気まぐれ
「……魔法を知ってから二日目の夜。リクはもうあそこまで戦えるんだ……」
どこの誰に、話しているとも知れない男。
灼銀の髪に、灼眼。
黒のジーンズに、上はコートを羽織っていて、下の服がどんな服かわからない。
コートは膝下まであって、その背には、背丈と同じぐらいの異様な模様の書かれている大剣を背負っている。
場所は、リク達が戦っていた場所のフィールド外の空中。
おそらく魔法で虚空にとどまっているのだろう。
そしてそのまわりにも強力な認識阻害魔法が使われていて誰も気づく様子が無い。
真陽でさえも……。
男は真陽が作った認識阻害魔法を見破っていて、中をしっかり確認していた。
その上での発言だった……。
「にしても……。真陽も強くなったね……。昔に比べると」
すると、一振りの大剣が、その異様な模様に沿って、赤く輝く。
――ねぇ、マスター。なぜ雪を早くとかしたのです? 真陽とリクの戦いを邪魔しちゃいけないと思うのです――
「別にいいでしょ? 俺のかって。ただの……気まぐれ。にしても……気まぐれはホントにいい言葉だよ……」
男は空を見上げる。
そして、そこの空間に話しかける。
「そうだろ? 自由な白銀」
そこには【自由な白銀】こと赤砂カナが男と同じように虚空の空間に浮いていた。
「わかってたのね……【終焉を知らせる者】」
終焉を知らせる者……。
英名の中で一、二を争う強さ。
カナを自由の象徴とするなら、彼は、二つ名でも使われているラグナロクを意味するように、炎と死の象徴。
「リク……。大事に育ったね。大切に、それでいて暇が無いように……。楽しい生活だった?」
「……ええ。でも……」
カナは顔を伏せる。
何かを言いたそうにしているが、その言葉を飲み込む。
「これからが怖い? 命をかける世界で生きて行くから?」
「…………」
答えないカナ。
その代わりに首を横に振っている。
否定の意味だろう。
俺の質問には答えなくてもいいと思われる。
その生活から、きっとこちらで生きていける必要最低限の知力を得ているだろう。
だが、いつもの笑顔の顔だがどこか戸惑っているような表情が見え隠れしている。
「ねぇ……もど――」
「行かなきゃ」
「え?」
言葉をさえぎるようにして言う。
そしてカナに背を向く。
そのまま……歩き出す。
「これから空中散歩に出かけなきゃいけないから……」
「……う…………ん……」
納得できていない表情に変わるカナ。
男はそのことをわかっていたのだろうか?
そのまま歩き出して行った。
……振り返らないまま。
――いいのですか? マスター。空中散歩って言ってもまだ休憩中なはずなのですよ? それに今さっきの言葉は少しおかしいと思うのです――
「いい。俺は……久しぶりに見たかっただけ。昔の戦友と母とその子を……」
――おかしいということに対しては無視ですか……。それでも、見たかっただけじゃなくてちゃんと話したらよかったのにと思うのです……。久々の再開なのですよ?――
「いいでしょ? まだ……本当のことは言えない」
――相変わらず仕事バカなのです――
「そこは仕事熱心といってくれよ」
――それは少し違うと思うのです――
はたから見れば電波系?と思えるような会話をしながら、異様な模様のついた大剣を背負っている男の姿は闇の中に消えた……。
カナは、消えた彼のいた空間をしばらく見て、カナも同じようにその場から消えた……。
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