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我が家の床下で築くハーレム王国  作者: りょう
覚悟と決断の夏休み 後編
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第75話トリナディア大改革計画 国歌編①

 その日の夕方、俺は一人である場所に出かけていた。


(ここに来るのも久しぶりだな)


 門を開き中に入る。その先で俺を待っていたのは、


「あら、お久しぶりじゃない翔平君」


「お久しぶりです」


 俺がやって来た場所は、かつてとある理由でお世話になる事になった孤児院。大学生になる前にはよくここに来ていたのだが、最近くる時間も無くなっていた。


「一年振りじゃない? 元気にしてた?」


「はい。お陰様で」


 ちなみに俺を出迎えてくれたのは院長さん。もうそれなりに歳は行っているのだが、今庭の掃除をしているくらい元気ではあるようだ。


「それで……あいつは元気にしていますか?」


「ええ、元気よ。沙羅、翔平君がやって来たわよ」


「え? 本当?」


 院長さんの声で施設から顔を出したのは車椅子に乗った黒髪のロングヘアーの少女、原西沙羅。彼女は俺の中学生の頃からの知り合いだったのだが、ある事故をきっかけに車椅子生活になってしまった。

 高校は別々だったんだけど、とあるルートから沙羅がここで暮らしている事を知り、時間がある時に顔を出していた。


「久しぶりだな、沙羅」


「久しぶり、じゃないでしょ! ずっと顔出さないで」


「いや、受験とかで忙しくてさ」


 何で今になってこんな話をしだしたかって? それにはちょっとした事情があるのだけれど、それは追々説明する事にして、


「噂には聞いていたけど、まさかまだこの施設にいるなんてな」


「仕方ないでしょ。親もいないし、こんなのじゃろくな生活もできないから、院長さんに頼んだらここで手伝いをする事を約束として、住ませてもらうことにしたの」


「そっか。じゃあ大学は」


「うん、行ってない」


 高校生までは教育を受けないといけないということもあったので、通ってはいたらしいけど卒業できるかギリギリだったと笑顔で語った。


(まあ、元気そうでよかった)


「それで何で突然会いに来たのよ。連絡もなしに」


「実は沙羅に頼みたい事があって」


「頼みたい事? 体を動かす事以外なら何でも大丈夫だけど」


「その辺は心配しないでくれ。これはお前にしか頼めない事なんだ」


 原西沙羅。

 俺の中学校の頃の同級生。交通事故でまともに歩けなくなるまで彼女は、中学生でありながらテレビに出るくらい有名なピアニストだった。


「二週間で得体の知れない国の国歌を作って欲しい?!」


「メロディだけでもいいんだ。頼む!」


「何を頼むと思ったら、そんな無茶苦茶な」


「身近で音楽を作れる天才はお前しかいないんだ。頼む!」


 俺はその彼女に、トリナディアの国歌を作って欲しいと頼みにやって来たのであった。


 ■□■□■□

 話は数時間ほど前に戻る。


「国歌? 何それ」


「いや、ここは国なんだから国家の一つくらいあるだろ」


「私国歌なんて言葉聞いた事ないんだけど。サクヤは?」


「地上ではそういうものがあるとは聞いた事はありますが、実際どうなのかまでは」


「マジか!?」


 トリナディア王国というからには国歌があるのではないかと聞いてみたところ、どうやら国歌のこの字も知らなく、果たしてこれが国でいいのかとふと思ってしまった。


「でもそういうのって、才能がある人しか作れないんでしょ?」


「それは……まあそうだけど」


「だったら私達だけじゃどうにかなる話ではないと思うんだけど」


「いや、一つだけ心当たりはある」


 音楽の才能がある人と考えた時に、真っ先に浮かんだのが沙羅だった。二年近く会ってないとはいえ、それなりに信頼はあるし彼女の才能については誰もが証明できる。


「そこまで言われるとなんか恥ずかしいけど、ちょっと私の事買いかぶり過ぎじゃない?」


「いや、買いかぶってなんかいないよ。お前なら出来るかなって思ったけど、無理そうなら諦めるよ」


 二週間以内という条件があまりに厳し過ぎるのは俺が一番理解している。事故以来現役ほどの体力もないだろうし、無理させるわけにはいかない。


(アテがなくなったけど、これは仕方ないよな)


 はぁとため息を吐いてしまう。それに対して沙羅もため息を吐いた。


「はぁ……。全く、こんな事本来なら受けたくないんだけど、そこまでして頼むのなんて、きっと誰かの為なんでしょ?」


「いや別にそうは言ってないよ」


「顔に書いてる。もう、これっきりだからね」


「じゃあ受けてくれるのか?」


「出来る限り頑張ってみる。そもそも作曲は私あまりした事がなああんだから、期待しないでよね」


「ありがとう、沙羅!」


「ただし、一つ条件があるわ」


「条件?」


「実はこの時期、孤児院の人手が足りないの。だから明日から三日間、泊まり込みで手伝ってくれない? 勿論タダで」


「た、タダ?」


「文句ある?」


「いいえ、ありません」


 という事で。


「初めまして多田野正志です。よろしくお願いします」


「片瀬雪音です。よろしくお願いします」


 翌日から三日間孤児院でアルバイトをする事になりました。


「待て待て、自然と自己紹介しちゃったけどなんで俺達までタダ働きしなきゃいけないんだ」


「それは、まあ、こういうのって人手があった方がいいかなって」


「それはそうだけど、それでも納得いかねぇぇ」


 ちなみに二人を巻き込んだのは、単純に暇そうだったからってのは内緒だ。

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