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ノストラダムスの狼言綺語 4




「だから、ここの問題は・・・」

美子は俺のノートにペンを走らせながら数字の羅列を刻んでいく。

最近の数学は色んな公式や記号が増えて、もはやこれは数学ではなく英語なんじゃないかと思う。

目の前の委員長が書き足していく数式達は細かすぎて俺にしてみれば何を書いているのかわからないほどだ。

というか、こんなの授業でやってたっけ?と思うようなものまで刻まれている。

「あぁ、私高校生の勉強もやってるから、ごめんわかんなかったよね?」

成績はトップであるものの、人に教えるという事に関しては不向きなようだ。

「なんだ、ただの美子のうっかりか。オレはてっきり嫌味なのかと思ってたぜ。」と俺の隣で眼帯の女は

言う。

なんだよ嫌味って。というか気付いてたなら教えろよ。

と思ったが、こいつがそんな事を教えてくれるはずないんだけど。


俺達は夏休み宿題をするべく3人揃って、学校の近くにある図書館に来ていた。

何とも真面目な中学生だ。

美子が「宿題終わったから明日、二人の宿題手伝うよ。」と申し出てくれたのが始まりである。

まだ夏休みに入ったばかりで、その段階で宿題片付いたというのだからアンタずるい女ね。

そんなに早く宿題終わったのなら、俺なら友達の宿題手伝うんじゃなくてひたすら休みを満喫するだろう。

毎日、漫画を読んだりテレビ見たりゲームしたりして休日を満喫するのだ。

「お前、それじゃ普段と変わらないんじゃないか?」

「奏だってゲームしたりしてるだろ。」

「まぁな。毎日真っ暗な部屋の中でゲームしたり漫画読んだりしている。」深海魚になったみたいな気分になると奏は笑う。

「え、夏休みって遊園地に行ったり家族で旅行とかしたりするもんじゃないの?」

成績どころか休日の過ごし方でさえも差をつけられた。


「海人にも趣味のひとつやふたつあれば、休日も充実するんじゃない?」奏みたいにさ。と美子は続けた。

「趣味なぁ・・・」

図書館からの帰り道、自転車をひきながら美子はこれぞ名案とそう言った。

同じように俺も自転車をひきながらその名案を聞いた。

もう夕方とはいえ自転車のサドルもハンドルも夏の熱に晒されてすっかり熱くなっている。

俺の隣では大きなギターケースを背負いながら奏が歩いていた。

何故宿題するためだけなのにギターまで持ってきているのだと不思議に思った。

もちろん、図書館でギターなんて弾いたりしたら追い出されるだろうから触ったりしていない。

「そういえば、俺奏が唄ってるところ見たことないな」

「ん?そうだっけか?」以外にも驚いたような顔を浮べる。こっちもこっちで珍しい。

ギターを弾きながら鼻歌を唄っているところならあるものの、本気で声に出して唄っているところはまだ見た事がない。

それどころか本気の演奏を見たことがない。

部室ではゆるくかき鳴らしているところしか知らない。

「まぁ、海人が聴いたことがないってんならそうなのかもな。」

聴いた事はあるものの忘れてるだけなのかも知れないけどな。っと思った。

「まぁ、じゃぁそのうち機会があったら聴かせてくれよ。」

「そしたら、奏のワンマンライブになるね。」

「いいよ。オレにゲームで勝ったらやってやるよ」

っと奏は不適に笑った。

ずいぶんと高いライブチケットになりそうだ。


「じゃぁ、私こっちだから。二人ともちゃんと宿題やってね?」

自転車のサドルの熱がすっかり冷えたであろう頃合になると、美子は俺達に釘を刺すようにしてから

自転車にまたがった。

どちらかといえば殆ど俺に向けて言っていただろう。

今までだって糠に釘と言えるほどにサボリ癖が板についてしまったので当然といえば当然だろう。

「はいはい、わかってるわかってる」

殆ど生返事でそう返す俺を美子は呆れたように睨み付けて、さっさと自転車をこいで自分の家がある方角へ行ってしまった。

「そういえば、奏ってこっから家近いのか?自転車じゃないし」

背中にギターを背負う彼女を見て、単純に重そうだなと思ってそう聞いてみた。

「いや、近くはないな。なんだ?ラブコメみたく後ろにでも乗せてくれるのか?照れるな」

そういう風に言うならせめて照れたような表情をしてくれよ。と思う。

たまには女の子らしい裏の顔も見てみたいじゃないか。

「いや、なんというか重そうだなって思ってさ。」

「・・・お前、女の子に対してそれは流石に失礼だろう?いくらなんでも傷つくぞ?」

照れてる表情ではなく、ちょっともの悲しい表情を浮べる。まるで年相応の女子中学生のような。

「お前の体重の話はしていない。楽器の話だ」

「もちろんわざとだけどな。」

わかってたんだ・・・。

「まぁ、お前の思うほど重くないさ。かと言って軽いわけでもないんだがな。色々と。」

「そうなんだ。いやだからもし遠いんだったら、お前の言うとおり後ろに乗せてやろうかなって思ってさ」

自転車のルール違反ではあるし、美子あたりには怒られちゃうとこなんだけど

まぁ、これはバレなきゃ犯罪じゃないってやつだ。

ん?以前に似たような事を誰かに言った気がするな。

「そっかありがとう。・・・あぁ、いやでも待て」

お言葉に甘えると言ったものの奏は険しい顔をする。

「別にオレが前で、お前が後ろでもいいぞ?」

「なんだよ?仮にも男である俺を信用できないっていうのか?大丈夫だよ。人一人くらい後ろ乗せても大丈夫だよ」

というか提案しておいて女子に運転させて後ろに男子である俺が乗ってたら可笑しいだろ。

二人乗りですでに怒られるのに、その上女子に運転させたとあっては美子からのお説教度合いに拍車が掛かってしまう。

「本当に大丈夫か?二人乗りって後ろから手を脇に通してギュってするんだぞ?男のクセに『はぁぁん』とか変な声出しても、オレ責任取れないぞ?」

「どこに心配な要素置いてるんだよ?それにお前が運転手だと、お前のギターケースが顔に当って危ないじゃん。」

寧ろ俺がお前の腰に手を回すっていう描写を想像するだけ恥ずかしいので避けたい。

そこまでいうくらいなら最初から二人乗りなんてしなければいいのにとも思うけど。

「そか、わかった。じゃぁお前が運転でオレが後ろだ。よろしく頼む。」

よろしくたのまれた。


「・・・奏」

俺が後ろに奏を乗せて自転車を漕ごうとしていたところ、鶴舞あずさは学校の制服姿で現れた。


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