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送り犬

作者:
掲載日:2026/05/05



「山で犬がついてきたら、転んだらあかんよ」


 祖母は、その話が好きだった。


「立ち止まったり、振り返ったりもしたらあかん。おんなじ速さで、落ち着いて、歩いて帰るんやよ」


「なんか、あかんあかんばっかりやなあ」


 そう返すといつも祖母は笑った。


「山のもんには山のもんの、決まりごとがあるんやろなあ」


 そして決まってこう続ける。


「ええか、千春ちはるちゃん。もし、山で送り犬に出会うたら、ちゃんと言うことを聞くんやよ。そないしたら、おばあちゃんのじいちゃんが送ってもろたみたいに、犬は帰りまで守ってくれはるからな」


 ◇


 祖母の笑い方は、もう思い出の中にしかない。


 三回忌の法要が終わった。読経を終えたお坊さんを見送ったあとも、家の中はまだ落ち着かなかった。


 仏間には座布団がいくつも重なり、台所からは湯呑みの触れ合う音がして、大人たちの声が廊下まで満ちている。

 祖母の思い出話はいつのまにか、親戚たちの近況報告に変わっていた。


 千春は、仏壇の前に置かれた写真をちらりと見た。写真に映る年配の女性は、少しすました顔をしている。

 千春の知っている祖母は、おしゃべりで、目尻に皺を寄せてよく笑うような人だった。


 年の近い従姉妹たちは、皆スマホに目を落としている。とりあえずで付けられているテレビも、観る気にはならなかった。


 会食まで、まだ時間がある。


 外の空気を吸いたくなった。


 千春は、台所にいた母に「少し歩いてくる」とだけ告げた。母は、並んだ湯飲みにお茶を淹れながら「気をつけてね。暗くなる前に帰るんやよ」と言った。


 祖母の家の裏手には、山際へ続く細い道がある。


 昔は、ここが妙に怖かった。

 けれど今見ると、畑へ出るための、踏み固められた土道でしかない。


 風に擦れる葉の音を聞きながら、日が傾きかけたその道を行く。


 角を曲がると、祖母がよく手入れをしていた畑の跡が見えた。草は伸び放題で、もうあの頃の名残はない。


 畑の脇には、大きな岩がある。踝ぐらいの高さの、平らな岩だ。そこは、幼い頃の千春の特等席だった。

 あそこに座って、よく祖母の畑仕事を見ていた。


 祖母は、屈みながら、動き回りながら、千春が退屈しないよう、いろんな話をしてくれた。


 そのなかでも、祖母が何度も話してくれたのが『送り犬』だった。

『おばあちゃんのじいちゃんも犬に送られて帰ってきたんやよ』

 祖母はいつも、少し得意そうにそう言った。


 気付けば岩に視線を向けたまま、足が止まっていた。


 ──戻ろう。


 踵を返した、その一歩目で、靴先がなにか硬いものを掠めた。


「……あれ」


 見下ろすと、足元に木の根が張り出している。


 ──こんな道だったっけ。


 千春は顔を上げ、あたりを見回した。

 いつの間にか、薄暗くなっている。


 さっきまで背にしていたはずの祖母の家の瓦屋根が見当たらない。

 おかしい、と思って視線を巡らせる。今度はあの畑がない。あの岩も、どこにもない。


