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我が家の床下で築くハーレム王国  作者: りょう
旅行とケジメの7月
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第35話温泉トーク 男子編

 夕食を取る前に正志達が早速温泉に入らないかと誘ってきたので、皆で温泉を堪能する事に。


「それで正志、お前は雪音と二人きりだけどどうなんだ?」


「な、何だよいきなり」


「いや、お前があんな事を言い出すから何か意味があるのかなって」


「ば、馬鹿言え。そんな事ある訳ないだろ」


「人に散々言っておいて、相変わらず駄目だなお前は」


「お前だけには言われたくないわ!」


 男二人でゆっくり話すなんて事が滅多にないので、こういう時にしか聞けない事を聞いてみる。しかもタイミングよく今は他のお客さんもいない。


(何を考えてこうしたのかは分かるが……)



「そういうお前だって、何もしてないんだろ?」

 

「残念だけど俺は、今夜ハナティアと二人で出かける」


「んなっ! 先駆けかよ」


「お前がケジメをつけろとか言うからだろ」


「いや、まあそうだけどさ」


 正志はそういう恋話にめっぽう弱い所がある。そのくせ人の背中を押してくれたりするから、不思議なやつだ。


「俺も……別に何もしてないって訳じゃないんだけどさ……」


「分かってるよ。高校の時から」


「なっ! 知ってたのかよ」


「しょっちゅう一緒にいれば分かるよ」


「だったら、もっと気づくべき事があるだろ……」


「なんか言ったか?」


「別に何でもねえよ」


 これは高校生の時から知っていた話なのだが、正志は雪音の事が好きらしい。それも結構最初の頃から。

 今日までに文化祭や修学旅行といった、告白には相応しいイベントはあったのだが、それをものの見事に逃してきてしまっている。


「なあ翔平」


「何だ」


「もしこの先、その、俺が雪音とそういう関係になったら、お前はどうするんだ」


「どうするも何も、今まで通りとまではいかなくなるから、俺も節度をわきまえるよ」


「でもそうなると、お前大学でぼっちになるぞ」


「ぼっち言うなよ。まあ、でも大学じゃなくてもいつかは、俺達は三人でいるって事もなくなるんだろうな」


「ハナティアちゃんの事か?」


「それもある。けどそれ以上に俺達は……いや、何でもない」


「何だよ勿体ぶって」


 俺と雪音は同じ歳で正志だけが年下だなんて聞かされたら、多分今までのような関係にはいかない気がする。


『では私が、翔平くんの事が昔から好きだと言ったらどうしますか?』


 この前の雪音の言葉が頭をちらつかせる。もしあの言葉が真だとしたら、正志はこの後どうなる。いや、真だとは限らないけど、それでも……。


「やっぱりお前変わったよな翔平。ハナティアちゃんと出会ってから」


「そうか? 俺は何一つ変わってないと思うけど」


「何か大人っぽくなったというかさ。やっぱり恋は人を変えるんだな」


「べ、別に恋なんてしてねえよ」


「だったら夜に彼女を誘ったんだ?」


「それは……」


 ハッキリとまでは分からない。でも俺は確実に何かを彼女に伝えようとしている。それは一体なんなのかは分からない。けどもし、この感情の正体を言葉で表すなら……。


「自分の気持ちをハッキリさせたいからかな」


「ようやく自覚したのか? 自分の気持ちを」


「それは……まだ分からない。けど俺は、きっとそうしたいんだと思う。だから誘ったんだ」


 恋、と呼ぶかもしれない。


「そっか。なら頑張れよ」


「ああ。正志もな」


 今夜何かが動き出す。再会から三ヶ月経ったこの日、今までとは違う何かが確実に動き出そうとしていた。


「って、やば。そろそろ夕飯の時間だよな」


「げっ、翔平が余計な事ばかり聞いてくるから悪いんだよ」


「俺のせいかよ!」


 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎

 夕食を終えてしばらくして……。


「ハナティア、そろそろ二人で散歩に出かけないか?」


「あ、うん。準備するね」


 俺は約束通りハナティアと一緒に散歩へ出かける事にした。ハナティアはこの宿の浴衣を着ていて、すごく似合っている。というか、可愛い……かもしれない。


「うわぁ、綺麗な星」


「明日も晴れそうだな」


 夜道を歩きながらハナティアが声を漏らす。今日は朝から天気に恵まれていて、夜空には幾多の星空が散りばめられている。こういうの都会では見れないよな絶対。


「まさか翔平から誘ってくるなんて思わなかったけど、どうしたの?」


「いや、何か二人きりで話したいなって思ってさ。それの方が正志にもいいかなって思って」


「正志君に?」


「あ、こっちの話。それより、俺さハナティアに話があるんだ」


「私に話?」


挿絵(By みてみん)


 足を止めてこちらを振り向くハナティア。俺は思わずドキッとしてしまう。というより、さっきからドキドキが止まらない。


(そっか、やっぱり俺……)


 ずっと気づかないようにしていたこの気持ち。だけどようやくハッキリした。


 俺はずっとハナティアが好きだったんだ。


「あ、あのさハナティア」


「何?」


「今さらこんな事言うのもアレなんだけど、俺これからもハナティアの隣にいてもいいかな」


 ドキドキしながらも出た精一杯の言葉。好きとは恥ずかしくて言えなかったけど、この方が良いかなっと思う。


「え? え? それって翔平、どういう意味なの。も、勿論これからもいてもいいけど、それってつまり……」


「何か凄く今更言葉になるかもしれないけど、この三カ月一緒に暮らしている間に分かったんだ。俺はハナティアが好きなんだって。昔の記憶がたとえなくても、俺は今のお前が好きなんだ。だからこれから生まれる子供の為にも、これからも一緒にいてほしい」


「翔平……」


 迷う必要はなかった。あれからずっと考え続けて、自分のこれからの事についてやっと答えを見つける事ができた。ハナティアがここまで一人で頑張ってきたなら、これからは俺がそれを支え続ければいい。

 それが最初から決まっていた運命だとしても、そんなの関係ない。俺は純粋にハナティアが好きになったんだ。


「それでハナティアの答えも聞かせてほしいんだけど」


「そんな事言われたら……」


 再び俺に背を向けるハナティア。それは恥ずかしさからなのか、それとも別の感情からなのか分からない。


「オッケーに決まっているでしょ、馬鹿。ずっと、ずっと待っていたんだから……」

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