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我が家の床下で築くハーレム王国  作者: りょう
覚悟と決断の夏休み 前編
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第47話未来へと繋ぐ約束

「私はずっと地下の王国の王女の任を全うしてきたから、翔平と出会うまでは断然地下での暮らしが楽しかったわよ。色々問題はあったりしたけど」


 俺の質問に最初に声を発したのは、ハナティアだった。その答えは出まあ予想通りではあったけど、


「でも翔平と再会して、この四ヶ月色々な経験をして、ここでの暮らしも楽しいと思えるようになったの」


 その次に発した言葉は少しだけ嬉しかった。


「ハナちゃんが楽しいなら、私もこれから楽しめるのかな」


 それに次いでキャロルもそんな事を言ってくれる。たった三ヶ月だけでもそう思ってくれたなら、こちらとしては嬉しい。

 だが、それだけでは終わらせたくない。


「そうだな。キャロルもこれから楽しめるんじゃないかな。今度行くプールは絶対に楽しめるし、それに」


「それに?」


「俺は二人にもっとこの地上の生活を楽しんでもらいたいと思う。折角俺や正志や雪音は夏休みに入ったし、時間はたっぷある」


 地下に住んでいようが住んでいまいが、俺達は同じ人間なわけだし、俺からしてみれば二人にはもっと地上の生活を楽しんでもらいたいのが本心だ。

 以前もハナティアに対してこんな事を言った気もするけど、それはキャロルやサクヤにも同じ事が言えると俺は思う。


「平ちゃんは地上のほうがやっぱり好きなの?」


「それはまあ、どちらかというと二十年近く過ごした地上のほうが好きだよ。色々な事を思い出して、ハナティアと出会って、地下の世界を知って、トリナディアという国を知ってもその気持ちは少しも変わっていない。でも勿論、地下での暮らしも好きだよ」


「翔平、やっぱり私と暮らすのが……」


「嫌なわけないだろ? ただ、何度も言うけど俺は寂しいんだよ。元の生活から離れるのが」


「平ちゃんにも住む場所があるからね」


「ああ」


 ハナティアにこういう話をするのは、ちょっと酷だけど嘘をついてまで地下での暮らしはしたくなかった。


「まあ正直、地上の暮らしと地下の暮らしのどちらが好きとか嫌いとか関係ないけどな。俺達はどちらで暮らそうが同じ人間なんだし、そういう区別はしなくていいと思う。もしトリナディアで暮らす事になったら、トリナディアの人達にも地上の暮らしをもっと知ってもらいたいとも考えているよ」


「本当翔平は滅茶苦茶な事言うわね。でもそれもありなのかも」


「そうだろ?」


 何だか話は滅茶苦茶だけど、結論からすれば二人やトリナディアに住む人達にはどちらの暮らしも好きになってほしかった。上手くいくかは俺の努力次第になるけど、いつかはそんな目標を成し遂げたい。


「さてと、飯も食べ終わったしもう少し遊んでくか」


「次どこに行くの?」


「そうだな、まあ歩きながら探すか」


「うん!」


 俺達はこの後ゲームセンターや色々なところでヘトヘトになるまで遊び、家に帰った頃にはすっかり夜になっていたのだった。


 ■□■□■□

「キャロル、寝ちゃったね」


「うん。だいぶ遊んだから疲れたんだろ」


「翔平も疲れているんじゃないの?」


「それはお前もだろ?」


 家へ帰り、夕食を食べた後遊び疲れたのかキャロルはぐっすりと眠ってしまった。朝から出かけてずっと遊んでいたから、疲れていて当たり前なんだけど、不思議と俺もハナティアも眠ろうとはしなかった。


「今日はありがとう、翔平。楽しかった」


「何だよ改まって。むしろこれからの方が楽しくなるよ」


「今日でも充分楽しかったのに?」


「デパートも楽しいけど、夏休みだからこれからの方がもっと楽しい場所があるよ」


「それは皆で行くの?」


「まあそうだな」


「私一度でいいから翔平と二人でどこか出かけたい」


「二人だけで?」


「翔平にもっと地上の楽しさを私に教えてほしいの」


 二人きりのデート、お互い告白したのだから本来なら行ってもおかしくない。それを今までしてこなかったのだから、今からしても別に嫌な気分ではない。

 ハナティアと二人きりにでいられるなら、俺はそれだけでも幸せだとさえ思っていた。


「それはありかもな。折角の休みだからいくらでもハナティアと二人でデートなんて出来るからな」


「でしょ? でも近くじゃ面白くないから遠くへ連れて行ってほしいな」


「そうだな。考えておく」


 遠くならデートというより小さな旅行になる。一泊二日とかで行き先を考えておこう。


「ねえ翔平」


「ん?」


「これから生まれてくる私達の子供にも、地上の景色って見せられるのかな」


 それは当たり前のようでハナティアにとっては当たり前じゃない言葉。そういえばハナティアの中に命が宿ってから間も無く二ヶ月だけど、気がつけば彼女のお腹は少しずつ大きくなっている。だからもしかしてだけど、プールとかに行けるのも今回が最後になる可能性はある。


(出産は来年。意外とすぐ近くなんだよな……)


 約半年なんてあっという間に過ぎてしまうだろうし、それまでにもいろいろな事が起きる。だけどそれらを全部乗り越えて、もし叶えるならこの地上の景色を見せたい。


「見せられるさ。いつかは絶対。子供が生まれた後は、また一緒に旅行へ行こう」


「本当?」


「絶対に約束する。でもその前に今するべき事をしないとな」


「うん、そうね」


 その約束を果たすまではまだ時間はかかるけど、ハナティアと一緒にいる限りはいつかは絶対に果たせる。子供が生まれて俺達が家族になったその時は、子供には沢山の景色を楽しんでもらいたい。その為にはまず、今のうちから俺達ができる事をしよう。


「子供の為にも、これから頑張ろうな」


「うん、私はトリナディアの姫であり、この子の母親なんだから頑張る」


「俺もそれを支えるよ、絶対」


 それは小さな約束かもしれないけど、未来へと繋がる大事な約束。俺はきっと果たしてみせる、今日交わしたこの約束を。

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