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玄関、エントランス編

 30分後、様々な装備に身を包んだ僕達は再度件のマンションの前に立っていた。


「よし! では各々の装備の確認を行う! まずは山田!」

「ふ、任せろ! まずはこれだ! おにぎりと焼き鳥、唐揚げ棒、それにコロッケにメンチ、更には

サンドイッチの卵、ハムミックスだ!!」


 食べ物だけじゃん!


「お前、ここに何しに来たんだ……」

「お前こそ。腹が減ってもやらんからな」


 ま、山田はそれでいいのかな? なんとなく。


「まあいい、じゃあ次は相沢だ」

「僕? 僕はペンライトと絆創膏、消毒と包帯とさっき添え木用の木片も拾っといたよ」


 完璧な安全対策だ。


「相沢。お前はここで誰か怪我でもすると思ってるのか?」

「え? ううん。ただの安全対策でしょ?」

「ん。お前はよくわかってる。今から、相沢衛生兵と呼ぼう」


 むしろ、皆、怪我の可能性とか気にしなさすぎじゃない?


 全く。


「じゃあ次はお前だな。小西」

「お前等に足りないものを俺は補充してやったぞ!」


 小西が出したのはただ一つ。


「これだ!」

「これって、木刀?」

「そうだ、お前等はここに何者かがいる可能性を除外している。一番必要なのは、攻撃力だ!」


 自信満々に取り出した木刀。


「でも、いつも思うけど、お前経験無しじゃん」

「ぐ、山田の分際で……俺が好きなのは剣戟! 剣道とかそんなちゃちなやつじゃないんだよ!」

「で、お前はそれだけ、と」


 流石にため息をつく山下。


 気持ちは分かる。


 始めにライトがないって言ってたのは何処の誰だよ、って感じになるよね。


「ぐ、じゃ、じゃあお前はどうなんだ、山下」

「ふ、よくぞ聞いてくれた! 俺は……これだ!」


 そのために準備していたのか、袋に入っていたそれを一気に地面にぶちまける。


「えーと……山下も似たようなものだと思うよ」


 出てきたのは防犯スプレー、水のペットボトル、ガム、チョコレート、ロープ、使い捨て手袋だった。


「この完璧な準備の何がおかしい!」

「お前は何処の登山をするつもりだ!」

「何を! ガムが生死を分けることもあるんだぞ!」

「僕以外誰もライト買ってないじゃん」


 ああ、なんて前途多難なパーティなんだ。


「俺は思ったんだが……携帯のライト機能を使えばいいんじゃないか?」


 僕の購入は軽く無駄になったようだ。


 2380円を返して欲しい。














「よし、じゃあ、いざ行くぞ!」

「って言いながら、山田に先行させるな、ビビりめ」

「違う、勇気ある隊員の先行偵察だ!」


 やってることは変わらないよね。


 そんなこんなでマンション内に侵入した僕たち。


 大分騒いでたけど、通報されたら即アウトだよね?

 その辺はどうするつもりなんだろ?


「山下、通報されたらどうする?」

「おお、そうだ。どうするつもりだ! バカやろう!」

「うるさい、バカ! そんな事は当然調査済みだ。この辺の工場は夜も稼働してるが、夜勤のスタッフは少ない。それにこの騒音だ。簡単に気づく奴はいない。それに近隣に住宅もない。ほら? 全く問題ない。それに何回かここに警察が来たとこもあるらしいが、全て通報者以外は逃走に成功してる」


 変な事言ってない?


「その状況て通報って……誰が?」

「そりゃ俺達みたいな、訪問者だろ?」

「何でわざわざ?」

「知るか。多分、目があったとかお化けが出たとか、大した理由じゃないさ、きっと」


 でも、ここで傷害事件とか起こってたら警戒地域になってたりしないか?


「結構、見回りとかくるんじゃない?」

「……早めにこなすか」


 なんて話を玄関のエントランスで行った。


 エントランス……と言っていいのかわからないが、玄関は窓や外が見えない作りになっており、今僕たちが外した玄関口から入る少ない光以外は僕のライト、皆の携帯の光しかない。


 何で、こんな不便な作りにしたんだ?


 郵便受けは幾つかが開いており、管理人室の入り口はドアが落書きだらけだ。


「まさに、死んだ建物って感じだな」

「そんな不吉なこと言うなよ」

「おい、郵便受けにこれがあったぜ!」


 山田が見せてきたのは、一通の封筒だった。


「未開封だぜ! よっしゃあけたれ!」

「いや、止めた方がいいんじゃない?」

「構わんのじゃないか? どうせここに戻ってくる奴はいないだろう。工事で破棄されるだろうし」


 木刀を両手に構える奴に言われても……なんか、一番ビビってる奴にしか見えないし……。


「おい、山田」

「なに?」

「一応、全て写真撮っとけ……何があるかわからんからな」

「怖いこと言わないでよ。何にもないただの廃墟何でしょ、ここ」


 合点承知! と、ばかりにパシャパシャと光が跳ねる。

 こんな暗くて、撮れてるんだろうか?


「じゃ、あけまーす!」

「周囲の警戒は任せろ」


 こんな周囲も見回せない所に警戒なんて出来るのか?


 そして封筒を開けた山田は……やや沈黙して首を傾げた。


「なんだこれ?」

「ん? どうした? 恋文でも発見したか?」

「古いな、お前は……どうせ領収書か何かだろ? お前には難しすぎたか、どれ、俺に貸して見ろ」


 山田から中の紙を取る山下。


「あー確かに訳わからんな」


 その紙を皆に向けて広げてみる山下。


 暗くて見えないじゃん。


 僕をみる……何、照らせって? 


 なら、初めから準備してよ。


「ええと……今、会いに行きます……って、何これ? これだけ?」

「ふむ、そのようだな。宛名は……無いな。差出人は……これも無しか。郵便受けは名前は残ってたか?」

「え? 知るかよ。適当に引っ張って回ったから、よくしらね」


 小西が気にしてたので、僕も気になって郵便受けを見に行く。

 山下が明かりが無くなって、一寸むっとしたみたいだけどらそんなの知らない。

 これは僕のライトなんだから。


「うーん。無いね。そもそも、全部閉まってるから

1から調べて回るのやだよ。山田、どの辺か位は覚えてないの?」

「えーそんな細かい事わかんねぇよ。大体この辺かな?」


 指さしたのは、6~8階のエリアの辺りだった。


「大ざっぱだ……流石は山田。記憶が俺らとはひと味もふた味も違う」

「うるさい! 見つけた俺をたたえろよな」


 結構な量だな。やっぱりいいか。


「なあ、相沢……」

「ん、何?」


 小西の言ったことは、よく言う、あのとき引き返しておいたら~の分岐点立ったと思う。後から本当にそう思った。


「宛名も差出人の何もない封筒に、これは入ってたんだ」

「そうだね。中身から考えると、メモやメールでもいい内容だね」

「悠長だな……この相手は、何か事件に巻き込まれていた可能性があると思う。ストーカーやなんかの……もし、その相手がここの現状を知らなかったら……ここで出会う可能性、ないか?」


 僕は旋律が走った。 

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