 あるのは、黒い木々と、湿った土の匂いだけだった。


 スマホを取り出す。画面はついた。しかし。


「圏外? なんで……?」


 母に連絡しようとした指が止まる。

 かわりに地図アプリを開いてみたが、現在地はいつまで待っても表示されなかった。


 前後左右、どこを見ても覚えのない景色だった。視線を空へ逃がす。


 月が出ていた。

 まだ夕方前のはずなのに、不自然なほど明るく、低く、白い月。


 それが──三つ、空に浮かんでいた。

 どれもが細く欠けていて、木々の上に横一列で並んでいる。


「……え」


 喉の奥がすうっと冷えた。


『夜の山は怖いで、絶対に近付いたらあかん。奥のほうには、ナンジもおるんやからね』


 ふいに、祖母の声を思い出す。


 難しい事と書いて、ナンジ。

 祖母はそう教えてくれた。山の奥にいて、人を惑わせるものなのだという。


 妖怪か、お化けみたいなものなのだと思って聞いていた。古い昔話の──子どもに山へ入るなと教えるための、教訓の一種として。


 ──なんでよりによって今、それを思い出すのか。


 そう思って思わず一歩下がったとき、背後で、落ち葉が沈む音がした。


 一度ではなかった。


 た、たん。た、たん。


 地面を踏む音が続く。

 重い音ではない。

 人間のそれとも違う。


 千春は息を止めた。


 獣だ、と思った。


 ナンジの話は吹き飛ぶ。現実的な恐怖のほうが輪郭を持った。

 猪か、鹿か。熊だったらどうしよう。


 いずれにしても、背後にそれがいる。そう思うだけで、身がすくんだ。


 なるべくゆっくりと、首だけを後ろへ向ける。


 暗がりの奥に、金色の目が二つあった。


 視線がぶつかる。


 姿ははっきりと見えない。月明かりが黒い毛並みの輪郭だけを細くなぞっていた。


 ──犬?

 けれど、その目は、千春の腰よりも少し高い位置にあった。


「おまえ、道を外れたな」


 低く、くぐもった声が響く。


 千春は声のしたほうを探した。けれど、それらしい人影は見えない。

 そうしているうちに、犬が歩み寄る。


「どこを見ている」


 声は、目線より下──落ち葉を踏んで近づいてきた獣のほうから聞こえていた。


 千春は、喉を動かした。


「犬が、喋ってる……?」


「おまえたちは、吠えれば逃げるだろう」


『ええか、千春ちゃん。もし、山で送り犬に出会うたら──』

 祖母の声が頭の底で蘇る。


「……送り犬?」


「そう呼ぶ者もいる」


『ちゃんと言うことを聞くんやよ。そないしたら、帰りまで守ってくれはるからな』


「家まで送ってくれるの?」


「そうだ。送る」


「……ありがとう。助かる」


 言い終えてから、千春はようやく自分の膝が震えているのを知った。


 怖い。

 けれど、ひとりではない。知らない山の中で、家まで送ってくれるものがいる。それだけで、どうにか足を動かせそうだった。


 でも、確か、送り犬は──


「礼を言われる覚えはない」


 脅すでも、怖がらせるでもなく、犬は淡々と続けた。


「転べば食う」

 

