となることを想定していたからなのか。

 その予想を肯定するように、銀髪ショタ(神)はさらに衝撃の事実を口にする。


「うん。聖の世界の神に至っては、とても同情していた。だから、すんなり君の身柄を引き取れたんだ。聖の世界の創造主ってね、かなり面倒見のいい人なんだよ。だけど、自分の世界には魔法がないし、ろくに守ってやれないから……って感じで、僕に託してくれた。凪が人として生きる以上、僕達が干渉できる範囲は限られているからね」


 予想外の事実に、凪は目を見開き……そして、穏やかに笑った。


「そうか……。貴方もそうだが、神とは人間を弄ぶ者ばかりではないんだな」

「君の場合、神に良い思い出はないよね。勿論、世界を乱す者として君を疎んだ神もいるけど、君を案じていた者もいるんだ。それだけは忘れないで」

「ああ。そのお蔭で今がある。人に個性があるように、神も其々、性格が違う。以前は『神』とそれに連なる者達全てを嫌悪していたが、今は違うよ」

「……そう、良かった」


 凪の言葉に、銀髪ショタ(神)も穏やかに微笑んだ。安堵した、とも言えるだろう。

 私達も自然と微笑み合った。凪の中には確かに、私達の努力が実っていると実感できて。

 ……。

 私達は神と神に連なる者全てを憎んでいた頃の凪を知っている。

 あの時は『何故、そこまで』とドン引きしたけど、凪の事情と根深いトラウマを知った今となっては、それも仕方ないと思えてしまう。それほどに酷かった。

 八つ当たりを推奨するわけじゃないけど、『そりゃ、【神】という種族単位で憎むわな』としか思えない状況だったのだ。寧ろ、良くここまで改善したものだと思う今日この頃。


 反応が薄かったけど、皆の誠意は凪にきちんと届いていた模様。良かった、良かった。


「ということは、今回の相手は神とそれに連なる者ということか。……ふふ、腕がなるのぉ」

「へ? サ、サージュおじいちゃん? どしたの!?」


 場違いなほど楽しげな声にそちらを向けば、何~故~か、サージュおじいちゃんが歓喜に身を震わせていた。ええ~!? 割と状況が悪いはずなのに、どうしちゃったのさ!?

 そう思ったのは皆も同じらしく、あまりにも不可解なサージュおじいちゃんの様子に、誰も声をかけられずにいる。

 そして私達がドン引きしている間も、サージュおじいちゃんの嬉々とした呟きは続いていった。


「この世界に来てより、数百年。ついに……ついに、神殺しに挑む時が来おったわ!」

「いや、多分それは無理だから。送り込まれてきた存在の打破なら、可能だと思うよ?」


 正気に返った銀髪ショタ(神)が、思わずといった感じに突っ込む。……が、サージおじいちゃんにとってそれは、特に気にするものではなかったらしい。


「どちらでも良いのです! 神に連なる者……いえ、神の子飼いだろうとも、相手にとって不足はありません! 蓄積された知識を武器に、悪神へと挑みましょうぞ!」

「あ~……おじいちゃんは知識が尊ばれる世界の人だもんね。『神の奇跡に匹敵する知恵と策』って、誰でも一度は思い描く野望とか言ってたし」


 うんうんと頷き、納得の表情のミアちゃん。勿論、サージュおじいちゃんを止めやしない。

 ……拳を振り上げて盛り上がるサージュおじいちゃんと良いコンビだね、君達。皆、呆れてるけど。

 その時、そこに割って入る勇者が現れた。それまで黙っていたルイである。


「あの、先ほどの『アマルティアが干渉の起点となっている』ということなのですが。もしや、アマルティアは凪が元居た世界の人間の血を引いていませんか? 凪も召喚されてましたし、召喚者は『勇者』や『聖女』として扱われることもあったと聞きました。ならば、王家にその血が取り込まれている可能性は高いと……うわ!?」


 カッと目を見開いたサージュおじいちゃんが、ルイの手を握り込む。その勢いと迫力にルイが顔を引き攣らせるも、大興奮のサージュおじいちゃんは止まらない。


「でかしたぞ! おそらくそれが原因じゃ! 過去に召喚された繋がりがあるならば、こちらにも来やすいじゃろう」

「そ、そうですか。お役に立てて何よりです……」


 ドン引きしつつも、きちんと対応するルイの真面目な姿に、皆がそっと目を逸らす。


 ごめん、ルイ。今のサージュおじいちゃんを止めることなんて、絶対に無理!

 だから、縋るような目でこっちを見ないでぇぇぇぇっ! 罪悪感が半端ねぇ!

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