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我が家の床下で築くハーレム王国  作者: りょう
変化と苦労の5月
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第8話最悪の始まり

 そして迎えたゴールデンウィーク当日。俺は約束通りトリナディアにやって来ていた。


「それでこんな大切な大型連休に呼び出して、何をやらせるつもりなんだ」


 まだ目的を聞かされていなかった俺は、ハナティアに尋ねる。すると彼女から返ってきた答えは、


「そんなの決まっているじゃない。旅行よ旅行」


「旅行?」


 あまりに普通の回答に、思わず聞き返してしまう。あの言い方だと何かやばい事をやらされるのかと思っていたけど、どうやらそれは俺の思い違いらしい。


「何だよそれなら先に言ってくれよ。準備したのに」


「準備は必要ないわよ。必要だったらあらかじめ言うし」


「必要ないって、どこに行くんだよ」


「どこも何も……」


 一時間後、俺はある入口に立っていた。


「えっとハナティアさん、ここは?」


「ナルディアから一時間くらい進んだ所にある場所よ。ここにた翔平と一度来ておきたくて」


「なんかそんな事言われると、嬉しいけどさ。ここって……」


 俺達がやって来たのは、決して旅行には似つかないような暗い洞窟。人が通りそうな道でもないし、ましてやこの洞窟トリナディアからかなり離れてもいる。こんなところに来る理由としては、


(旅行というより洞窟探検か?)


「実はここである事を調べたいの。その為に翔平の協力が必要だから」


「ある事って? というかそもそも、そういうのって旅行とは言えないんですけど。あとゴールデンウィークにわざわざやる事なのか?」


「ゴールデンウィークだからこそできる事なのよ。こういうのも一種の旅みたいなものでしょ」


「旅というよりは、どちらかというと探検だけどな」


 探検もゴールデンウィークらしいといえばらしいけど、旅行とはまた少しだけ違う気もしなくもない。


「それに迷って一日帰れなかったら困るでしょ?」


「迷う可能性もあるのかよ」


 薄暗いとはいえ、一見普通の洞窟だし迷子になる事はない、と思いたい。


「でもこんな洞窟に何かあるのか?」


「勿論。この奥では調査してよかったって思えるものがあるはずだから」


「今、はずって言ったよな? ない可能性もあるって事だろ。何でよりよって、ゴールデンウィークをこんな事に……」


「ねえ翔平、お願い」


 断ろうとしようとした俺に、ハナティアはウルウル目でこちらをら見つめてくる。


(うっ……、これは)


 こんな事をされたら、普通に断りにくい。ゴールデンウィーク初日だから勿論時間はあるし、旅行だって別日に行く。だからこういう経験も悪くはない。


(決してハナティアが可愛いとかそういうのではなくて……)


 こんな頼まれ方したら、誰でもこうなる。そう断言しておこう。


「分かったよ。でも向かう前に目的を先に教えてくれはいか?」


「ありがとう翔平! 目的については移動しながらでいい?」


「それで構わないよ」


「じゃあ出発!」


 ウキウキしながらハナティアは先に歩き出す。そんな彼女の背中を見ながら、俺は考える。そんなに楽しみなものがこの奥にあるのかと。もちろんハナティアはそれが楽しみではあるのだろうけど、俺は少しだけ不安だった。


(まあ、それは行ってみないと分からないか)


「おいおい、置いて行くなよ俺を」


 こうして俺の奇妙なゴールデンウィークは幕を開けるのであった。


 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎

「秘境?」


「そう。かなり前からこの洞窟の先には、神秘の秘境があるって言われていて、それを見たものは生涯幸せになれるとか言われているの」


 道中、ハナティアが今回の目的を話してくれた。ちなみにあれから三十分くらいは既に歩いている。


「それをこれから調べに行くという事か?」


「うん。まだ誰も発見した事がないから、是非とも姫の手で探してほしいって、ある所から依頼されたの」


「誰も発見した事がないのに、よく頼めるなその人」


 でも秘境と言われたら少しだけ興味が湧いてきた。あくまで噂なのかもしれないけど、もしそんな物が発見できたら、きっと綺麗なんだろうな。


(それに幸せになれるって……)