 ──そうだ。 送り犬は、ただ人を守ってくれるものではない。


 千春は足元を見た。

 木の根が、湿った土から太く盛り上がっている。濡れた落ち葉がその上に積もり、足元が良いとは決していえない。


 ──でも、転ばないだけなら。きっと、気をつければ。


「……転ばなかったら、帰れるんだよね?」


「そうだ」


 犬は、迷いなくそう答えた。

 千春は息を吸ってから、言った。


「わかった。……あ、私は千春。よろしくね」


 一拍、沈黙が落ちた。


「ちはる」


 犬は、聞き慣れないものを嗅ぐように、そう繰り返した。


「それはなんだ」


「名前だよ。私の名前」


「なぜ、それを教える」


「え? お世話になるから、かな」


 返事はなかった。

 ひとまず歩き出そうとして、すぐに足が止まる。


「えっと……どっちに進めばいい?」


「月の下へ向かえ」


「月って……三つあるんやけど」


 金色の目が、夜空へ向いた。


「真ん中だ。あの下に、道の切れ目がある。そこまで行けば、帰れる」


 そうは言うものの、犬は前には出なかった。


「……先導してはくれないの」


「それはできない」


 短い返事を受け、足を踏み出す。数歩進んだところで、千春は口を開いた。


「あの」


「なんだ」


「名前は、なんていうの」


 木々の枝が揺れ、かすかに鳴った。


「ない」


「ないの?」


「呼ばれたことがない」


「じゃあ、なんて呼べばいい? 『送り犬』って呼ぶのは長いし」


「呼んでどうする」


 千春は足元を見たまま、濡れた落ち葉に足を取られないように一歩進んだ。


「必要なときとか、呼びたいときに、呼ぶんやと思うけど……」


 送り犬は黙っていた。返事はないが、軽い足音は半歩分後ろから規則正しくついてくる。


 向かう方向には、木立のあいだを抜ける細い一本道が続いていた。

  右も左も同じような暗がりで、振り返っても、今来た道さえ、もう見分けがつかなかった。


 心細さを振り払うように、千春は口を開く。


「ねぇ。ここは、どこなの。どうして、月が三つもあるの」


「前を向け。話している暇はない」


「でも──」


「おい、そこは踏むな」


 突然、声が鋭くなる。千春は出しかけた足を反射的に止めた。


「右に寄れ。そこは足が沈む」


 言われたとおりに右へ寄る。今まさに踏もうとしていた場所に、水を含んだ土がぬらりと光っていた。

 知らずに踏んでいたら、足を滑らせていたかもしれない。


「……ありがとう」


 言ってから、千春はすぐに口を押さえた。


「礼を言うなと言った」


「そうだった、ごめん」


「謝るな」


「それもあかんの?」


「前を向いて歩け」


 千春は、少しだけ笑ってしまった。

 ふ、と息が漏れて、肩が小さく震える。


 笑っている場合ではない。

 どこか得体のしれない場所にいて、足元は暗く、月はおかしく、背後には転べば自分を食べる犬がいる。


 それでも、礼も謝罪も律儀に止めてくる送り犬がおかしくて、張りつめていたものが少しだけゆるんだ。

 

「笑ってごめん」


 そう言うと、半歩後ろの気配が、わずかに遅れた。

 怒ったのか、呆れたのか、それとも何も思っていないのか。振り返ってみても、その目からは何も読めなかった。


 千春は前を向き直った。話していたほうが、気が紛れる気がした。


「おばあちゃんが、よく送り犬の話をしてくれた。おばあちゃんのおじいちゃんも、送ってもらったことがあるんやって」


 息を吸って、すぐに続ける。


「送り犬は、決まりごとを守るって聞いてる。だから、私が転ばなければ、無事に送ってくれるんやよね」


 犬は答えなかった。


「それにね──」


 ぱき、と木の枝を踏んだ音が響く。


「おばあちゃんからとっておきのことを聞いてるから、私、大丈夫な気がする」


『ええな、千春ちゃん。犬は賢いから、言葉のほうに合わせてくれる。もし転んでしもたときは──』


 その先を思い出しかけたときだった。


「足を上げろ」


 背後から声がした。

 千春は慌てて足元を見る。


 けれど、声が届いたときには、もう遅かった。


 踏み出した足のつま先が、落ち葉の下に隠れていた木の根に引っかかった。


「あっ」


 足だけが止まり、身体だけが前へ行く。

 視界がぐらりと傾き、白い三つの月が滲んだ。


 ──転ぶ!


