1-3.勇者連合(2)
「帰ろう」残心を解いた武良は、宣言する。
あぁ。気分が疲れた。自分の手で戦えないので、フラストレーションが、たまる。
「うーいー」
「おーつかれー」
「そこ、補修しとくわね」
メンバーが、何か見落としが無いかと見渡しながら、武良の周りに集まって来る。
「うーん、油断したは。またタケヨシに御株を奪われちゃった。でも、ありがと」茶髪美少女神官は、照れ笑いしながら武良に礼を言う。
あのねえ!自覚があるなら、気を付けてほしい。
これは注意せねば。
すると、ライガの後ろから、声がかかる。
「ライガ……浄化前に、(にへにへ笑い)してたわよ!ま~た妄想に走ってたでしょ!」
ライガに声をかけたのは、彼女の双子の妹のサイガだ。
同じ顔で同じ神官服装の黒髪灰眼色白美少女が、プンプン怒り顔で寄って来る。
手持ちの錫杖とアクセサリーは、デザインが異なる様だ。
おうおう。いいぞ、サイガ。そうだ。もっと言ってくれ。
「私もライガの、腐女子笑いを認識した。武良と魔族のカラミを妄想したなー、こら」
光子が強化外骨格スーツの、ヘルメットのシールドをオープンにして寄って来る。やや険しい表情だが、和風超美人だ。
で光子は、私の暗殺を要請され、私が召喚された当日、殺しに来た。
「うぅううぅ。結構美男な魔族だったからつい……仕方無いじゃん!」茶髪美少女神官のライガは、半泣きで弁明する。
「全く。BL趣味は手前勝手だが、真剣勝負の途中は勘弁して来れー。タケヨシが居ない作戦だったら、完全に幽体憑依されて居たぞ。一発でライガが、確保対象者だ」
近接火器班の、燃える紅毛碧眼色白長身巨乳美女のキャシーが、突撃銃の銃口を天に向けて歩いて来て、その美貌に苦笑を浮かべてライガにボヤく。
そうそう。キャシーも、私の召喚日に、私を殺しに来た。
「セルガ姉様に、報告するは」
同じ顔の神官美少女サイガは、生真面目な表情で宣言する。
「サイガ! 御願い待って!今後は集中するから~セルガ姉様指導の六根清浄業は、イヤー!!」
ライガはかなり焦った表情で、サイガに縋り付く。
「では、リーダーとして裁定しよう。今後イケメン魔族の場合は、ライガは最後衛だな……セルガ様に報告は、今少し猶予しよう……しかしライガ……再度、やおい(ヤマ無し・オチ無し・意味無し)妄想での油断が見受けられれば、第一守護天使様に相談するしか無い」
武良は、強い視線でライガの瞳奥底まで射抜ぬく。
そして重々しい真剣な声で、ライガに断言する。
「ご、ごめんなさい。肝に命じるは!」
ライガは武良の強い視線に狼狽え、更に真っ青な顔でカクカクカクと激しく頷く。
タイ・クォーン教会の神官長セルガは、ライガとサイガの義姉妹だ。
三姉妹共に教会第一守護天使様の祝福を受け、神官として聖なる力を駆使出来る。
所が武良は、召喚(実際は招待)されたタイ・クォーン教会で、常人には見えない神霊の第一守護天使ワードマンを初見から霊視出来、会話も出来て仕舞った。
詰まり武良の霊格や魔力レベルは、此方に転移して来た時点で、第一守護天使以上だったのだ。
神官姉妹が使える聖なる唱和もワードマンの直接の指導を受けて、出逢った其の日の内に、全て使える様に成って仕舞う。
現在では神殿に居れば、ワードマンとは、気の合う茶飲み友達だ。
神官長セルガは『だろうね♪』と、気にもしていない様子だ。
が、幼い頃から必死で修行を受け、やっとこさ祝福を受けられたライガとサイガ双子は、勇者とは言え武良の自然体なのに、べらぼうに高い霊格と魔力レベルに、微妙に気後れして仕舞う。
つまり、ライガの真剣勝負戦闘中の思わず妄想での集中力不足を、武良が第一守護天使に直接話せば、ライガの『聖なる力の祝福』を取り消されて仕舞うかも知れ無い。
一から修行やり直しを喰らうかもしれない。
「はひ、はひはひはひ」ガクガク、ブルブル。
ライガは、『武良のガチでリアルな最後通牒』を突き付けられたド緊張の痙攣と、滝の様な冷や汗にまみれる。
「さて。引き上げようか」
最後通牒がライガ心身に染みた事を確認した武良は、朗らかな笑顔に戻り、皆を促す。
結界をでまス。マンモス・スーツ起動!!
