ノストラダムスの狼言綺語 5
鶴舞あずさは俺や奏と同じ学校の生徒だ。
しかし、俺は彼女の事をよく知っているわけではない。
同じ学校であるが友達ではないので喋らない、関心がない。基本的に視野の外の人間という事になる。
身長が高いか低いかといえばやや低め、細身。髪は高い位置で結んだ長いポニーテール。
制服姿で奏と同じくギターケースを背負っている。
「なんで部活こないの?」
鶴舞は俺の背後に居るであろう奏にそう鋭い眼光を飛ばす。
鋭利な刃物で切りつけるというよりは、ボウガンで一突きに貫かれたような眼光だ。
対しての奏はというと、いつもどおりの飄々面で
「どこで部活やろうがオレの勝手だろう?」
と言う。
鶴舞はキッと俺の方を睨むが、俺は関係ないだろう?
「部活がどうのって話じゃない!バンドの話よ!」
「毎度毎度バンドバンドって、お前はバンドじゃなきゃ死んじまうのか?お前を彼女にもつ彼氏は大変だな。」
メンヘラみてぇだな。と煽る。
「お前、バンドやってたのか?」
「さぁ、どうだったかな。」はぐらかされる。
そして、鶴舞あずさの怒りが増す。そのとばっちりが俺を貫く。
「アンタには関係ないでしょ?バンドが何かも知らないくせに!」
そして、そのとばっちりは明確な声として俺に降りかかる。
「バカにするな。結構聴くぞ?ボーカドロイドとか!」
「あれはバンドってのとは違うぞ?」
「マジでか!!」
「ふざけないで!!!」
まるで周りの空気を根こそぎ消し飛ばしたような勢いで怒鳴られた。
遅れてきた爆風のような鶴舞の拳が俺の眼前に迫ってきた。
眼前というよりは頭上という感じだった。
大きく振り上げ叩き付ける様にして鉄槌をお見舞いされた。
「ってぇ!!!」
俺は自転車ごとバランスを崩し頭を庇う事も出来ないまま
硬いコンクリートの地面に倒れこんだ。
そして、そのまま自転車の下敷きになる。
これからは無闇に気が立っている人に対してふざけない様にしようと思った。
「よう。」
「あ、おはよう」
次の日、俺は図書館に来た。
俺の思惑通りやはり美子は今日も図書館で宿題。というか勉強をしていた。
「思惑って言い方がなんか物騒だね。まぁいいけどさ。怪我はもういいの?」
「怪我って程じゃないし大丈夫。ちょっとまだ痛むけどな」
あの後、俺達は忘れ物を届けに駆けつけた美子に助けられ、家に帰るとすぐ病院に連れて行かれた。
美子がきてくれなかったら、あの喧嘩は多分もっと大事になっていたんじゃないかと思った。
いや、大事なら既に起きていたのだろう。
俺が鶴舞に殴り飛ばされた後に控えていたのは奏が鶴舞を殴り飛ばすというものだった。
派手に、盛大に、殴り飛ばした。
もしも美子があの場を止めてくれなかったら、そのまま奏と鶴舞のガチンコバトルなんて事にもなっていたのでは?とも思う。
しかし、奏の最初の一発で既に気を失いかけていたので(どんな女子中学生だ)
美子が呼んだカラシちゃんが鶴舞を車に乗せて病院へ連れて行くという事態になった。
「今日は奏は・・・」
奏は俺とは違い転んだわけでも、殴られたわけでもないので無事なはずだ。
奏自身の身体はという意味で。
だから、ひょっとしたら来ているのではと期待した。
「奏は・・・」
奏はしばらく自宅謹慎となった。




