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ノストラダムスの狼言綺語 2



「今日はみぃこは来るのか?」

「さぁな。アイツは生徒会が忙しいから来ないんじゃないか?」

「ふぅん・・・」

奏がかき鳴らすギターが人気のない図書室にこだまする。

ひょっとしてこいつが毎日こうしてギター弾いてるから人が減ったのではないだろうか?

実は俺の知らないところで「図書室には謎のギターオバケが・・・」みたいな噂が流れていたりして

電話を使うメリーさんみたく、ギターを弾くカナデさん的な感じで・・・。

心霊現象も日々進化をしているのだ。

まぁ、今俺の目の前でギターを弾くのは何の変哲も・・・無くはないタダ変な女子中学生だ。


殺風景とは言ったが、寧ろ人が寄り付かなくなりすぎて殆ど個人の私物が置かれていたりする。

例えば楽器用品とかカラシちゃんの持ち込んだお菓子とか色々と・・・。というか図書室ってもともと

飲食禁止なんじゃないだろうか?

「本命の部活はいいのかよ?こんなところで練習するより、音楽室で練習した方が捗るんじゃないか?軽音部なんだしさ・・・」

「いいんだよ別に。オレにとってはどっちでも本命だし、どっちもついでみたいなもんだ。どこで練習しても変わらないしな。遊ぶついでに練習するのも練習するついでに遊ぶのも同じだよ。

ライブだって遊びのようなもんだ。」

本番のように練習し、遊びのように本番を迎えるのさ。そういう風に奏は言いながら

彼女はポケットから取り出したトランプを切り出した。

いや、遊ぶ気まんまんじゃん!

「まぁ、それにオレはソロだからな。楽なもんだぜ。」

「・・・まるで狼だな。」皮肉も交えてな。

「・・・狼か・・・。なるほどな。」いいな。と笑った。多分不適に。

 

「ポーカーでもするか?まだ誰も来てないし、それくらいが妥当だろう?」

「あ、うん。そうだな。じゃぁ、ポーカーでいいよ。」

因みに、これは部活創立者の因幡芥子先生、つまりカラシちゃんの立てたルールで、部活内での賭け事は厳禁だ。

中学生だからそういう事は大人になってから!っというわけではない。これは表向き。

その裏は以前UNOをしたときに、カラシちゃんだけボッコボコのギッタンギッタンという有様になったため、その時賭けていた給食のデザートがご破算になるところだったのだ。

この時のトップは奏だったのだが、まさかの泣き落としと『賭け事禁止』のルール追加で許された。

何をもって許されたのだろうか・・・。

自分の担任の教師のあんまりな有様をこれ以上見るのも忍びないというのが正直なところだ。

因みに、この時はそれでは割りに合わないという事で後日、カラシちゃんが俺達を旅行に連れて行ってくれた。

そこまでしてデザートを護りたかったのだろう。彼女にとっては給食のデザートは国宝級なのだ。

「オレが勝ったら、炭酸一本パシリな。」

「賭け事は禁止だろ?」

「だから『罰ゲーム』だよ。それなら問題ないだろ?」

「同じだろ?」

「ニュアンスの問題だな。それともオレと戦うのが怖いのか?」

そんな挑発に乗ってしまう俺も愚かだし、納得もしていないんだけど

「はいはい。つか、俺はさっき買ってきたばっかりなんだけど・・・まぁ、いっか」

この暑さじゃジュース一本じゃ足りないと思っていたところだ。


ポーカーには様々な種類のルールが存在する。

スタンダードなスタッドポーカーだったり、役の強弱が逆転したロー・ポーカーだったり

しかし今回俺たちが始めたポーカーはディーラーもいないので、交互にカードを引いて5枚ずつにして、一回だけカードをチェンジするという形式をとった。

「・・・・・・・・・・」

・・・ブタかぁ・・・。

俺の手の内にある五枚のカード達はバラバラのブタだった。

まぁ、いきなり美味しい役が揃うとか都合のいい事は考えていなかったけどな。

「どうした?オレはこれでいいぞ?チェンジすんなら早くしろよ。」

「急かすなよ。・・・じゃぁ、まぁ5枚チェンジだ。」

再びひき直して揃ったカード達を見ると一組だけ揃ったワンペアだった。なんとも望み薄だ。

一枚もチェンジしてないところを見ると、少なくともワンペアになってドローって事はまずないだろうな

俺はお世辞にも策士ってわけじゃないから分かんないけど、ワンペアならワンペアで

残りは全部チェンジするもんじゃないか?

俺だったらそうするけどな。おっかないのは相手が奏だっていうところだ。

目の前の彼女を見ると得意な顔をして飄々としている。いつもどおりの表情だから全くわからん。

「いいんだな?」

「い、いいって?何が?」

「もう一回チェンジしてもいいんだぜ?」

「チェンジは一回までだろ!?いいよコレで!」

「ふぅん?」残念そうなのか、挑発してるのか、本当ポーカーフェイスだ。

「じゃぁ、カードオープン!」

「・・・・・」

互いにドンッと音が鳴りそうな具合にカードを開示する。

 

というか・・・。

 

「ブタじゃねぇかぁ!!」

奏が机に並べたカード達は、バラバラのブタ。フラッシュでもストレートでもなく、ワンペアでもツーペアでもなく。

ノーペア。ブタだった。

「お前さっきオレの事、狼って言ったじゃないか?」

そういう意味じゃねぇよ・・・。

「いや、そうじゃなくて、お前さっきノーチェンジだったじゃん!ヘラヘラと挑発してきたあれは何だったんだ!?」

「ポーカーってやつは、そういうゲームだろ?常に相手の裏の裏を読むべし。というか、あんな安い小細工で引っかかるとは流石に思わなかったけどな。」

「・・・・・・・・・・」勝利を収めたのに全然嬉しくない。ゲームでは勝ったけど、ポーカーとしては見事に敗北した。

「なんだよ、狐につままれたような顔して」

どっちかっていうと狼に喰われた感じだ。一杯食わされたという有様だ。

「そんな顔すんなよ。実は一回チェンジしたんだよ。」フルハウスだったと奏。

じゃぁ、やっぱり俺の負けじゃん!!

