揺する揺する
ちょっと時間さかのぼります。
「大丈夫、すぐ終わるから」
彼女ことリクちゃんは私がその場から少し離れると目を閉じた。
ウチはその言葉には信用できなかった。
だって今にも倒れそうなリクちゃんは苦しそうにしていて額には汗が流れていた。
――心配
この二文字が浮かぶ。
今日初めてあった人。だけど前にもあったことがあるような気がした。
でも思い出せない。
それにこんなに嫉妬しちゃうほど綺麗で、そのうえとても優しい人で、不思議な、でも心地よい空気を纏っていて、名前が天童リクという人をウチは知らない。
それでもリクちゃんは人には心配をあまりかけたくない人のような気がした。
だからこそウチは心配。
だってそういう人はたいてい無理をする。
自分ばかり責任を負って、まわりを頼らない人。
むしろ助けていておせっかいって言われてもいい人。
だから思った。
この不思議な空気を纏う人の力になりたい。
なんで思ったのか分からない。昔にもこんな人がいたけど……。
その人は初恋の人。
綺麗な銀色の髪で、銀色の瞳。優しくて、いつもみんなにからかわれていたけど子供のころだ。
そんなに気に留めなかった。
そしてみんなから好かれていた彼。
家が近所だったからよく遊んだ。
小学校まで一緒だった。
でも中学生になる入学式の前に魔法の力を感じ始め、この桜花魔法学校に入った。
全寮制だから中学以降は知らない。結局、告白はしていないままその恋は終わってしまった。
名前は……忘れてしまった。
大事な人なのに忘れるなんて……と思ったが忘れなければいけないとも思った。
彼とは住む世界が違うのだ。
住む世界が違っても結婚する人は多数いるが、バレたらその人の自分に関する記憶をすべて消さなければならない。
それだけは嫌。だから忘れるの。
そしてウチは今もどこかでこの世界の事を知らずに生きている事を願っている。
あとから儚い願いということがわかったが……。
にしても目を瞑ってから何分たつのだろうか?
長すぎる。
「あの……ハンクさん……」
「長すぎますね。一度止めます。彼女を起こしてくれませんか?」
「わかりました!」
彼女に駆け寄る。
肩に触れて揺らしながら声をかけてみるが応答がない。
「リクちゃん! リクちゃん!」
続ける。聞こえてないのか、全くの無反応。
揺する揺する揺する揺する揺する揺する揺する揺する揺する揺する揺する揺する揺する揺する揺する揺する揺する揺する揺する揺する揺する揺する揺する揺する揺する揺する揺する揺する揺する揺する揺する揺する揺する揺する揺する揺する揺する揺する揺する
「……ってマナちゃん!? 揺すりすぎ!! 首がガクンガクンいってる!」
「リクちゃん! 目を覚まして! じゃないともっと速くするよ!」
「それ以上早くしたら首とれるだろ! いますぐ辞めろ! いま保健室から呼ぶから!」
そう言って携帯を取り出すハンクさんをほおっておいて揺すりまくる。
そんな事を繰り返していると不意にリクちゃんの目が開いた。
ハンクさんちょっと言葉に素がでましたね。
誤字、脱字、修正点があれば指摘を。
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