帰りましょう!
僕たちの前に止まった部隊は腰の剣帯には統一された紋章の剣が納まっていて、全員が緑色の軍服のような服を着ている。
そしてやはりと言うべきか、その左胸の部分に全員が同じ紋章が刻まれている。
その紋章にはR,Aと書かれている部分がある。
「ええっと……R,Aって……?」
「……ロピアルズ」
あ、そっか。
『R』OPI『A』RUZUでR,Aか。
僕はまだ来て数日だけだけど、何度か出てきたその組織になるほどと思った。
確かこの国最大の組織だっけ?
「しかも警察会ですわ……」
「どうしてそんな事がわかるの?」
R,Aはロピアルズだけではないのだろうか?
「会にはそれぞれ決められた服がありますわ。それでいてあの方たちは軍服のような格好をしていらっしゃいますの、わかりますわよね?」
「それが警察会の格好って事?」
「そのとおりですわ。ただ……警察会はかなり愉快な方が多いと聞きますが……」
どういう意味だろう?
すると、先ほど全員に、止まれと叫んだ人がこちらを向いて歩いてくる。
だけどその顔に僕は見覚えがあったのでつい言葉を漏らしてしまった。
「あれ? シーヘルさん?」
「「「何ぃ!?」」」
みんな、僕の呟きを聞いていたようだ。
母さんとユウと白夜は驚いていなかったようだけど。
「リク! あいつと会ったことあるのか!?」
「シーヘルって警察会統治者のシーヘル・ツヴァイの事!?」
「【双竜の右翼】がどうしてここに!?」
みんな言いたいことがあったようだ。
だけど僕が聞き取れたのはこれだけだった。
とにかく僕はキリさんの質問に答えておく。
「えっと。シーヘルさんは僕にとても優しい人で、子供のころからよく世話をしてくれていたんです」
「僕に?」
「ええ。母さんはあの通り自由奔放で、ユウも血を濃く受け継いでしまったのでよく愚痴とかを聞かされました。それを続けていったらいつの間にか僕にだけ優しくしてくれて……。なんででしょう? ユウや……特に母さんにはとても厳しい人です」
そういえばどうして僕にだけ優しいんだろう?
キリや雑賀や妃鈴など複数人がこめかみを押さえている。
すると、シーヘルが母さんの前に足を止める。
「カナ様。任務は無事終了いたしました」
「あ♪ ありがと♪ そうそう、雁也ちゃん、今日大手柄だったから今月の給料を三割ほど増やしておいてね♪」
「了解いたしました」
この会話を聞いた瞬間。
カナと真陽と白夜と雁也以外が考えることを放棄してしまった。
「何だろう……俺には幻覚と幻聴が見える……」
「大丈夫だよキリ……。ウチも同じ……」
「妃鈴、俺の頬をつねってくれ」
「力加減ができませんがよろしいですか?」
「ガルム先輩……。明日、病院に一緒に行きませんか?」
「ああ。そうだな。今回の戦いで俺はどうもおかしくなったようだ」
「どうしてでしょう……わたくし、とても感激しておりますわ!」
「レナさん。感激しちゃいけないんです……」
感動しているレナにツッコム。
「ひどいじゃないみんな! 私がロピアルズの社長で――」
「「「それ以上は言わないで(いうな)(いわないでください)!」」」
「む~」
頬を膨らませる母さん。
だってあんな自由奔放な人がこの国最大企業の社長で良いのだろうか……?
よく安泰していますね……。
「でもカナちゃんが社長なのか~。こんな可愛い社長さんだって知ってたら俺はすぐに入ってたんだけどな!」
「あら、デルタちゃんありがと♪ 今からでも入る? 諜報会に♪」
「マジですか!?」
デルタが母さんに近寄ってそんなこと言ってるけど本気なんだかどうなんだか……ん?
「「「デルタ(さん)!?」」」
どうしてここにいないはずの人が!?
