学校
初めての作品です、温かい目で見守っていただければ幸いです。
代わり映えの無い日常、特に面白いこともないが俺はそれなり楽しんでいる。
例えば今は歴史の授業中だ、しかも世界史。勉強したからって将来どんな役に立つのか全く分からん。せいぜい大学受験に役立つらいだろ、
あれ、思ったより役立つな。
などと思ったがよくよく考えてみると俺進学組じゃなくて就職組だった。
いかんいかん、話しが逸れてしまった、べつに俺が進学しようと就職しようが関係ない、今話しているのは役に立つか分からん世界史の授業も俺はそれを楽しんでるって事だ。
例えばだ、うちの学校じゃ戦争の授業ではどの国がどんな戦術でどんな国を倒したのかを詳しく教えてくれる、そんな時俺は「俺ならこうするのに」「もっとこうすれば楽に勝てるのに」とかを考えている、これがやってみると案外面白い。
と、まぁ一見真面目に授業を聴いているかの様に見えるが気になるとこしか聴いてないので成績は地を這うが如しである。
まあそんな俺にも面白く無いことはある。
キーンコーンカーンコーン
そんな事を考えてる内に授業終了のチャイムが鳴った、そしてこのチャイムは同時に昼休みの開始を告げるチャイムでもある、弁当を持って来てない生徒は一斉に学食に向かって走って行く、俺もその一人だ。
だがこの学校の学食には幾つか問題がある、この問題知らない、或いは知っていても対処法を知らない一年生は食事にありつけないことが良くある。
そんな学食ではあるが、一年以上使っていれば攻略法も理解する、故に二年生の一部の攻略法をマスターした生徒は学食を利用する事ができる。
「ふん、席を取っていたのかい、殊勝なことだな月城 勇翔、この裏切り者が」
「なんだ九条、その言い草は、そもそも一から十まで全部お前が悪いんじゃねーか」
「だまらっしゃい‼︎俺もこんな事になるなんて思ってなかったんだよ‼︎」
で、その攻略法ってのがこれだ。名付けて【一人が席取って一人が飯買う】だ。
この攻略法では買いに行くやつとの信頼関係がとても重要になってる。
何故なら、飯を買いにいった奴がちゃんと席を取ってる奴の飯を買ってくる保証はない、其れに買って来てくれたとしても、好きな物を買って来ない事もある。
なに?あらかじめ何を買うか話せばいいだろって?
ハッこれだから素人は。
残念ながらこの学校のメニューは完全日替わりでな、地味な時は【うどんとおにぎりのセット】だけどすごい日なんて【子豚の丸焼き】とか【鯨定食】だ。
この例は極端だが、この幅から席とってるやつの好きな物を確実に選ぶにはそいつの好みを完全に理解している必要がある。席を取っている方も買いに行った方が自分の好みを理解してくれてることを信じなくてはならない。
そんで、おれが席を取ってる間に飯を買ってきてくれたのは中学からの親友の九条 響だ。
では何故、中学からの親友と一触即発な感じになってるのかというと。
「そもそも、俺を生徒会に推薦したのお前だろ。お前は主人公体質だから生徒会長になるべきだとか言って」
「うるさいうるさいうるさい‼まさかほかの役員が全員あんな美少女になるとはは思わなかったんだ」
そう、こいつは訳のわからない理由で俺を生徒会長に推薦したくせに他の役員が美少女揃いだという理由で逆切れしているのだ。
馬鹿だ、ここに馬鹿がいるぞ。
だが、俺はこの馬鹿の機嫌を直す方法を熟知している。だてに中学から一緒なわけではない。
「そういえば、この間借りてたゲームでようやくトゥルーエンドクリアしたんだけど、あれはスゲエ泣けたぜ。涙なくしては見られねえな」
「フッ、その話題を振ってくるとはどうやら勇翔は同胞の徒のようだな、先ほどまでの無礼をわびよう」
何の話をしているのか、わかる人にはわかるだろう。18歳未満はプレイしちゃダメなゲームの話だ。
こいつは見た目クールで理知的なメガネだがその実態は重度のオタクなのである。響の正体を知る者は口をそろえてこう言う。
(残念なイケメン)
と。
ちなみに俺は少したしなむくらいだ、決して重度のオタクではない。
誰が何と言をうともだ。
「お、いたいた、探したよ勇翔っち、響っち」
「こんなとこにいたのか、もうちょっとわかりやすいところを取れなかったのか」
おっと、馬鹿としゃべってるとほかのメンバーも来たようだ。
「ここ分かりづらいか?窓際の一番日当たりのいいとこだぞ?」
先に話しかけてきたのは天峰 徹、身長150cmあるかどうかの男子にしては小柄な体形で童顔で小学生でも通じそうだが、以外にも軽音部でドラムをやっている。
ファンも多く女子生徒からやばそうな男子にまで大人気だ。
次に話しかけてきたのは東雲 怜次、こいつは逆に身長190㎝くらいありそうな奴でそれでいて筋肉もしっかりついているのでヒョロイ感じになっていない。なんというか、背が高いというよりも縮尺がおかしいみたいなやつだ。
こいつは見た目道理というか、意外性がないというか。外見だけで判断しても何の問題もない奴で、なんだったか、確か総合格闘技部だったかに入っている。
な、意外性ないだろ。
「まさかこんなにいいとこを取っているとは思わなかった」
「なるほど」
