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我が家の床下で築くハーレム王国  作者: りょう
梅雨と始まりの6月
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第23話ドキドキの時間

 午後になってからはというと、午前中にほとんど遊べ尽くしてしまった事もあり、ボーッとする時間の方が長くなっていた。


(何もやる事ないけど、さっきのはサクヤのはちょっとな……)


 いくら何でもハード過ぎる。しかし、これも次のへの一歩の為なら必要になってくるのかもしれない。


(いやいや、それでも)


 思わずハナティアを見続けてしまう。何というか俺と彼女がそういう関係になるのは、釣り合わない気がする。相手は姫だし、俺としては少し気が引ける。

 たとえ向こうがいかに本気だとしてもだ。


「どうしたの翔平。私の顔に何かついてる?」


「いや、そうじゃないけどさ。さっきのサクヤの話を思い出してたら、何か色々考えちゃってさ」


「サクヤの話?」


 どうやら忘れていたらしく、ハナティアは三十秒くらい時間経った後に、ようやく思い出す事に成功。


「な、な、あれは別にサクヤが冗談で言っただけでしょ。わ、わ、私は計画の為なら……ごにょごにょ」


「計画の為なら?」


「な、何でもない! と、とにかく私は……」


 かなり慌て出すハナティアを俺が止めようと立ち上がった時、足元にずっと放置していた将棋盤に足を引っ掛けてしまう。


「痛っ」


 ぶつけた勢いでバランスが取れなくなった俺は、そのままハナティアの元へと倒れ込んでしまう。


「ちょ、ちょっと翔平、何を」


 当然俺を支える事が出来ないハナティアも、一緒に倒れていく。


「きゃー」


 そして数秒後、俺とハナティアはベッドの上に二人して倒れこんだ。俺がハナティアを押し倒す形で……。


「……」


「……」


 しばらく見つめ合ったまま時間が止まる。こんなに近くでハナティアを見るの初めてだ。少し動けばキスができる距離にハナティアの顔がある。


(何か可愛いな)


 銀髪のショートカットヘアーとコバルトブルーの瞳。身体が小柄なこともあって、顔も小さめですごく整っている。俺何で二ヶ月の間一度も気づかなかったんだろ。彼女がこんなにも可愛いだなんて。


「あ、あの翔平、ど、どいてくれる?」


「え、あ、わ、悪い」


 ハナティアに言われて慌てて俺はその場から離れる。だが動揺してしまった事もあって、離れた勢いで広いベッドの上に行ってしまう。


「ね、ねえ翔平」


 そんな俺を見てごく自然にハナティアがベッドに腰掛ける。こ、この状況はまさか……。


「な、何だ?」


「どうしようか」


「どうするって?」


「だ、だって私達今のこの状態なら、そのサクヤが言っていたあの……」


 ベッドの上でお互いを見合っている二人。これからの子作り計画の事、国の繁栄の事、俺の……いや俺達の未来の事。それら全部含めて考えると、やっぱり俺は……。


「私達一線越えようか?」


「待ったハナティア、まずは俺の話を」


「隙あり!」


 飛びついてくるハナティア。今度はさっきと立場が逆転。俺がハナティアに倒されている形になった。


「私ずっと待っていたんだから、少しくらいいよね?」


 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎

「一日お疲れ様でした、お二人共」


「……ああ」


「ええ」


 計画の第一段階が終わりを告げたのは、丁度日付が変わった直後だった。色々な意味で疲れてしまった俺は、明日も大学があるのでそのまま帰宅する事に。見送りは何故かサクヤがしてくれた。


「お疲れのようですね、翔平様」


「それはそうだろ。俺もある意味人生で初めての事だったから」


「それでも第一段階の時点では上出来でしたよ。まあ、まだまだ足りないところはありますけど」


「そう言うなよ」


 実はあの後、俺とハナティアはそこまでの事はできなかった。初めてのプレッシャーと、突然のハプニングという二つの理由からその直前で止まってしまった。


(男としてまだまだだよな、俺)


 でも俺とハナティアはまだ決して付き合ってもいないわけだし、この流れは自然だとさえ思ってしまう。ハナティアには申し訳ないと思うが。


「この先やっぱり不安だよ。このままの状態が何度も続きそうで」


「そうでもないですよ。ハナティア様はちゃんと翔平様の事理解してくれていますから」


「そうなのか? 俺は何も出来てないのに」


「充分くらいできてます。二十五年前からずっと」


「二十五年前から……」


 そんなずっと昔の子供の頃の事なんか言われても、やはり俺には何も理解できない。


「とりあえず明日もお早いなら、帰ってゆっくりお休みください。次の事はまた後日お話ししますから」


「そうだな。お休み」


「お休みなさい」


 こうして第一段階は、底知れぬ不安だけが俺の中に残ったまま終わりを告げた。



 翔平が帰った後。


「どうしようサクヤ、私何も出来なかったよ」


「充分ハナティア様も頑張りましたよ。お二人ならきっとこの先も大丈夫ですよ」


「そんな事言われても」


 ハナティアも翔平と同様に、底知れぬ不安感を感じていた。サクヤは大丈夫だと言うものの、ハナティアにかかる沢山のプレッシャーが彼女を更に不安にさせていた。


「第一段階であそこまでいけた方は、これまでで初めてですよ。これもやはり昔から紡いできている絆だからでしょうか」


「昔からの絆なんてそんな、私は……」


「やはりまだ気にしておられるのですか?」


「当たり前でしょ。私はこの先本当に翔平と一緒にいて大丈夫なのかな」


「大丈夫ですよ。それは私が保障しますから」


「サクヤ……」


 ハナティアの苦しみは、充分なくらいサクヤも理解していた。だからこそ、彼女を支えなければならないのがサクヤ自身の使命でもあった。


(でもあの事故がなければ、きっと今頃二人は……)


 起きてしまった悲劇は、今更取り戻す事なんてできない。だからせめて今だけでも彼女には幸せを手に入れ直してほしい。


 それがサクヤが心から願う事だった。


「それにしてもハナティア様、もう一歩のところならどうして押さなかったんですか?」


「サクヤって時々悪魔に見えるんだけど私」


「何を仰るんですか、いいですかハナティア様。翔平様が好きなら」


「ストップストップ。私が悪かったから、許して」


 それ故に時折彼女は熱くなってしまう時もあるのだった。


「三十路でも油断できないわねこれ」


「ハナティア様、今なんと仰いましたか?」


「ごめんなさい、何でもありません」

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