それに応えてくれるようにデルタは頭の後ろをポリポリとかきながら言った。
「いや~。最後の最後ぐらいこっちにきても――」
「……さっきあの人たちにつれてこられてた」
そう言って白夜が指さすのはロピアルズの人たち。
「びゃくやちゃぁぁん……」
泣き崩れるデルタ。
白夜はそれを無表情で虐げるようにして見る。
滑稽な絵だった……。
デルタが連れてこられたのは元と言ってもジーダスの、しかも幹部だったのだから仕方がないのだろう。
「お~お前ら。少し休憩したら幻魔や悪魔調べだ。……こんな夜中に悪いな~」
「いえ。良いですシーヘル様。何より今はここにいるみんなで言いたいことが……」
シーヘルの隣にいる男の人が発言した。
それにシーヘルは口をにやつかせた。
「ん? お前らもか? よし。言っていいぞ。責任は持たん」
「了解です。では……」
ザッと一歩前に出て、母さんの前に並ぶ。
「?」
そのことに母さんはハテナを浮かべた瞬間。
「「「一般人を巻き込んでいるとは何事ですか!!」」」
「ひゃぅぅ」
突然のロピアルズ警察会の団体の叫び声とも思える説教を母さんは耳を押さえて目をバツにした。
そして警察会の方々が言ったことにシーヘルはうんうんとうなずいていた。
「ちょっとまって~。私は元々リクちゃんに協力しようと思ってやってたのよ~。むしろ私たちがついで――」
「「「それとこれとは話が別です!!」」」
「ひゃぅぅ」
またもバツにする。
まぁ、確かにこれだけの兵力を母さんが持っていて、攻めていたら真正面から戦って普通に勝っていただろう。
だけど……。
「待ってください、みなさん!」
「? リク君? どうかしたのか?」
「シーヘルさん! 母さんは何も悪くないんです! 僕のわがままに付き合ってくれただけで……」
「それでもだ! リク君がそんな傷だらけに……?」
そこでシーヘルは何かに気づいたようだ。
何に気づいたのかわからない僕としては頭にハテナを浮かべるだけだが。
「リク君」
「はい……」
「髪、伸ばしたのかな?」
「え? いえ。これはこの指輪の所為で……」
そう言って指にはまっている指輪を見せる。
性転換する指輪だ。
シーヘルはそれに気づいたようで母さんに振り向き……。
「あ・な・た・は、自分の息子に何してんだぁぁぁぁあああっっっ!」
「ひゃぅぅぅぅ」
「し、シーヘルさん! この指輪には理由があって――」
「それだけでなく! 何を考えてリク君にヒスティマの事を教えたんですか!?」
「シーヘルさん! ヒスティマの事は自分で知って――」
「ああ、リク君! 辛かったよね! 大変だったよね! こんな自由奔放でわがままでいつもトラブルばかり引き起こす母と妹なんて放っておいて私の家に来なさい!」
「え!? なんでユウまで入ってるの!?」
ガバッと僕の体ごと包む。
シーヘルの首元までしか、僕の身長は無いので完璧に腕の中に埋もれてしまう。
ユウの抗議の声が入っていたがもはや聞いていないようだ。
「ししししシーヘルさん!? こんな人前で何やっているんですか!?」
「大丈夫! 私の家に住むことはきっとリーナも許してくれる! って言うかむしろ住めって言うはずだ!」
(さっきっから聞いていないんですけど!?)
顔を赤くしてなんとか抵抗するも魔力が残っていなくて力が出ず、結局、このままの状態になってしまった。
「おいシーヘル・ツヴァイ! お前なんてうらやま――ゴホン。なんていかがわしい事している! 俺とかわ――ゴホン。リクちゃんから離れろ!」
「「「…………」」」
みんなして雑賀を冷たい目で見る。
「そうだぞシーヘル! テメェばっかりズリィぞ!!」
「「「言いきった!?」」」
みんなしてデルタをバカでも見るような目で見る。
「黙れ外野!!」
「「とりあえず離せ!」」
二人の息がぴったりとあった。
「仕方ない……。リク君。いつでも私の家に来ていいからな。リーナにも言っておく」
そっとシーヘルは僕を離す。
名残惜しそうに……。
「い、いえ……。あの二人は僕がいないとどこまでも自由になってしまうので……」
さりげなく断っておく。
それにシーヘルはちょっと気持ちが落ちているような気がするのはきっと気のせいだろう。
そして母さんとユウが騒ぎ始めたのも気もせいだろう。
「とにかく、説教はロピアルズ本部に戻ってからにしましょう」
「えぇ。まだ続くの……?」
「当然です。所で……」
そう言うとシーヘルは僕の横を抜け、ソウナの前に移動する。
「あの……何か?」
ソウナもロピアルズ警察会統治者に緊張しているようで機嫌を伺っている。
シーヘルは一度、ソウナの後ろにいるフェデルを一瞥すると、右手を握って胸にあてる。
「あなたの父親……。フェデル・エンジェル・ハウスニルに祈りを……」
「――ッ」
ソウナは両手を口にあてる。
さっきまで流していた涙が自然とまた流れてくる。
「ソウナさん。フェデルさんを正式に弔いたい。悪魔の汚染を取りはらった後、葬儀をさせていただきませんか?」
「…………は、い……。ありが……とう………ございます……」
涙をまたながし、震えながら答えるソウナ。
まさかシーヘルから言われるとは思わなかったのだろう。
ソウナは足をくじかせ、膝で立っている状態になる。
僕は近寄って肩に手を乗せる。
「帰りましょう、ソウナさん」
「……ええ。ありがとう……リク君。でも……私には帰る場所が……」
「だったら!」
僕はソウナの腕を持って無理やり立たせる。
力強く。
しっかりと地面を踏ませる。
もうくじけないように――
涙を乗り越えていけるように――
「僕の家に帰りましょう! 家族が増えるのは大歓迎です!」
すべて笑顔で埋め尽くしてあげますから!
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