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我が家の床下で築くハーレム王国  作者: りょう
覚悟と決断の夏休み 前編
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第68話その一歩は小さくても

 公園の基礎はそれから三日ほどかけて作り上げた。その間バイトもやったりしていたので、毎日というわけにはいかなかったが、少しずつではあるが遊べそうな遊具などは完成し始めていた。


「これ公園で見たことあるけど、なんて言うの?」


「これはアスレチックで、こっちは鉄棒。鉄棒はまあ木製で出来てるから、名前は変わるけどな」


「アスレチックと鉄棒、どれも遊んだら楽しそう」


「ハナティアが乗ったら壊れそうだけどな」


「ちょっとそれはどういう意味?!」


「冗談だよ」


 何はともあれ簡単な遊具は大方完成し、どこに公園を作るかも決まったので、あとは設置していくだけになった。この三日でフウカの怪我も治り、少しずつながら彼女も手伝ってくれるように。


「翔平、これはどこに運ぶ?」


「えっと、それはそこに置いておいてくれ」


「次は?」


「じゃあこれをハナティアに持っていってほしい」


「分かった」


 今もこうして積極的に手伝ってくれている。俺もそれはすごく助かっているのだが、どうもハナティアがそれを気にくわない様子なのだ。


「ねえ翔平、どうしてフウカに手伝わせるの?」


「どうしても何も人手不足だろ」


「それはそうだけど。やっぱり私は気に入らないのよねあの子」


「どうしてそこまで嫌うんだよお前は」


「だって不法侵入者だし」


「まあそうだけどさ」


 ハナティアが言いたいことは分かる。それが普通の意見なのも分かっている。むしろ俺がおかしいと考えてもいいくらいだ。


(でも何でだろうな。放置することもできない)


 ハナティアかまそれに反感を持つ気持ちも十分承知しているのに、俺はどうもこの少女を無視することなんてできなかった。


「でもさハナティア、もしフウカがこれから力になってくれたら、不法侵入者とか関係なくなるよな」


「うーん、それはそうなんだけど」


「もう少しだけ信じてもいいんじゃないか? フウカのこと。別に被害を出したりしていないんだからさ」


 どうしてここまで肩入れするかは分からないけど、恐らく彼女と自分を重ね合わせているところがあるからなんだと思う。あの何も思い出せない辛さを俺は一番知っているから、彼女の痛みも理解できる。


「翔平ってなんか分かりやすいよね」


「何だよいきなり」


「何でもない」


 何はともあれ、少しずつではあるけど一歩ずつ進んでいた。


 ■□■□■□

 今日も夜遅くまで作業は進み、気がつけば日付が変わる頃。ほぼ毎日作業をしていたからか、若干ながら時間感覚がおかしくなっていた。


(空もしばらく見てない気がする)


「お疲れ様です、翔平様」


 作業を止めて背筋を伸ばしていると、背後から声がする。


「本当疲れたよ。でもこれでもまだ完成は程遠いけどな」


「ハナティア様も本当ならこの時間でも起きているはずなんですけど、作業の疲れが出たのでしょうか?」


「だろうな」


 今この空間にいるのはサクヤと俺のみ。フウカはともかく、ハナティアはどうしたのかというと疲れが出たのか、体調を崩してしまった。ただの夏風邪らしいが、少し心配だ。


「言い出しっぺが体調崩してどうするんだって話ですけどね」


「まあいいじゃん。たまには休ませてやっても」


「確かにハナティア様に無理をさせるわけにはいきませんが、それでは翔平様も」


「俺は昔から体は強いんだ。気にするな」


 正直この三日間はかなりしんどかった。でも明日はハナティアが体調崩した事もあり、作業は一旦中止。三日ぶりに休みを取ることになった。


「そういえば翔平様はアルバイトをしていましたよね? そちらの方はどうなっているんですか?」


「勿論してるよ。なるべくサクヤと被らないようにしているから会わないけど、シフトとか見ないのか?」


「私以外のものは見ないので」


「まあ普通だよなそれは」


 俺もサクヤがいつ働いているのか把握していないくらいだし。


「では翔平様は夏休みが明けたらアルバイトの方も」


「辞めるだろうな。サクヤもそうなんだろ?」


「私は一応続けるつもりです。まだまだ資金が足りないもので」


「そうか」


 夏休みが終わったら、地上で誰かと接触できるのはサクヤくらいになるのか。


「ハナティアもいつかはアルバイトをしたいとか言い出しそうだな」


「そんなまさか」


「ただでさえこの国の財政も危ういのを知っているのは、アイツだし可能性はあるかもしれないぞ」


「私はそれだけは避けたいのですが」


「まあ、そんなすぐには言い出さないだろ」


 俺はあっけらかんにサクヤに言い放った。いくらハナティアも急にはそんな事言い出さないと思って。


「でも嫌な予感がするのは私だけでしょうか」


「それは俺も全くもって同感だ」


 この嫌な予感、的中しなきゃいいいんだけど。



 それから二日後。

 夏風邪が完治したハナティアが最初に言った一言。


「翔平、私アルバイトしてお金を稼ぎたい」


「ぶふぉっ」


 俺は飲んでいたお茶を思わず吹き出してしまう。まさか本当にフラグが回収されるなんて……。


「い、いや、ハナティア、それマジで言っているのか?」


「勿論。翔平やサクヤが頑張っているの私知っているし、今度は私も頑張りたいの」


「翔平様……」


 言葉で言い表せないくらいの視線を向けてくるサクヤ。まさか俺もこうなるとは思っていなかった。


「ごめんサクヤ、俺が悪かった」


「何で翔平、謝ってるの?」


「ハナティア様、それは聞かないでください。私にも責任がありますから」


「だから何の話?」



 で、さらに三日後。


「私柏原花と言います。翔平の妻です」


 悲劇はついにバイト先まで付いてきてしまった。


(誰か助けてくれ)


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