 千春は反射的に手を伸ばした。掴めるものは何もない。

 もう片方の足でどうにか踏ん張る。


 靴底が濡れた落ち葉を滑り、片膝が地面すれすれまで落ちた。


 転んでは、いない。

 転んでない。


 胸の中で何度もそう繰り返しながら、千春は大きく息を吐いた。


 遅れて、背後の音に気づく。


 かち、と、何か硬いものが鳴った。


 音の方を振り向く。暗がりの中で、炯々と光る金色の双眸が、じっとこちらを見ていた。


「……危なかったな」


 送り犬がそう言うまでに、ほんの少しだけ間があった。その声は、低く、静かで、足元を示すときと変わらない声だった。


 けれど、それを追いかけるように、かち、かち、とまた硬い音が鳴った。


「……今の、なに」


 送り犬は答えなかった。


「歯?」


 かち、と、もう一度だけ音がした。


「前を向け」


 送り犬は、なにごともなかったかのように続ける。


「まだ足元が悪い」


 千春は前を向いた。けれど歩き出してからも、さっきの音が耳の奥から消えなかった。


 ◇


 歩くうちに、足元の悪さが少しずつ薄れていった。


 土の上を這う木の根が減り、濡れた落ち葉もまばらになる。かわりに、白いものが木々のあいだから流れ込んできた。


 霧だ。


 はじめは足首のあたりをひやりと撫でるだけだったそれが、いつのまにか膝の高さまで満ちている。


 道は平らになった。足元だけなら、さっきより歩きやすいはずだった。

 けれど、千春は、かえって歩きにくくなった気がした。


 霧のせいだけではない、目印になるようなものがないのだ。


 道なりに、同じ木が続いている。

 進めば、何度も同じ曲がり角が現れる。

 同じくらいの幅の道が、霧の奥へ伸びている。


 どれだけ歩いても、進んでいる感じがしない道だった。


 ふと、空を見上げる。

 月が、二つになっていた。


「……月、減ってる」


 千春は思わず呟いた。


 三つ並んでいたはずの白い月が、ひとつ消えている。

 残った二つは、さっきより低いところに浮かんでいた。木の枝にかかりそうなほど低く、細く欠けたまま、こちらを見下ろしている。


「歩け」


 送り犬が言った。


「ここでは、足を止めるな」


「え? 転ぶな、じゃなかったの」


「それだけではなくなった」


「止まったら、どうなるの? ……食べる?」


「転べば食べる。止まれば、おまえが戻れなくなる」


「戻れなくなる?」


「そうだ」


 千春は眉を寄せた。


「……あかんこと、増えるんやね」


「おまえが帰るための決まりだ」


「おまえじゃなくて、千春」


 軽く抗議の声を上げてみる。

 犬はしばらく黙っていた。互いの足音だけが続く。


「名を呼ぶ必要はない」


 ようやく返ってきた声は、やっぱり淡々としていた。


「必要とかじゃなくて、私の名前なんやってば」 


 歩き続ける。

 霧の中は、どこかに水があるような匂いがした。沢の音はしないのに、湿った空気だけが肌にまとわりつく。


 道の左手に、ぽう、と淡い明かりが浮かんだ。


 千春は息を呑んだ。


 提灯のようにも見えた。

 家の窓明かりのようにも見えた。

 あたたかそうな、やわらかい明かりだった。


 それが木の幹のあいだに、火の玉のように揺れていた。

 風もないのに、ゆらゆらと形を変えている。近づいたように見えた次の瞬間には、霧の奥へと少し遠ざかる。


 綺麗だと思った。

 視線がついそちらへ向いてしまう。


 その明かりの下に──白いものが見えた。

 人の手だった。いやに滑らかな、作り物のような質感の手。


 肘から先だけが、霧の中に浮いている。指がゆるく曲がり、こちらを招くように、ゆっくりと動いていた。


「送り犬……あれは、なに」


「ナンジだ」


 千春は、喉の奥が乾くのを感じた。


「あれが、ナンジ?」


「構う必要はない」


「こっちに来る?」


「あちらからおまえに触れることはできない」


「じゃあ、大丈夫なの?」


「おまえがあの手に触れれば、連れていかれる」


 千春は、白い手から目を逸らした。


 あちらからは触れてこない。

 でも、こちらから触れれば、連れていかれる。


 襲ってこられても、もちろん困る。でも、ああして手招いて、こちらから触れるのを待っている、というのにも、ぞっとした。


 立ち止まれば帰れない、というのはそういうことか、と遅れて理解する。

 あれに魅せられてはいけないのだ。

 明かりを、どんなに綺麗だと思っても。


 霧の奥で、その明かりがもうひとつ増えた。


 それから、またひとつ。


 ぽう、ぽう、と、道の左右にゆらめいて並ぶ。


 どれも遠すぎず、近すぎない。それが、歩くたび少しずつ位置を変えて、視界に入り込んでくる。


「見るな」


