死神の末妹~少年視点
自分が見た彼女の最後
燃え盛る炎の赤。
磔にされた体と白い服
「ごめんね」と
泣きながら無理やり笑い彼女は死んだ
僕のせいで死んでしまった。
「僕は生まれつき体が弱く、長く生きられないと医者に
言われてきた」
親も外へは出してくれず友人もいないまま月日がながれた。
あるひ、
彼女は明るく天真爛漫な性格で僕を部屋の窓から連れ出して
いろんなことをして毎日遊び過ごした。
世界があんなにも美しいのも彼女と出会って初めて知った
さえずる鳥の声も、咲き誇る花も空も違って見えた。
時がたつ頃にはいつしか彼女とは恋人同士になっていた
「僕のせいだ。
彼女は僕の生き甲斐であったのに」
気づけば何時からかシスターが可笑しなことを口走り始めた
彼女が人ならざると僕の命を削っていると言い広めた。
町の人たちも最初は気にもとめていなかったが僕が体調を崩し何日も生死の境彷徨った事を
きっかけに疑いついに強行な手段でいろんな人達を巻き込みあの結末を迎えた。
僕も後を追って死んでしまおうとさえ思ってフラリ彷徨っていると
彼女の死んだ場所に気づいたら立っていた。
燃え尽きた灰の中に赤ん坊が顔以外埋まっていて彼女の忘れ形見だと、
一目でわかり咄嗟に拾いあげ育ててきた。
あの子は彼女に似たのか、とてもお転婆な子で目が離せなくて
毎日慌ただしい日々が続いた
木登りしては落っこちて、風邪をひいては寝込み、川でおぼれかけるわ
服を泥だらけにし困らせてもくれた。
なのに僕が寝込んだりすると死なないでとボロボロと泣きながら僕の世話をしてくれた。
あれから10年の月を重ね。
今日は僕の娘の結婚日。
お転婆でケガばかりして困らせてくれたあの子が嫁に行く。
少しの寂しさと嬉しさが心にしみる。
あの子を拾ってから僕の体の弱さがピタリと収まり無理をしなければ
寝込むこともまったくなくなった。
きっと優しい彼女が僕の体の弱さを持って行ったのだと思う。
「お父さん!みてみて!!」
真っ白な美しいドレスに着替えて走ってきたのかボサボサの長髪で娘が笑う。
今も変わらずお転婆な娘だが旦那様に言わせればそこが可愛いらしい
ボサボサな娘を椅子に座らせ、髪を優しく梳かす
昔からこうやって幼いころから娘の髪を梳かしてきた。
落ち着きがない娘も髪を弄る時は大人しくなるから
様々な髪型をさせれるので密かな楽しみになっていた。
彼女に似た黒く長い髪を綺麗にまとめ編み込み
今日の為に買った銀細工のバレッタでこっそり髪を止める
僕に似てる緑のちょっと垂れ目で笑う。
「お父さん 大好きだよ」
「僕もだよ」
お互いシアワセそうに顔を見合わせ笑った。
緩やかで幸せと幸福に満たされた時間
式の最中ボロボロの布を纏った姿をした人が扉を開けてはいってくる
誰もが首をかしげる中自分も振り向き目をやると全身に鳥肌が立った。
アイツだ・・・・・元シスターのあの少女だ
あの後、神の言葉と偽りと広めた事と神からの罰である病を振りまいた元凶として
シスターは罰という名の拷問を受け死んだとうわさで聞いた。
あんなにもあの子を化け物いった自身が異形の姿へと変わり果てていた。
灰色の肌と所々剥がれ落ちた部分からは中の肉がうっすら見えてる、しかし
肉が見えるほどの傷というのに血が全く流れない。
「ミーツケタ」
元シスターの手によって協会に火が放たれ炎にと煙にまかれる
僕に気が付いたのかニタリと笑った気配がしこちらに寄って来る。
「ここは僕が食い止めるからお前は旦那さんと逃げなさい」
「でも」
「いいから!」
嫌な予感は的中し、他の人には目もくれず少しずつ真っ直ぐに近づいてくる
燃える炎が起こす風に腐ったような嫌な臭いと耳からは濡れぼそり湿った音が届く
歩みを進めるたびにブツブツと何かをつぶやいている。
「アナタが悪いアナタが悪いアナタが悪いアナタが悪いアナタが悪い
アナタが悪いアナタが悪いアナタが悪いアナタが悪いアナタが悪いアナタが悪いアナタが悪い」
「何を・・・・」
僕を暗い眼孔で見つめ狂ったように何度も同じ言葉をだす。
あまりのことに絶句し固まっているとニタリという表現が相応しい顔で笑う。
「アイシテアイシテアイシテアイシテアイシテアイシテアイシテ」
呪文のように同じ言葉を繰り返すのみ己の意思も希薄で壊れた人形
のように二つの言葉を何度もいう。
「愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる]
ぞっとし、恐怖でつい後ずさるが次第に壁際へと追い詰められていった。
「僕は君のことなんて嫌いだ。
愛してなんかいない」
言い放つと耳障りなほど甲高い奇声が聞こえ足がすくんで動けなくなる。
あまりの恐怖に近寄るなと近くにあった椅子で殴りつけてしまった、しまったと
思うのもつかの間
「いやいやいやいやヨイヤヨイヤヨイヤヨイヤアアアアアァアァァァァアァァァ――――」
暴れまわり終いに首をかしげるがその首はほぼ直角に曲がっている。
人間ではありえない異形
「なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで
アイシテアイシテアイシテアイシテアイシテアイシテアイシテ―——— 」
振り払えないほどの力で首を絞められカスム意識の中
そうして燃え盛る炎にまかれ最愛の彼女と同じように僕は死んだ
—————このタマシイは・・・・
薄暗い冥府、輪廻へと至る川瀬。
二つの魂がたどり着いた。
一つは綺麗だが何かにまとわりつかれて弱り
二つ目は黒くヘドロのように溶けていた
醜く黒い魂を手で跳ね除け弱った魂を
五番目の姉は一目で妹が愛した少年だと気が付くと問う。
「少年よ汝は来世に何を望む」
「僕は愛した人を守れる強さがほしい」
ふわり満足そうに笑うとおもむろに心臓付近に腕を突っ込み
妹と同じように少年の額に口づけと。1つ祝福をし輪廻へ流した。
五番目が妹を輪廻へ返す間際、妹に一つささやかなお願いをされた。
「姉さま、まだ彼が私の事愛してくれていたらまた逢いたいな」
「逢えるよ貴女が望むなら」
五番目の姉が施したのは妹に「再会」少年に「妹が彼だけは恋する」祝福を
五番目の姉は流れゆく少年を乗せた籠を見つめ一人呟く。
どうかあの子達が来世は笑っていられますようにと。