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〜プロローグ〜

「よっ!ほっ…と!」

流れるような斬撃を避け、僅かな隙に斬り込む

だが

「甘いっ!」

俺の剣の切っ先を、なんと蹴って軌道を変える

思わぬ対応に反応が遅れバランスを崩して、こける、無様に―

「っ痛っててて…コラ、親父!刃ぁ削いであるのわかってるからって今のは無しだろ!?」

「…実戦では何があるか分からない。それに…私ならばたとえ刃があったとしても今の対応は可能だ」

…そうなのである

このクソ親父、ムカつく事に実戦剣術(主に剣を用いた戦闘でなんでもあり)では右に出る者がいないと言われているほどの腕前なのだ

「剣の腕は確かにあがってきている。だがお前は心の浮つきが大きすぎる。実戦ではそれは命を落とす大きな原因になりかねん」

「実戦、実戦って…魔物が出るわけでもあるまいし、ましてや戦争なんて―」

「聖痕の抱擁、『ブレストコフィン』…か。それがどこまであてになるのか…」

「ったく!親父は生真面目過ぎだぜ?おまけに心配性だし…そんなんだからお袋に捨てられたんじゃねぇか?」

「なんだと?!そこに直れ!」

「っとやべぇ!じゃな!」

お袋の事になるとすぐキレやがるからな、親父

(心の浮つきが大きいよ〜ん)

心中で大爆笑しながら森のほうへ逃げる

剣の腕もさることながら、俺様は逃げ足も一級品なのだ!


「…まったく、誰に似てあんな…。…考えるまでも無い。フェリア、だな。産んですぐ別れたのだが…やはり男子は母親に似てくるものなのか」


私はため息をつき、空を見上げる

昼近くなった太陽が煌いて、そこに―

変わることなく、ブレストコフィンが陽炎のように揺らめいていた



「ったく!親父のクソまじめヤローめ。何が実戦だっての」

大樹の根っこに頭を預けて横になる

実際、この聖痕に包まれたこの大陸では争いごとが起こったことは無い

まぁ聖戦前からいた小っこい魔物はぽつぽつでるが、大型なのは殆ど駆逐されている…はず

「俺も歴学で習っただけだし、知らんけど」

寝返りをうって仰向けになる

空にはいつだってブレストコフィンが揺らめいている

俺が生まれるずっと前、俺の祖父さん(死んだが)曾祖父さん、そのもっと前――

聖戦…っていうのが終わる時に出来た…らしいこの壁みたいな魔導結界

邪を決して通すことの無いといわれている、この薄い壁

「外って、一体どうなってるんだろうな…」

再び寝返りをうって横になる

朝っぱらから稽古しっぱなしだったからか眠くなってきた

「少し、寝るかな…」

意識を混沌に預け、ゆっくりと――

…………ン…

(…何か、聞こえたか?)

…ズン…ズン…ズン…

「!」

地響きを立てて何かが近付いて来る!

さっ、と起き上がり剣を構えた俺の目に飛び込んできたものは―

「な、なんだ…?!トカゲ…?なんだよ、このでっかいトカゲは!」

身丈が俺の五倍はあろうかという巨体

凶暴性を誇示するかのような牙

…見たことも無い生物

「オオオオオ!」

ソレが咆えると空気がビリビリと震え、次いで周囲の温度が一気に低下する

(っこれは、魔法だと?!こんな化け物がっ)

とっさに、持っていた剣で切りかかる

魔法は完成前に潰すのがセオリー、痛いほど耳に刷り込まれてきた言葉……だが

ギィン、と音を立てて切っ先が折れる

刃の無い剣では傷一つ付けることは出来なかった

「っくそ!」

飛びのき、魔法の範囲外に逃げようとするが、

「オオオ!!」

魔法が先に完成した

足から先が凍ったように動かなくなる

「くっ!」

ゆっくり、ゆっくり化け物が近付いてくる

(ちっ!ゆっくり味わうおつもりかよっ!)

ああ、くそ!こんなことなら親父の話ちゃんと聞いとくんだっ――

「ボウヤっ!伏せな!」

「えっ――」

不意な声と共に目の前で爆発が起こる!

ソレは化け物をなぎ倒し、ついでに俺も吹っ飛ばした

「ったたた。なんなんだいったい!」

一瞬、意識が飛んだ

痛む体を無理やり起こして化け物がいた方を見る

――戦っていた

先ほどの爆発の赤にも負けないような真紅の髪を煌かせ

健康的な肌色を美しく躍動させて

女が、戦っていた――

爆炎を伴う剣閃が化け物の首を薙ぎ、弾き飛ばす

圧倒的な、強さ

彼女はしばらく化け物を観察していたが、動かなくなったのを確認するとこちらに向き直った

「大丈夫かい、ぼーや?」

年は俺より5、6は上だろうか?

ボーイッシュに切りそろえられた綺麗な髪と整った顔立ち

面積の比較的少なめな服からこぼれんばかりに己を誇示する双丘

ソレはまるで食べごろの果実のような――

「どこ、見てんだい?」

にっこり、と笑って睨む彼女(器用なヤツだ

「あ、いや、…あそうだ。助けてもらってありが―」

…ではなくて

「そ、そうだ!なんだ!何なんだよ、アレは?!」

さっきの化け物を指して言う

「ああ…ありゃ外から来た『リュウ』ってヤツさ」

「リュウ…?」

さらり、と

とんでもない言葉を聞いた気が…

「まぁ、でかいトカゲみたいなもんさ。魔法使うんで、ちと厄介だけど」

「…へぇ。………って外だって?!」

「え?…あっやばっ!」

「おいっ!外って何だよ?!聖痕の外ってことか?!」

「あ〜…いや〜…その〜…」

「どうなんだよっ!なあ!」

「あ〜!うるさいっ!つっても放置して後々騒がれても面倒だし…ばれてエイレンに説教されるのも癪だし…」

「おいってば!何ごちゃごちゃ言ってるんだよ!あんた、聖痕の外に出られんのか?!」

「ああ〜〜!!もうっ!」

と、と跳ねて彼女は俺の腕を掴み、

「いいや!私、馬鹿だし!いくら考えても無駄だ!エイレンにどうするか訊こう!…いくよっ

「へっ」

視界が一瞬揺らぎ、次の瞬間には空を飛んでいた

「なっなっ!?」

「フフ…ぼーや!名前は?!」

「なんだって!?」

「名前だよ、名前!」

「はぁ?!……フェイトだよ!」

「へ〜!何だか私と似た名だね!」

「あんたは何て言うんだ!?」

「ん〜私かい!?私はフェ・リ・ア!フェリア=ランロード!」

「っ?!」


空を、聖痕を飛び出す

そこは漆黒と常緑の世界――

俺は、フェイト=ランロードは

この世界にやってきた

長い付き合いになる、この若作りの馬鹿お袋とともに――




どうも虎児です。

ファンタジーものですね。

爆裂かあさんです。

この手の話は結構好きなので今後書き込んでいくかもしれません。

プロローグなので名前しか出てこない人もいますからね…先が無いと「なんのこっちゃ?」です;

これからもよろしくお願いします。

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