「そうしてるつもりなんだけど……目に入っちゃう」


「前だけ見ていろ」


 前。

 言われて、千春は無理に視線を戻した。

 道の先は、二つに分かれていた。


 右の道は、暗かった。

 覆いかぶさるような木々が並び、霧も濃い。

 足元には黒い泥が溜まっているようにも見えた。


 左の道には、明かりがあった。

 黄色く、やわらかい明かり──おばあちゃんの家の台所に似てる。そう思った時だった。


 湯呑みが触れ合う音がした。

 畳と、線香の煙の匂いがした。

 見知った親戚たちの気配がある気までしてくる。


「右だ」


 送り犬がそう告げるが、千春は足を止めかけた。


「でも、左に明かりが」


「右だ」


「おばあちゃんの家みたいに見える」


「見るな」


 そのときだった。


「千春ちゃあん」


 霧の奥から、声がした。

 千春の胸が、きゅっと狭くなる。


 祖母の声だった。


 写真の中の、すました顔ではない。

 畑で土を払いながら、千春を呼んでいた頃の声だった。語尾が少し伸びて、やわらかくて、聞くだけで肩の力が抜けるような声。


「千春ちゃん、こっちやよ」


「おばあちゃん……?」


 口から、声が漏れた。分かれ道で、足が完全に止まる。 


「止まるな」


 背後から、送り犬の声が飛ぶ。

 それでも、左の道に目が釘付けになった。


 明かりの下に、誰かの影が立っている。

 はっきりとは見えない。けれど、腰を少し曲げた立ち方に、見覚えがあった。


「千春ちゃん、柿をむいたからおいでぇ」


 足が、一歩、左へ出る。


「おい、だめだ」


 犬の声が鋭くなる。

 けれど、それはどこか薄い膜越しのように聞こえた。


 眼前の霧の中から、白い手がゆっくりと伸びてくる。 


 もう一歩足を踏み出したときだった。

 静寂を切り裂くような鋭い咆哮が、背後から耳に突き刺さった。


 千春の身体が咄嗟に跳ねる。


 犬の吠え声だった。

 その声に、明かりがぐらりと揺らいだ。

 祖母の声が途切れる。


 けれど、すぐにまた、霧の向こうで笑う気配がした。


「千春ちゃああん」


 呼び方が、少しだけ伸びすぎていた。


 ──ちがう。おばあちゃんじゃない。


 こちらに伸びている白い手が、上向きに掌を開いた。

 『おまえが触れれば、連れていかれる』そう言った犬の声が蘇る。 


 ──そうだ。あれに触ってはいけない。


 ぞわぞわとした嫌悪が身を這う。

 触れてはいけない。わかっている。

 なのに、足がまた一歩、前へ出た。


 どうしても、白い手から目が離せなかった。


「おい」


 自分の手がいつのまにか持ち上がっていることに、千春は気づかなかった。


「おい!」


 白い指が、千春の指先を待っている。

 触れるまで、あとほんの少し──


 犬の爪が、土を削る音がした。

 背後の気配が、ふいに濃くなる。 


「ちはる!」


 低い声が、霧の中のどの明かりよりも近くで鳴った。


 ──はじめて、名前を呼ばれた。


 千春の手が止まる。 


 白い手の指が、自分の指先とほんの少しの隙間を開けて、空を掻いていた。

 目の前のその光景を、千春はようやくはっきりと理解した。


 慌てて、身体ごと手を引く。呼吸が浅くなり、肩が上下した。

 なにに対してかわからないまま、思わず首を振る。


 暗闇の明かりは、変わらず綺麗だと思えた。

 祖母の家の気配も、まだそこにあるように感じられる。


 でも。

 千春は後ろを振り向いた。

 暗がりに浮かぶ金色と目が合った。犬を呼ぶ。


「送り犬……」


 そうしてやっと、落ち着く気がした。

 硬い喉に唾を追いやる。

 目を閉じて、一度、深呼吸をした。


「千春ちゃあん」

 

 まだその声は聞こえた。

 けれどもう、祖母のものだとは思わなかった。


「行くぞ。右の道だ」


 犬の声に従う。

 覚束ない足取りで、それでもどうにか歩みを進めた。


 まだあの歯の音も、耳の奥に残っている。

 転んでもいけない。

 息を詰めて、慎重に歩く。

 走らない。

 止まらない。


 通り過ぎてからも、ナンジの手や声は千春に向かって伸びてきた。


 自分を惑わせようとしているのだとわかっていながら、はらはらとして落ち着かなかった。


 耳を覆いたくなったとき、背後の犬が、少しだけ横へずれた。千春の真後ろではなく、霧と千春のあいだに割り込むようにして歩き始めたらしい。


 ときおり、犬の低い唸りが足元を這った。

 そのたび、霧の奥では、明かりが細く震えていた。

 送り犬が、近づけないようにしてくれているのだとわかった。


 右の道へ入ると、霧は急に濃くなった。

 ナンジの明かりもなく、ただ薄暗い。


 背後で、犬の足音が続く。

 しばらく、どちらも何も言わなかった。

 

