祝杯をあげろーー! いや、あげちゃダメですよ!?
「それより渡すもんがある」
「渡すもの?」
と僕は首をかしげる。
さっき話す事はすべて話して、その後も時間があったはずだ。
今になって?
「ああ~。勝負の決着ついちゃったもんね~。リクちゃんの勝ちで」
と、マナは納得したようで何度もうなずいている。
周りの反応はまた僕たちとは違う反応だった。
「一匹狼がプレゼントだと!?」
「我らの女神は凶暴な狼でさえも手なずけたのか?」
「さすがだ! 我らの女神!」
と、訳のわからんことを言う男たち。女子たちは……。
「私の妹にプレゼントなんて! だめよそんなの!!」
「リクちゃん! 受け取っちゃダメよ!?」
「私の妹を汚さないで!」
キリがどれだけ悪評価も持っているのかよくわかりました。
あとあなた達の妹でもないです。
なんでみんな外見で、人の許可をするんだろ?
外見よりも中身なのに……。
今はそんなことよりも渡すものとやらのほうが大事だが……。
「手ぇ出せ」
言われたままに手を出すと周囲からヤジがとんできたが、キリは気にしていない風だった。
「ほらよ」
手を重ねてきたと思ったら何かを渡された。
キリさんが握っていたのでちょっと生温かかった、金属だった。
そしてそれは、安全ピンのついたバッチであったことが分かった。
そのバッチには桜の花びらが書いてあった。
桜色の花びらが綺麗に描かれていた。
――とそこで……。
『はぁ!!!!????』
周囲のヤジがとばなくなると同時に驚いたとばかりに声を出し、体が硬直したクラスメートたち。
「え? なに?」
僕はその反応についていけず、全くよくわからなかった。
まだ、一日目だしね。
普通、一日目にこんなにハプニングは起こらないだろう。
なんで僕ばっかこんな目に会うんだろ……。
向こうの世界でも一日が長かったのをよく覚えている。
と現実逃避していると、マナがそのバッチの説明をしてくれた。
「リクちゃん。そのバッチはね~? この学年で一番強いですよって証なの~」
「ふ~ん。そうなんですか。……ん? ……へ!?」
つまり……。
「僕が一学年で一番強いってこと!?」
「うん~。やったね~」
親指を立てて、グットをするマナ。
周りの空気はそれを合図にはじけ飛んだ。
「我らの女神が一匹狼を倒した!?」
「おい! 酒を持ってこいーー!!」
「祝杯だー!! 今日は寝ねーぞ!!」
「「「「おお――――――!!」」」」
「ちょ、ちょっと待ってよ! たしかに僕はキリさんに勝ったけど、たまたまだよ!! っていうかお酒は二十歳になってからです!!」
必死に弁護や注意をするがただの一人の声に対し、何十人の声が上がっているのが聞こえるはずもない。
そんな中。キリが僕にさらに近づいてきて囁いた。
「今の内に出るぞ。困っていたんだろ」
僕は不本意ながらも、その指示に従った。マナの手を引っ張ると、マナは頷き、一緒に外に出た。
廊下にはそんなに人はおらず、学校の外にスムーズに出ることができました。
(キリさんがいたって事もあるけどね。きっと……)
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