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我が家の床下で築くハーレム王国  作者: りょう
第2部 新生活と演説の9月
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第96話王女の演説〜二時間前の異変〜

 ギクシャクした空気が流れ続けたまま迎えた演説当日。午後から行う予定なので、俺達は朝からの準備に忙しかった。


「それでここはこうなるけど、大丈夫か?」


「……」


「おい、ここ数日ずっとそんな調子で大丈夫か?」


「……大丈夫」


「どうみても大丈夫には見えないんだけど、本当に平気か?」


「大丈夫、大丈夫だから」


 緊張をしているのかそれとも別の理由があるのか、ここ数日のハナティアの調子はずっとこんな感じだった。俺はというと彼女にどう声をかければいいか分からないまま、時間だけがただただ過ぎていくだけで、こればかりはサクヤに心配かける事になってしまった。


「サクヤはさ、原因が分かっているのか?」


「ハナティア様から話は何度も聞いてはいるのですが、その核が分からないんです。でも決してハナティア様は翔平様を嫌いになった訳ではないと思います」


「それは俺も理解しているよ。今ハナティアが本当に悩んでいるのはそこじゃないんじゃないかな」


「どういう事でしょうか」


 ハナティアが極端に元気が無くなったのは、この演説の日付が決まったあたりからだった。彼女は当日の今日までここまで様子がおかしいのは、もしかしたら……。


「とりあえず俺達は舞台を整えて、彼女をサポートすることしかできないよ。あとはどうなるのかはハナティア自身と、国民次第だろ」


「力にはなれないのでしょうか」


「サクヤは充分なくらいに力になっているよ」


 それはともかくとして、ハナティアが果たして今回の演説で国民にちゃんと伝えられるかが今の問題だ。内容は一緒に考えていたので、大きなミスは起きないと信じている。


「ねえ翔平、今から少し時間ある?」


「あるけど、演説に向けて心の準備とかしなくていいのか?」


「それはきっと翔平と話してればきっとできると思う」


「ハナティアがそう思うなら、別に構わないよ」


「じゃあ少しだけ散歩に行こうか」


 ■□■□■□

 演説まで残り二時間近くになったところで、ハナティアに散歩に誘われた俺は彼女の後についていく事に。


「どうしたんだよ演説前に散歩に出掛けようだなんて」


「演説はその、少し緊張しているくらいなんだけどね、それより前に翔平とちゃんと話しがしたくて」


「話し?」


「ほら、最近私翔平に冷たかったでしょ」


「別に冷たいとかは感じてなかったけどな俺は。どちらかというとハナティアが元気なさそうにしてたから、心配していたんだよ」


「ごめんね、心配させるつもりなんてなかったんだけど」


 どうやらハナティアが俺を誘った理由は、ここ数日のハナティア自身の異変に対しての事を言いたかったらしい。ギクシャクした空気が続いていたのは、やはりハナティア自身も気にしていたらしい。


(それはそうだよな)


「なあハナティア、この前も疑問に思ったんだけど、どうしていきなりあんな事を言ったんだ?」


「初仕事をした時に私が言った事だよね。あれはね本当にふと思ったから聞いただけなの」


「ふと思っただけなのか?」


「うん。深い意味なんてなかった……と思う」


「何で曖昧なんだよ」


 それからしばらく黙り込むハナティア。俺は敢えて彼女の言葉を待つ。

 そしてしばらくして彼女は再び口を開いた。


「私ね何でか分からないんだけど、そんな事ばかりずっと考えているの。今の生活が翔平にとって本当に幸せなのかなって」


「言っただろ? 後悔とかそんな事感じていないって」


「でも雪音達とずっと会えなくなったのよ。寂しくなんかない訳ないでしょ」


「それは、まあ、そうだけど。でもそれと不幸はイコールにならないだろ」


「分かってる! 分かっているからこそ分からないのよ。どうしてこんな気持ちになっているのか」


 数日前と同じように突然語尾を強めるハナティア。だけど今度は俺はそこから引き下がろうとしなかった。


「今すぐにとその答えを出せとは俺は言わない。けど、ずっとそんな調子でこの先大丈夫なのか?」


「大丈夫な訳ないでしょ。子供だって生まれてくる。子育てだってしなきゃいけない。それにこれからがもっと国の仕事が忙しくなる。これからの方が沢山大変な事が待っているから、このままじゃいけないのなんてとっくに自覚しているわよ」


「おいハナティア、どうしたんだよ」


「分かってる。分かっているから……」


 様子がおかしくなり始めたハナティアに、慌てて彼女に駆け寄る。


「私がしっかりしないと……」


「おい!」


 沢山の汗を流しながら、ハナティアは俺に体重を預けながらそのままハナティアは意識を失ってしまった。


「ハナティア!」


 ハナティアは俺の知らないところで誰にも話せないプレッシャーを抱えていた。俺はその彼女の気持ちを、気づいてやれなかった。以前にも同じ事があったというのに、俺はここ数日目の前の演説の事ばかりをみすぎていて、近くにいた彼女に目を向ける事ができなかった。


(このままでいいのか、俺は……)


 この先の事にさらに不安を抱えながら、俺は急いでハナティアを城へと運ぶのであった。


 演説まで残り一時間。

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