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シャイン樽画・ショートショート集

ショートショート3 『幸運チートのラッキースター』

作者: シャイン樽画

 南米の奥地で、密かに栄えたとされる、古代マナ文明……

 古代マナ族は、幸運の女神を信仰することで、その恩恵を受けていた。


 今はもう滅びた古代マナ文明だが、彼らの残した遺跡にある大洞窟の最深部には、星型の砂が入った砂時計=通称『幸運の星』ラッキースターが安置されており、言い伝えでは、そこには『幸運の女神の力が宿る』と考えられていた。


 考古学者である、俺の叔父さんは、古代マナ遺跡を十数年調査し、ついに洞窟の奥で安置されていた『幸運の星』を見つけ、日本に持ち帰った。


 言い伝えによると、ひとたび『幸運の星』の砂時計を逆さにすれば、砂が落ち切るまでの間に、ありとあらゆる幸運が舞い込んで来るという。


・・・・・・


 そんな話を、考古学者である叔父さんから聞いた俺は、居ても経ってもいられず、三つ指をついて叔父さんにその砂時計を貸してくれるよう頼み込んだ。


 すると、叔父さんは、「うん、いいよ」とまあ、何ともあっけなく承諾してくれたではないか!

 俺はスキップランラン♪とばかりに独り暮らしのアパートに『幸運の星』を持ちかえったのだ。


 いや、今思えばもっとその時に、叔父さんが何故、俺なんかに貸してくれたのか、深く考えるべきだったんだが……



 そして家に着いた俺は、早速、『幸運の砂時計』を逆さにし、その日は夢の中へ……


 その夢は、『砂時計』のお陰で大金持ちになり、大観衆が熱狂的に俺を取り囲み、誰かれ問わず俺を褒めたたえるという、とても幸せなものだった。


 そしてあくる日、


「壊れてるんじゃないよな……?」


 俺は、昨日ひっくり返してから一晩経っているのに、ほとんど砂が落ちてない『幸運の砂時計』を見て、不安に思った。


 だって、このペースで砂が落ちたら、全部落ち切るまでに、かるく一週間くらいはかかりそうだ。そんな砂時計ってあるのか……?

 いや、『砂が落ち切るまで幸運が続く』という言い伝えだから、長いのは願ったりではあるけど……


ピンポーン!


 その時、玄関の方でチャイムが鳴った。


「お届けものでーす!」


 ……と、宅配の兄ちゃんが持って来たのは、でっかい段ボール箱。

 差出人を見ると、なんと、○○テレビ局!

 大手テレビ局がどうして、うちに?


「あ、そうだ! この間、4Kテレビの懸賞やったんだった!」


 じゃあ、このでっかい段ボール箱は4Kテレビか!?

 あの何百万円もするお高いやつ?

 やった! 早速『幸運の砂時計』の効果が出たじゃん!


 俺は喜び勇んで段ボールを受け取ると、速攻で段ボールを開けた!

 しかし……


「な、なんだよ、これ……」


 中から出て来たのは……

 なんと、インスタントラーメンの山……山……山。

 中に同封されていた注意書きによると、『インスタントラーメン3ヶ月分(100食)』とのこと。


「そういや副賞で、そんなのもあったな――」


 どうせなら、インスタント焼きそばの方が良かったのに……


 てか、これが『砂時計』の起こした幸運なんだろうか?

 いや、そんなはずない!

 こんなショボいことが幸運であってたまるか!



 しかし、そんな出来事がそれから続いた。


 宝くじを買えば5等・1000円が当たる。


 部屋を掃除したら、いつかなくしていた500円玉が出て来る。


 会社で、いつもは残業必至な量の仕事が定時までにきっちり終わる。


 同窓会に出れば、名前も忘れてしまった元・同級生から「実はあの頃、あなたのことが好きだったの……」と告白される(注意:その人は既婚者)。


 果ては、近所の野良犬(♀)が、何か俺の足の匂いをやたらに嗅ぎまわったかと思ったら、「く~ん、く~ん」と何故か、なついて来る始末……しかも五匹ほど同時に……


 そんな微妙な……ラッキーと呼んだらいいのかどうか判断に苦しむ出来事が一週間ずっと続いて(ていうか、最後の方なんて、もはや幸運でも何でもないだろ……)、『砂時計』の砂は、最初の予想通り一週間で落ち切った。



「一体、幸運とは、何だったのか――」


 砂が落ち切った日の夜、そんなことを呟きながら俺は眠りに就いた。



 そして、その日、俺は夢の中で、ケバケバしい化粧と金ピカの装飾を身につけた見知らぬ女に会った。


「ホーホホホ、こうやって会うのは初めてじゃな」

「はあ、どちら様で?」


 こんなケバいオバハンに知り合いはいない。

 俺が尋ねると、その女は、「何を言ってるんだ?」とでも言いそうな表情で答えた。


「わらわは『幸運の星』の女神フォーテウンじゃ」


 そして、女神を自称したそいつは、今度はニヤニヤとした表情でこんなことを言ってきた。


「どうじゃ、そなた、この一週間は幸せだったじゃろ?」

「え、あの……」

「あー、言わなくても良い。その顔、その様子、大分満足しているようじゃな!ホホホ」

「いや、その逆なんですが……こんなこと言っちゃ何ですが、あんな、ショボい幸運ばかりでとても満足とは……」


 俺がそこまで言いかけると、女神を名乗るオバハンは、目を吊り上げ、すごい形相で俺を睨みつける。


「何をいうか!? そなたが最初の夢で見た出来事は全て叶えてやったぞよ! 金品を手に入れ、誰からも好かれる、ほれ、この二つじゃったろ、そちの夢は!」


 女神にそんなことを言われ、そういえばそうだったと思い返した。


 夢の中で俺は……確かに大金持ちになり、大観衆が熱狂的に俺を取り囲み、誰かれ問わず俺を褒めたたえるという、とても幸せなもの……


 ってことは、『大金持ち』というのは『インスタントラーメンと1500円』、『誰からも好かれる』というのは『既婚者や犬に懐かれる』、ってことだったのか……?

 そんなことを考えていると、女神が言って来る。


「まあ、最初に見た夢と現実に起こったことに、多少のギャップがあったやもしれん。だが、『天は自らを助けるもの助く』というじゃろ? 逆に言えば、自分で努力をしないものに訪れる『幸運』は、それなりのものにしかならん、ということじゃ」

「そんなぁ……」

「それに、そんなものは幸運の木端のようなもの……そなたの一番の『幸運』は……」

「一番の幸運? それは?」

「美しいわらわに出会えたということじゃ、ホホホ……」

「ええぇ……」


 どうりで叔父さんが簡単に貸してくれるわけだ。


 そして、幸運を呼び込むはずの『幸運の星』ラッキースターを持っていながら、何故、古代マナ文明の人達が滅びることになったのか、何だか想像がつく気がした……

 何年か前に140編以上書いたショートショートの一つ。

 人に見せられそうなものをピックアップして、読みやすく書きなおしました。


 ↓改編前の題名

 SS第十三話: ラッキースター『望まないでやってくる幸福は却って迷惑だったりするものさ』


****************************************************************


 異世界もので連載小説書いてます。

 よければ見てやってください。


『異世界の女子どもが俺のぱんつを狙っている』

http://ncode.syosetu.com/n8581ed/

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