 千春は一歩、一歩前へ踏み出す自分の足を見下ろしながら、さきほどのことを思い出していた。


 今になって、なぜあんなふうに惑わされたのかと思う。自分がなにをしようとしていたのか、考えるだけで胸が冷えた。


「……もし、ナンジに触ってたらどうなってたの」


 ようやく声が出た。


「連れていかれる」


「ナンジに?」


「そうだ」


「連れていかれたら……食べられるの?」


「ナンジは人を食べない」


 スニーカーが湿った音を立てる。泥は見た目ほどに深くない。けれど、踏むたびに靴底に嫌な感触が伝わった。


「じゃあ、連れていって、なにをするの」


「あれは、人の心を欲しがる」


「心を?」


 聞き返しながら、犬のほうを振り向く。

 その向こうで、さっきの明かりが遠く揺れた気がした。千春は慌てて顔を背け、また前を見た。


「欲しがって、どうするの」


「わからない」


「送り犬も知らないの?」


「理解ができない」


 送り犬の声には、迷いも嫌悪もなかった。ただ、本当にわからないものをわからないと言っているだけの声だった。


 しばらく進むと、霧が薄くなり始めた。

 木々の影もまばらになり、足元の泥も砂に変わっていった。


 空を見上げる。


 二つの月は、千春の目線の高さにあった。

 さっき見たときよりも、低くなっている。


「月が落ちる前に行かなければならない」


 送り犬が言った。


「落ちたら帰れないの?」


「そうだ、道が閉じる」


 月をもう一度見る。

 残りどれほどで落ちるのかはわからない。けれど、はじめて見たときより、低くなっていたのは確かだ。


 ──急がないといけない。 


 霧の名残が、足元をゆっくり流れていく。


「……送り犬。さっき、助けてくれてありがとう」


「礼を言うなと言った」


「そうだけど……名前、呼んでもらえて助かった」


 続く足音が、少し遅れた。


「……呼ぶ必要が、あったな」


「うん。呼んでくれなかったら、どうなってたかわからない」


 それだけ言って、千春は黙った。


 少しだけ、胸の奥が変なふうに痛かった。

 怖かったからか、危なかったからか、それとも犬に名前を呼ばれたからか。自分でもはっきりとはしなかった。


 ◇


 道の先が、白く明るくなっていた。


 夜明けではない。月明かりとも違う。霧が晴れた向こうに、砂のような白い地面が広がっていた。


「ここから先は、振り返るな」


 送り犬が言った。千春は振り返りかけて、すぐに思い直した。問いだけを投げる。


「また、決まりごと?」


「そうだ」


 振り返らない──それは、今までで一番難しいことのように思えた。

 そう思ったそばから、背中がひどく心細い。千春は唇を引き結んだ。


 ここに来るまで、千春は金色の目がついてきていることを何度も確かめていた。暗がりの奥に、黒い毛並みの輪郭が見えるのも。

 今度は、それができなくなる。


「……わかった。でも、話しててもいい?」


「なぜ」


「黙ってると、怖くなって振り返りたくなるから」


「……それで歩けるなら、そうしろ」


「えっと……送り犬は、ひとり──じゃなくて、一匹だけなの」


「そうだ」


「あのね、おばあちゃんのおじいちゃんも、送り犬に送ってもらったって聞いてて……覚えてたりする?」


「一人一人を覚えてはいない」


「そっかぁ……その人ね、転んだんやって。でも、送り犬が見逃してくれたんやって聞いてる。だからうちでは、送り犬は怖いもんじゃないって、そう伝わってるんだよ」


 祖母の声が、耳の奥で笑う。


『犬は賢いから、言葉のほうに合わせてくれる。もし転んでしもたときは、「疲れたから、腰掛けただけや」って言うんやよ』

『おばあちゃんのじいちゃんは、そう言うて見逃してもろたんやからね』


「……あの男か」


 ややあって、低い声が言った。

 言葉は続く。


「声をかけただけで、なにもないところで腰を抜かし──転んでいない、腰掛けただけだと泣いて縋った男」


「うん?」


「あれは、あまりに見苦しくて、食う気が失せただけだ」


 千春は言葉を失った。

 とっておきの抜け道だと思っていたものが、手からこぼれ落ちる。


「え? じゃあ、たまたま? 決まりごとの、穴とかではないの」


「そんなものはない。転んだら、食う。そうでなければ送る。それだけだ」


 聞いていた話と違う。

 伝えられてきたものなんて、そんなものかとは思いつつも、千春は息を吐いた。


 送り犬は、転べば食べる。


 けれど。


 ナンジから引き戻してくれたのはこの犬だった。

 正しい帰り道を示し、注意を払って送ってくれる。

 怖いと言えば、今みたいに会話にも付き合ってくれる。

 送り犬が千春を帰そうとしているのも、きっと本当なのだと思った。


「怖くなったか」

 