 何か縁起がいい場所でもあるのかもしれない。


「ちなみにハナティアは、思い当たる節はあるのか?」


「一応本で少し調べてみたんだけど、やっぱり噂に過ぎないみたい。でも少し引っかかる事があるの」


「引っかかる事?」


「この地図の、印が付いている場所見て」


 そう言いながらハナティアに地図を渡される。言われた通りに印が付いている所を見たが、そこに地形どころか何もない。


「そこ洞窟があるはずの場所なの」


「え? 何もないけど」


「だから引っかかるって言ったでしょ? 実はこの洞窟、地図上にはないの」


「単に間違いとかじゃなくて?」


「それもない。ここで合ってるの」


 ここの地形をまだ全て把握しきれていない俺は、本当に地図通りの道なのかは分からないが、彼女がそう言うのならその通りなのかもしれない。


(地図にない洞窟って事か)


 確かにそれは調べてみる価値はある。それにその中にある秘境というのはもしかしたら、俺が考えている以上に素晴らしいものなのかもしれない。


「じゃあこの洞窟は……」


 一体何なのかと聞こうとした瞬間、突然洞窟が大きく揺れ始めた。


「何、地震?」


 ハナティアが揺れに気づく。地震にしてはかなり大きい。避難しようにもここは洞窟の中かつ、一方通行。天井が崩れかねない。


「ハナティア、一回外に出るぞ」


 彼女の手を取ろうとする。しかし先程の揺れでハナティアの頭上の天井が崩れだす。


「危ない、ハナティア!」


「え?」


 危険と感じた俺は、咄嗟に彼女に飛びつく。

 何とか寸前のところでハナティアを救出することに成功したが、彼女が正面を歩いていたため、帰る道が瓦礫で塞がれてしまった。


「翔平……? あの、その、もう大丈夫なんだけど」


 ハナティアの声でハッと気づく。咄嗟の判断で彼女を助けたため、ハナティアを押し倒したみたいな形になってしまった。


「え、あ、わ、わるい。助けないと、と思ったら身体が動いていて……。別にそんな気は」


「ううん、ありがとう助けてくれて」


「れ、礼を言われるようなことはしてないよ」


 色々と動揺した俺は、すぐに彼女から離れる。まさかこんな事になるとは思っていなかったけど、一瞬だけドキッとしてしまった自分がいる。


(何やっているんだ俺)


「どうしたの?」


「えっと、と、とりあえず怪我はないか?」


「うん。翔平が咄嗟に助けてくれたから」


「そ、そうか。なら良かった」


 ハナティアの安全も確認できたところで、俺は改めて後ろを振り返る。そこは瓦礫の山となっていて、到底人の手ではどうにかできそうにないものだった。


「これは参ったな……」


「道、塞がっちゃったね」


「なあ、ここに来るまでずっと一本道だったよな?」


「うん」


「俺達もしかしたら洞窟から出られなくなったかもしれないぞ」


 俺のゴールデンウィークは始まるどころから終わりを迎えようとしている。しかもそれは閉じ込められるという最悪な形で。


「まさかあんな大きな揺れが起きるなんて、どうしちゃったんだろ」


「揺れが大きいのは地下だからってのもあるけど、もしかしたら地上でも大きな揺れが起きているかもな」


 何はともあれ、余震にも警戒しなければならないようだ。


「とりあえず進むか」


 戻れなくなってしまった以上進む以外の選択肢がないので、このまま先へ進むことにする。


「うん……痛っ!」


 数歩歩き出したところでハナティアがうずくまる。


「ハナティア?」


「ごめん翔平、多分さっきの地震で私怪我したかも」


 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎

「かなり大きい揺れだったな今の」


「はい」


 ほぼ同時刻。地上でも大きな揺れがあった。翔平の家に向かう途中だった正志と雪音もそれを感じ取っていた。二人はゴールデンウィークの計画を改めて確認しに翔平の家へやって来ていたのだが、その前に大きな揺れにあい一旦その場で休んでいた。


「翔平も電話出ないし、何かあったのか」


「とりあえず家に行った方がいいですね」


「そうだな」


 再び歩き出して五分後、二人は翔平の家へと到着。案の定鍵はかかっていたので、諦めてもう一度電話をかけてみようとしたその時、家の扉が開かれた。


「おい翔平、家にいたらなら電話くらい」


 出てきたのは翔平だと思い、声をかけようとした正志。だが出てきたのは、何故かメイド服の女性だった。


「「め、メイド?!」」


 予期せぬ人物が出てきて思わず声を出す二人。それに気づいたメイドは二人を見て微笑んだ。


「あら、翔平様のお客様でしょうか」


「「しょ、翔平様?!」」


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