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我が家の床下で築くハーレム王国  作者: りょう
梅雨と始まりの6月
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閑話1 不安と信頼

 翔平と一日部屋で一緒だった日の翌日、私は身体に起きたある異変に気付いた。本当はもっと前から体に異変が起きていたのだけれど、それが確信に変わるまでには時間がかかった。


(もう……来ちゃったんだ)


 気になった私は、その事をサクヤに相談。そうするとやはり、サクヤからは思った通りの答えが返ってきた。


「ハナティア様、おめでとうございます」


 それは朗報というべきものなのかは分からないけど、ついに計画が本格的に動き出した事を意味する言葉だった。


「何でそんな……あまりにも早すぎるわよ。私これからどうすればいいの?」


「とりあえず落ち着いてくださいハナティア様。いつかは来てもおかしくはない状態ではあったんですから」


「まだ再会して二ヶ月なのに、どうして……」


 でもそれを素直に私は喜べない。これが示すのは、もしかしたら翔平との別れかもしれないと思ったからだ。歴代の人達の失敗を私は知っていたからこそ、計画が進む事に恐怖を覚えていた。


(もしこれを翔平が知ったら……)


 今までの人達のようになってしまうのだろうか。


「翔平様には今日しっかりとお話ししましょう。隠すなんて事は出来ませんから」


「え? でも……」


「大丈夫ですハナティア様、翔平様ならきっと理解してくれますよ」


「そうだといいけど」


 それは私も理解していた。翔平なら理解してくれると。それでも、私の中にある不安が一向に消えない。何せ彼は親になるのだ。しかも突然。

 それをいきなり告げられたら、果たして彼はそれを受け入れられるのだろうか。


(それに翔平には、話さなければならない事が沢山……)


 いつかは話さなければならない事はまだ沢山ある。もしこの話を受け入れられたとしても、果たしてその先彼はどうなるか想像できない。


「とりあえず連絡しましょう。受け入れられるか受け入れられないかは、彼次第ですから」


「うん……」



 夜、翔平の親友二人も交えての夕食。また二人に会えた事は嬉しかったけど、まさかこのタイミングで会う事になるとは思っていなかった。

 それは翔平自身も分かっていたらしく、何度も私に電話の時の事を尋ねようとしていた。私はその度に何度も誤魔化してなるべく遠ざけていた。


(避けてはいけないのは分かっているのに、どうして私はこんなにも臆病なんだろ)


 でも夕飯が落ち着いて、皆が雑談をしている時についに痺れを切らした翔平が私の元にやって来た。


「ハナティア、ちょっと二人で外に行こう」


「なんだ翔平、俺達を差し置いてデートか?」


「なっ、馬鹿。そうじゃねえよ。ただ、ハナティアと話したい事があるんだよ。二人は待っててくれないか?」


「やっぱりデートじゃん」


「だから違うって」


 そんなやり取りがあった後、私と翔平は私の部屋にあるベランダへやって来た。ここなら誰にも聞かれないだろうとの事らしい。


「自ら誘っておいて、ここまではぐらかすなんて珍しいな。どうしたんだよハナティア」


「ごめん。どうしても話す勇気が出てこなくて」


「話す勇気がって、昨日の後もしくは昨日の内に何か起きたのか?」


「起きた、というべきか分からない。本当ならずっと前から起きていた事なのかもしれないし」


 身体が震えている。この先話す事は彼にとって、信じられない話だ。そしてそれを話した時、翔平はそれを、私を受け入れてくれるのだろうか。ただ私は怖い。


(でも前に進まないと)


「ずっと前から? どういう意味だよ」


「実はね私……」


 ここまで来たらもう話す以外の選択肢はなかった。この国の未来の為にも、生まれてくるであろう子供の為にも、そして私と翔平の為にも。私はゆっくりとその事実を口にした。


「私……できちゃったみたいなの」


 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎

「おめでとう、って素直に言うべきか分からないけど、よかったねハナちゃん」


 翌日、たまたま城に遊びに来ていたキャロルにその事を話した。本当は黙っておこうと思っていたけど、長い付き合いの彼女なら話してもいいかなと思って、彼女にだけ話した。


「よかったのかな。本当に」


「よかったと私は思うよ。それがハナちゃんがずっと望んできた事なんだし」


「私が望んでいた?」


「そうだよ。ハナちゃんはあの事故の後も平ちゃんの事をずっと想っていたんだから。その位の想いは気づくよ」


「私はそんな……」


 彼女の言う通りだった。私は出会った時から彼の事が好きだったし、お姉ちゃんにも憧れを持っていた。もしあの事故がなければ、もっと早く結ばれていたかもしれないと考えた事もある。


(長年の付き合いだから、やっぱり分かっちゃうのかな)


 でも逆に私もキャロルの事で、昔から気づいている事がある。本人はまだ自覚していないみたいだけど、私にはお見通しだ。


「とにかくこれで、ハナちゃんと平ちゃんはおめでたなんだから、この先しっかりしないとね」


「それは分かっているよ。まだ始まったばかりでもあるんだから」


「でも肝心なのは」


「翔平の方だと思う」


「やっぱり平ちゃん次第だよね。この国の未来の事もそうだけど、それ以上に」


「翔平は大事な部分の記憶がない。それを思い出した時、どうなっちゃうのかな」


「それは私も分からないなぁ。でもすぐには受け入れないと思う」


「それは私も同感」


 まだあの話をしてから一度も彼とは会っていない。今回の事を果たして彼はどう思っているのか、次会ったら聞かなければならない。


「でもハナちゃんは平ちゃんを信じているんでしょ?」


「信じているって?」


「平ちゃんが受け入れてくれるって信じているから話した、違うかな?」


「それは……そうかもしれないけど」


 理由は分からないけど、私の中では翔平が受け入れてくれるのではないかと微かに信じていた。何の確証も保証もないけど、翔平ならきっと……そう思っている自分がいた。


「いいなぁ平ちゃんは。こんなにも想ってくれている人と結婚できるなんて」


「まだ結婚するって決まってないでしょ」


「でもその時はいずれ来るんでしょ? だから羨ましいなって」


「それならキャロル、あなたも」


「ハナちゃん、それは無しでしょ?」


「え、あ、ごめん」


「別に謝らなくていいけど、今は平ちゃんを信じてあげてね」


 でももし仮に翔平が受け入れなくて、私の元を去った時、キャロルが支えてくれる。親友というものはそういうものだと私は思う。今までがそうであったように。


「ありがとう、キャロル」

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