第二十話 『アマルティアの謝罪……? ~やる気がないなら、帰れ!~』
――ダンジョン・居住区広間にて
「あー、テステス。こちら現場の聖です。そして、アシスタント兼メインカメラは第二階層責任者・ライナが務めております。宜しゅう♪」
「ライナでーす! 聖ちゃんのお手伝い、頑張りまーす」
「現在、居住区にアマルティア姫達が現れました。この映像では見えにくいので……ライナ! ズームお願い!」
「はーい」
現在、カメラ担当のライナと共に謝罪の場を伺いつつ、小型マイクでこそこそと実況中。私達の遣り取りは音声のみだが、ライナのカメラはしっかりとアマルティア達を捉えているのだろう。
映像と音声がリアルタイムで休憩所のモニターに流されているので、見ている人はそれなりにいるはず。ゼノさん達のように、自発的に証人となることを願い出てくれた人達もいるので、証人の確保はバッチリです。
なお、カメラはこれ一台だけではない。ゴースト達の機動力や浮遊を活かし、アマルティアや騎士達に気付かれない位置で撮影中なのだ。勿論、音声を拾えるよう、高性能マイク装備です。
実はこれ、新たな試みに予定されているものの一つ。休憩所でダンジョン内――各休憩所がある階層――の映像を流して、自分達以外の挑戦者の勇姿を見てもらおうというものだったりする。
謎解きのヒントや戦闘は参考になるし、休憩中の挑戦者達にとってもいい暇潰しになるからね。
まあ、『謎解きを含む、罠のヒント』的な意味合いが強いので、そこそこ見てもらえると思っていたり。元の世界ほど娯楽がないこともまた、挑戦者達の興味を引く要因となるだろう。
……あ。アマルティア達のほぼ真上に陣取っているカメラもいるみたい。素晴らしいプロ根性です、仕事熱心だね!
今回の大抜擢に、ゴースト達が大興奮しているって聞いていたけれど……確かに、どこにでも行けるゴーストならば、ベストポジションを狙いやすいのだろう。
さて、私もお仕事しましょ。
「解説にはアマルティア姫の被害者という過去を持つ、エリクに来てもらっています。エリク、アマルティア姫はきちんと謝罪できると思う?』
「エリクです。俺は無理だと思いますねー」
「おや、その根拠は? 人間だった頃の経験からそう思うの?」
「いや、さっきから俺達用に設置されているモニターで、各カメラの映像を見てるんですけどね。結構ボロが出ているというか……アマルティア姫が不満そうな顔をしてるんですよ。居住区に入る直前くらいに騎士に促されて、神妙な顔になりました」
「あはは! エリク、暴露し過ぎ!」
設置されている小型モニター各種を眺めながら、ノリノリで解説を続ける私とエリク。ライナはあまり会話に加わることはないけど、カメラを手に楽しそうにしていた。
ライナ的には、悪戯でもしている感覚に近いのかもしれない……子供だしね、この子。
そんなことを考えていると、ライナが小さな声で注意を促した。
「聖ちゃん、話し合いが始まるみたいだよ!」
「アスト様が代表者扱いだけど、向こうの人達は問題ないみたいですね。さて、あの女は少しでも反省できたのかな?」
「まあ、エリクからすれば、信頼できないだろうしねぇ……。それでは皆さん、暫し、映像をご覧ください。場合によっては、私達も参戦しますので!」
ライナがカメラを私達の方へと向けた。私とエリクはあらかじめ用意してあったボード――『いきなり謝罪の機会を作れと要請されたけど、本当にアマルティア姫は謝罪できるのか!? 今、貴方は目撃者!』と書かれたもの――を手にし、カメラに向かってノリノリで手を振る。
『王家から強要されました!』という暴露です。誰が大人しくしているものか。
こう言っては何だが、ダンジョン側からすれば、王家の威信が地に落ちようとも全く構わない。
ダンジョンに必要なのは『挑戦者』であって、国ではないからだ。冒険者達がダンジョンに挑んでくれるなら、国から派遣されてくる騎士なんて不要である。
いくら処罰しにくい状況――問題が隠されていたため、民にとってのアマルティアは『愛らしい姫様』なのだ――だろうとも、処罰にもっていく流れにダンジョンを利用するとは何事か。
誰に聞いても、抱く印象は同じだろう……『あいつら、反省してなくね?』と。
私は身内が最優先。そして、次点がダンジョンに挑んでくれる挑戦者。
国や王家に対し、良い感情を抱くはずなかろうが。寝言は寝てから言え。ダンジョンは国の不始末を押し付けられるために存在してるんじゃないんだけどなぁ?
長年、王位継承権を誇示するためにダンジョンマスターの討伐を行なってきたことで、彼らは勘違いしているのだ……『ダンジョンは自分達が利用すべきものである』と!
実際には、ダンジョンはこの世界の住人達のために存在するので、『別に、国として成り立っていなくてもいいよ?』という心境になること請け合い。
あちらを見下すとは言わないが、格下扱いされる謂われはない。私達はダンジョンの魔物達の人権(?)を断固として主張する!
決意も新たに、私はアマルティア達の方へと顔を向けた。遠目には、アマルティアは警戒していると言うか、恥ずかしがって距離を置きたそうにしているように見える。
……んん? アップになったアマルティアの顔、何だか赤くない? と言っても、熱があるわけではなさそうだ。それに加えて、アスト達に見惚れているような……。
……。
おい、その態度は一体、どういうことだ? お前、謝罪に来たんじゃないのかよ!?
見ろ、アスト達の視線の冷たいこと……! どうして、それに気づかない?
「うっわぁ……。騎士達、居た堪れないでしょ」
エリクも気付いたらしく、嫌そうに顔を顰めながらもドン引きだ。
おいおい、お姫様? 貴女はどれだけ顔の良い男が好きなのさ!?
「多分、あの一件以降、アマルティア姫は厳しく監視されてるんだと思います。以前のようにちやほやされないことに加え、自由もないでしょうから、久しぶりに見た極上の獲物に舞い上がってるんじゃないかと」
「エリク、建前、建前! 極上の獲物って、本音が駄々漏れしてる!」
「あ、やべ! でも、事実じゃないですか」
思わず突っ込むと、エリクはばつが悪そうな顔になりはしたものの、訂正はしない。私としても似たようなことを思ったので、視線を泳がせてノーコメント。
そして、私達が見守る中――彼らは『話し合い』を始めたのだった。