隼が脳内会話で、報告してくる。
武良は歩きながら、3メートル近い純銀色のバトル・スーツに覆われる。
ズシン ズシン ズシン ズシン
わぅん♪
結界の外を見張っていた、東郷と光子の使い魔狼の風牙が、近寄って来る。
風牙は光子の使い魔で、私が光子を戦闘不能にした後、狼男化して、襲って来たなぁ。
「よしよし♪ 御苦労様」
光子が、イイ笑顔で風牙の背中を空いてやる。
「見慣れたはずだが、デカイねぇ」
横を歩く、強化服のフェイスカバーを上げた東郷が、純銀の巨大な塊を見上げ、感心した様に言う。
東郷も光子と同じ里で、彼も私を、殺しに来た。
『デカイだけだよー。動き辛いし。
でも、この筐体じゃ無いと、私の『無駄に強い魔力』の制御回路の容量が足り無いんだよね。
ありあまる魔力抑制しないと、私が動くだけで、この世の空間を歪めてしまうんだから。
まぁ、もうちょっとで無駄に強い魔力の制御魔法が完成しそうなんだがね。
早く生身で歩き回りたいよ』とボヤく。
そのまま、東郷を伺う。
『で。強化服の調整の具合は、どうだい?』
「イイね♪ 微妙なタイム・ラグが消えたのが助かるよ」
彼の厳つい顔は、にやりと微笑む。
『マイク。魔式スラッグ弾は、どうだい』
さり気無く、皆のしんがりを勤めてくれて居る全身迷彩のマイクに、声を掛ける。
日本人的あざとい気配りな気がするが、『感謝してますよ』は伝えねばね。
「発射振動の少なさに、驚くよ。火薬に、戻れないな♪」低い渋い声で、嬉しそうに答えが帰って来る。
キャシーの兄で、マイクも私を殺しに来た。
ヒューン
『ハリーとラルフも、戻ったか♪』
武良は、無音に近い飛行音の方を見る。
スナイパーとスポッターのペアが、マット・ブラックのバトル・スーツのフライト機能で、飛んで来て、合流する。
二人のバトル・スーツは『侍』が設計図を書き、日本の防衛隊に卸しているモノを流用した。
彼等の勇者の里は「スナイパー」に特化して居て、 マイクとキャシー兄妹の里との合同作戦が多いそうだ。
ので、彼らも私を殺そうと狙撃した。が、私はあっさり彼等の弾をよけた。
「なぁ、タケヨシ。俺たちの出番は、いつだい?」
口は軽いが、凄腕スナイパーのラルフが、開口一番にボヤく。
「そうだなぁ。此の所、『魔式狙撃銃』の最大射程と、往来だけだからなぁ」
凄腕スポッターのハリーも、控えめな表現でボヤく。
『うーん。申し訳ないと思うが……『広角で援護してくれる、狙撃班』のバックアップは大事だからねぇ』
武良は、申し訳なさそうに言う。
「ふ。タケヨシは本気で言ってくれてるから、何も言えなく成るぜ」
スポッターのハリーは、苦笑いする。
「帰ったら、また『ショウガヤキ』を作ってくれよ」
スナイパーのラルフは、気安くおねだりして来る。
『あー。今は向こうに行くのを控えなきゃ成らんから、市場に仕入れに行けないんだよな。でも教会食堂のステラ叔母ちゃんが、こちらの『生姜』を取り寄せてくれる手はずだから、こちらの食材でも再現出来るか、試して見るよ』
「そうかー。大変だなぁ」
ラルフは、柄にも無く同情してくれる。
『ありがとう。まぁ『異世界転移』は、『暴走魔力の制御』が完成する迄、控えているだけだから。そう深刻には受け止めて無いよ』