俺と九条と天峰、東雲は中学時代からの親友だ、小学生のころは名前だけ知ってるような仲だったが、中学に上がってからいろいろあって親友になった。
高校もなんとなく4人で行けるとこ(俺と東雲は偏差値70超えてても問題なかったけど、九条と天峰が偏差値45がギリギリだったので選択肢はかなり狭い)を探していく中で、今の学校にたどり着いた。(九条や天峰にレベルを合わせようと思ったが二人の親からそれは申し訳ないと言われた)
私立明瞭実業高校、5年前にできたこの学校は全てにおいて日本一の高校を目指しており、そのために特殊技能を持った生徒を積極的に集めている。分かり易く言えば、学校の宣伝になりそうな奴を集めているのだ。
九条も天峰もテストの点数は悪いが決して馬鹿ではなく、評価の基準さえ合えば俺なんかよりずっとすごい奴だ。
九条はオタクなだけあってパソコン使うのがめちゃくちゃ上手いし(PCゲームのNDVD化なんてお手の物だ)天峰は音楽やってるだけあって芸術センスが高かった。
一般の学科試験での足切り点はエリート校も真っ青の100点満点中の95点、問題も難しく合格できるのはかなり少ない。その代り技能試験は学校側が認めれば筆記なしで合格できる。
二人はその実技テストでトップを取って合格した。
ちなみに、俺は電気科で東雲が機械科、九条が情報科で天峰はデザイン科だ。
おっと、昔のことを思い出してたら説明ばっかになっちまったぜ。
なんて考えていると。
「そういえば月城、生徒会の仕事はどうなんだ?もし余裕があるなら来週の土曜に大学生のチームと試合することになっているが一緒に出ないか?」
「あ、そうそう、僕も誘おうと思ってたんだ。こんど放課後ライブやるんだけど勇翔っち出れる?やっぱ勇翔っちが出てくれると盛り上がり方が違うんだよ」
東雲と天峰が部活の助っ人に誘ってきた。
「いや、遠慮しとくよ。うちの生徒会思った以上にハードでさ」
「そうか、残念だがまた今度誘うことにしよう」
「えー、つれないなー、まあ仕方ないか」
二人には悪いがここは断らせともらった。
めんどくさいんじゃない、ホントに忙しいのだ。
「うちの学校、頭おかしいとは思ってたけどここまでだとは思ってなかったぜ」
「え、そんなに大変なの?」
「あぁ」
だって生徒会に入って初めての仕事が【最近部活の数が増えてきて部室の数が足りなくなってます。至急新しい部室棟を作ってください】だ。
普通の学校なら一笑に付すものだがうちの学校は本当にやる。しかも業者を手配するんじゃなくて自分たちでだ。
学校側が言うには、歴史が浅いこの学校が就職試験でほかの学校に勝つには相当な何かが必要である。そこで生徒たちに現場を経験させておくのが目的であるそうだ。
言いたいことはわかる。でも手段が強引すぎるだろと突っ込まざるを得ない。
「部室棟の建築だったか、なかなかハードな仕事だな。それで、具体的には何をやってるんだ?」
ここで、これまで喋ってなかった九条がずいぶん久しぶりに口を開いた。
空気感半端ねえな。
「まぁ、俺は俺の仕事以外良く分かってねえけど、俺の仕事は人員の確保だな」
「人員?」
「一応声かけるのは建築科と電気科から20人ずつとデザイン科から3人、化学科から3人だな」
だがただ集めてば良いというものではない。ちゃんと資格を持っている奴じゃないとだめだ。
違法建築は絶対しないのがこの仕事の絶対条件なのである。
といっても、学生では取れない資格に関しては持ってる先生に頼ることになるのだが。
「大変だな、俺たちに協力できることがあったら何でも言ってくれ」
「うん、そうだよ。勇翔っち、僕デザイン科だから協力するよ」
「まあ勇翔のことだからそんなことでもすぐに片づけてしまうんだろうがな」
「違いない」
「だよねぇ」
「お前らなぁ」
なんだかこいつらとしゃべっていると大量の仕事に悩んでいたのが馬鹿らしくなってくる。
そんな感じでしゃべっていると。
「あ、あの月城先輩」
小さい女の子が話しかけてきた。
この一文だけ見ると何だか如何わしい感じになってしまうな、どうしよう。
「どうしたんだ高槻、何かあったのか?」
「ねえねえ勇翔っち、このやたら可愛い子誰?」
「まさかやっぱり貴様、裏切ったのか‼︎」
九条と天峰が凄い勢いで突っかかって来た。
まあ、天峰が言う通りこの女子は飛んでもなく可愛い、顔は凄く整っていて少し泣きそうな処もその可愛さを引き出たせている。更に身長は天峰より頭半分程小さい。まるで小動物みたいだ。
「そんなんじゃねーよ、こいつは生徒会の後輩で書記やってる」
「高槻ほのかです。あの、月城先輩」
「ん、なんだ」
「あの、その」
何か言いにくいことなんだろうか、高槻は言い辛そうに眼を泳がせている。
このしぐさを見てたいていの奴はドキッとさせられるが(いつもなら俺もその一人だ)なぜか今は、俺の中の臆病な部分が「続きを聴いてはいけない」と警鐘を鳴らせている。
いやな予感がする、だが最悪の状況になるとは限らないんだ、聞くだけ聞いてみるか。
「落ち着いて、ゆっくり言えばいいから」
「は、はい!」
俺の中の警鐘がさらに強くなっていく。やべ、やっちゃったかも
「やっぱ待
「会長がお待ちです。緊急でミーティングがあるそうです」
やっちまった