「なんで、わざわざチェンジしてんだよ。」

「いや、あっさり勝つよりそういう吠え面の方が拝みたくなっただけだ。狼だけにな。」

「狼はお前だ。」うまくないし。

「まぁ、いいじゃないか。基本的には嘘つきなんだよオレは。」ははっ。なんて笑って見せた。嘘つきというか楽観的過ぎるような気もするな。酔狂ってやつだろうか?

「もういいよ俺の負けで。ほら、小銭貸せ買ってきてやるから。」

「いや、いいよ。それくらいの満足感は得られたからな。それに、ジュースなら既に買ってきてあるんだよ。」

「・・・・・・・」なんて食えないやつなんだ・・・。

きっとさっきから俺は奏いわく、ずっと吠え面を見せ付けているんだろう。


「ごめんごめん。仕事してて遅くなっちゃった。」

もうひと勝負しようかというタイミングでカラシちゃんが胸にたくさんお菓子の袋を持って入ってきた。

「・・・あんたも大概の狼娘だな・・・。」

「ほえ?」

一体、学校内のどこにそんなに餌付けしてくれる人がいるのだろう?そして、また多分仕事っていうのは

嘘であって、その仕事はドンドン後倒しになっていくのだ。

何故、この人・・・否、この子に教職なんてもんが勤まるのだろうか。反面教師という意味では勤まっている気がする。

「さっきまで何してたの?」

「ポーカー」

「へぇ」

甚だどうでもよさそうだ・・・。

「ロイヤルストレートフラッシュを出すと死ぬって都市伝説あるよね?」

「あぁ、なんか聞いたことあるな。それって単純に幸運を使い切るとかそういう事なんじゃないか?すごい低い確率だからな。まぁ、あれだ校門前の自販機で当たりが出る確率と同じものと考えてもらって大丈夫だぜ。」

「え!?それってすごい確立じゃない!?」

「嘘をつくな!だいたいあの自販機、あたりとかそういうのついてないだろうが!」

普段使っているくせに簡単に騙されるカラシちゃんもどうかと思うけど・・・。

「カラシちゃんは知らないだろうけど、200年前はついていたんだよ。学校に隕石が降ってきて、その時そこにあった当たりつき自動販売機が身を挺して学校を護ったんだ。あいつが当たりつき自動販売機じゃなかったらこの学校は今頃炭だっただろうな。今ではあの校門の前にある自販機は神様として奉られているというわけさ。まさに、当たりつき自販機だな。当たり神と呼ばれている。」

これまた奏は飄々と、淡々と腕組しながら語る。

「えぇ!?そんな事があったんだ!?覚えてないよそんな昔のこと!・・・そうか、あの自販機は神様のよりしろなんだね」

「なんで、そんな規模のでかい嘘を信じられんだ。200年も前だったらカラシちゃん生まれてないだろ?」

今、何歳なのか知らないけど、きっとサンタクロースだって信じているんじゃないだろうか?

そっか、その胸に抱えるお菓子たちもサンタさんからのお供えものなんだな。

 

「お疲れ~・・・。生徒会ちょっと長引いちゃった。」

そうやいのやいのと騒いでいるところへ、学級委員長であるお利口さんの天野美子が図書室に入ってきた。

「お利口さん」と呼ぶと本人は怒るので、あまり言わない事にしている。

「あ、カラシちゃん、またお菓子持ってきてる!ダメでしょ!?」

「わぁ、見つかった!?ごめん!今日だけ、今日だけ!!」

「もう、今日だけよ?」

お利口なのに妹にはチョコレートのように甘いお姉ちゃんみたいだ。

その騒ぎを見るやいなや、奏はスっと切っていたトランプをポケットに仕舞った。

別にトランプがあればブラックジャックとかいろいろ出来ただろうけど、そこにトランプがあれば

「ちょうどトランプあるし・・・」みたいな展開になるのを避けたかったのだろう。

遊ぶゲームは皆で決める。それが奏の流儀らしい。

ゲームこそ手を抜く彼女だが、ゲームを始める事には手を抜く気はないとかなんとか、そういう事らしい。

よくはわからないけど。


結局、今日はカラシちゃんが持ってきた人生ゲームとお菓子を囲みながらの部活になった。

後半になって金欠になり始め、逆上したカラシちゃんがルーレットを勢いをつけて回した所為で机に置いておいた奏のジュースが倒れ、みんなの人生に大洪水を発生させ

カラシちゃんに罰ゲームを背負い込ませてお開きになった



ノストラダムスの狼言綺語を閲覧いただき、実に、如実にありがとうございます。

リメイクの続き、2話となります。

 

今回、ゲームをするシーンがありましたが、因みにワタシはポーカーの手順は触り程度しか知らなかったりして・・・。

聞いた事あるのは、ポーカーの「ポーカーフェイス」って言うのって、ただ無表情とかじゃなくて

優勢の時は苦虫を噛み潰したような絶望の表情を浮べて、劣勢の時はとても幸福な、お風呂で高級アイスに舌鼓をうっている時のような顔をしているもんなんだそうです。

それって、なんだかマゾっぽいなぁ・・・なんて・・・。

そんな事は決して思ってないんだからね!!

 

投稿主でした。


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