「イイじゃ無い。こっちに定住すれば。で、私を『現地妻』として受け入れなさい」
燃える紅毛の碧眼色白長身巨乳美女のキャシーが、武良のマンモス・スーツに擦り寄る。
グイグイ来るなぁ。
あぁ、キャシー。
君も、私を殺しに来たよね。
『あー、ありがとう。何度も提案してくれて……ありがたいが、遠慮しよう』慣れた物言いで、バッサリ拒否る。
「もう! ニホンジンは、何でそんなにカタブツなのよ!」
キャシーが腰に両手を当てて憤慨する。
( たゆん♪ )と、迷彩で隠し切れない巨乳が揺れる。
『堅物なんて言葉、よく知ってるな』
「えぇ。タケヨシが自分の世界に帰るなら、『オシカケニョウボウ』してやるは!!」
ふん。と顔を振り上げる。また( たゆん♪ )と、巨乳は揺れる。
『なんでそんなレアな『日本語』を、知ってるのかな?……』
皆で歩む先を見れば、武良の世界の巨大なタイヤの装甲車が、停車していた。
こちらも純銀色に輝き、筐体最上部左右の隔壁に、大きく王家と神殿の、紋章が描いてある。
王家御墨付きの御用車両を示し、教会の勇者様御一行を示している。
武良がスーツのまま、装甲車の前に立つ。
なぁ隼。まだ飛べないのかい?
まだでス。もう少しデ、『歪み』の解析が終わりまス。そうすれば 『タイヤ無いのに、浮かびっぱなし』に、出来ますかラ。
うーい。
武良の脳内に居る、戦術管制A.I.プログラムの隼と、脳内思考制御で、無言で会話する。
パシュー。パカッ。
グーン
カシャン
純銀色の隔壁が大きく展開し、触手の様なアームが伸びて来る。
軽い金属のこすれる音と共に、武良のスーツの背部と接続する。
グーン
アームは、そのまま重そうなスーツを軽々持ち上げる。
展開する隔壁内側の、巨大スーツが丁度収まる空間に据える。
接続したまま、触手の様なアームは収納される。
バシン。バシュー。
素早く純銀色の隔壁が閉じて、ロックが掛かる。
『さ、帰ろう♪』
ヴーン
純銀色装甲車は、音も無くゆっくり動き出す。
ヴーン
勇者一行は、それぞれの移動用車両に乗り込み、後に続く。
しかし、面倒な事態に成ったなぁー。
同意しまス。しかしながラ、今少しで改善されまス。
宜しく頼むよ。そろそろ一度帰れないと、マリアに怒られちゃう。 マリアのカレーも、そろそろ食べたいし。
『そうネ。早めに御願いしたいハ』英語舌だが、鈴の音の様な心地良い声が響く。
『おぅ〜マリア♪ 御免よー。もう少しで目処が付いて、他者にも回せるから。そしたら、逢える』
『んー。もう少し以上逢えないなラ、其方に『オシカケニョウボウ』しようかしラ♪』
『もう『ニョウボウ』でしょ! あー、でもそれも良いなぁ♪……でも、今少し転送ゲートの信頼度が確定してからね♪ そしたら、『オシカケニョウボウ』様と、異世界観光旅行に行こう♪』
『良いわネ♪……楽しみにするハ……でハ、任務頑張っテネ♪』
『短い通信で、ありがとう。マリア。愛しているよ♪』
『愛してる……ハ、武良♪』
クラウド音声通信は、唐突に切れる。
……奥様泣き出しそうに成リ、慌てて切りましたネ。
AIである隼も、しょんぼり口調に成る。
言わんでくれー。
武良も、しょんぼり表情に成る。
そう。事態は一月程前に始まった。