序章
12/12(水)修正版
――ここはどこだろう――
目を開けても何も見えない、聞こえない暗闇。
ただ一つだけ違った……。
その一点だけ光っていた。
青白く光っていた。
光が少しずつ近づいてきて、姿が目視できるようになる。
『こんにちは』
かなり綺麗な衣装に着こんだ人だったが、そんなのが霞むように、その女性は幻想的なまでに美しかった。
容姿端麗で見る者全て魅了してしまうかのような鮮やかな藍色の瞳に鮮やかな赤色の唇。
とても珍しい色で綺麗に輝いているように見える白銀の髪。
そして、すべてを優しく包み込むような優しい声の女性だった。
「あなたは……?」
『私? 私は……よくみんなに姫様って呼ばれてたわ。国の王女だったのにね』
女性は苦笑いしながら答える。
すると彼女は雰囲気を一転させ、眼を伏せた。
なにかあっただろうか?
興味本位で聞いてみた。
「あの……どうかしたのですか?」
『私はね……人を争わせないために国を作ったの。そして世界……『ヒスティマ』を統一して、もう争わない世界になったの』
ヒスティマ?
一体彼女は何を……?
『でもね……私が死んでしまったと同時に、悪魔が反乱をおこしちゃった。私が生きていたら、まだ退けていたかも知れない』
今度は悪魔と言う言葉が出てきて、何のことを言っているのかわからなくなってくる。
『悪魔を退治できた人もたくさんいたけど、全てを倒せることはできなかった……。私はもう亡き者。直接は手に出せない。だから……』
女性は手を差し出した。
『これを貰って。あなたなら絶対にできると思うの』
彼女の両手は僕の手を包み込むようにして取る。
「え……なに……これ……!?」
そのとき、彼女の手から熱が伝わってくる。
その熱は体の中を駆け巡るようにしてまわった。
熱はとても冷たかったり、熱かったり痺れたり……。
とにかくいろいろな感覚が体を駆け巡る。
『あなたはとても優しい人……。だからお願い。この私が平和にした世界をこれ以上壊されたくは無いの。これまで私に尽くしてくれたみんなの力を無駄にしたくないから……。あなたならできる。穢れのないあなたに私からの加護を……』
声が薄れていく。
すべてが暗闇に包まれていく。
もっと彼女に聞きた事は山ほどあった。
しかし、しだいに意識が薄れていき、なにも理解できなくなった。
彼女から貰った物……。
それは、『赤砂リク』という人の人生を元の運命に戻すための鍵であり、全ての人を救うための決められた運命に乗せられたのだ……。
『全てが始まるの。この心優しき子が、世界を救う……。また、悪魔が人に死を与えるのだから……。人に……この人生を強いることは嫌だったのに……。でも、彼ならば嫌とは言わずに言ってくれると信じて……』
聞こえなかった女性の言葉は、闇に消えた。
そして……リクは騒がしい朝を迎えた。