 黙っていると、犬が淡々とした声音で訊ねた。


「怖いよ」


 千春は正直に言った。


「でも、信じられる」


 言うと、自分のなかでも、その信頼がしっかりと輪郭を持った感じがした。

 気を取り直して前を向く。眼前に広がるのは、白い砂礫地だった。


 細かな砂と小石ばかりの地面が、月明かりを受けてぼうっと光っている。

 木も、草も、岩もない。


 さっきまで足元にまとわりついていた霧も、いつのまにか晴れていた。


 明るい。

 目が眩むほど、明るかった。


「また全然さっきと雰囲気の違うところだね」


「ここは足場が崩れやすい、気をつけろ」

 

 送り犬がそう言ったそばから、踏み込んだ場所が小石を散らして崩れた。一歩踏み出すたびに、靴底がざり、ざり、と音を立てる。


「あっ、月が」


 空に浮かぶ月が、ひとつになっているのに気付く。

 細く欠けたままの白い月が、低いところに浮かび、白い砂の上に薄い影を落としていた。


「あんなに落ちちゃってる……」

 

「急いだほうがいい」


 送り犬が言った。


「だが、走るな」


「わかってる」


 転んではいけない。送り犬に食べられる。

 立ち止まるのも、今は間に合わなくなるからだめだ。

 振り返るのもいけない。これは、新しい決まりごと。


 ひとつずつ意識を強める。

 前を見て、走らない。振り返らない。

 小石を踏まない。足を取られない。


 白い砂礫地は馬の背のようになだらかな丘になっていた。その上に、二本の木杭が立っている。


「ねぇ、送り犬。あそこ、なんか、ある」


 返事を待つより先に、その間に何かが渡されているのがわかった。


「……綱、みたいなやつがある」


 古びた太い綱が、二本の杭のあいだに低く張られていた。ところどころに白い紙のようなものが結ばれていて、風もないのに、かすかに揺れている。


「あれをくぐれ」


 送り犬は続ける。


「くぐれば、帰れる」


 ──帰れる。

 その言葉を聞いた途端、胸の奥が熱くなった。

 

 あと少し。

 あと少しで、帰れる。

 綱までほんの数百メートルだ。


 そう思って、傾斜に足を掛けた瞬間、身体がずしんと重くなった。

 気を抜いたつもりはない。

 

 ただ、ここまで歩き通して、千春はとっくに疲れていた。足首に力が入らなかった。

 ──ただでさえ、足場が沈んで歩きづらいのに。

 白い砂礫は照り返しもひどい。少し頭もふらふらとしてきていた。 


「ちはる」


 背後で声がした。

 振り返りそうになって、必死にこらえる。


「一歩一歩でいい」


「うん」


「足を上げろ」


「うん」


 返す声が震えた。

 自分で思っていたより、余裕がなかった。


 右足が、小石を踏んだ。

 ほんの小さな石だった。


 けれど、靴底の下で、それが転がった。


 右足首が嫌な角度に傾く。


 つんのめった体勢を立て直そうとした左足も、砂に取られた。


 声も出ないまま、白い地面が迫った。


 ──だめだ。


 背後であの音がした。


 かち、かち。


 千春の膝が、とうとう砂についた。 

 身体が地面の上を滑る。


 ──もう、だめだ。


 細かな砂が、掌と膝をざらりと擦った。

 熱にも似た痛みが走る。

 それは、誤魔化しようのない現実の痛みだった。


 ──転んだ。


 そう思った瞬間、首の後ろが熱く湿る。

 送り犬の息がかかっていた。

 

 近い。

 さっきまで半歩後ろにいたはずのものが、すぐそこにいる。ぐるる、と低い音がその喉から鳴っていた。


 千春は地面に転んだ姿勢のまま、動けなかった。


 振り返ってはいけない。

 けれど、振り返らなくてもわかる。


 送り犬が、自分を食べる位置にいる。


 歯の音が、もう一度鳴った。

 今度は、かち、という小さな音ではなかった。噛みしめるような、ぎりぎりとした音だった。


 千春の喉は、うまく動かない。背中が、じわりと冷えた。


「ちはる」


 湿った、低い声が耳朶を打った。


「……腰を、掛けただけ、だな」

 

 歯の鳴る音は続いていた。耳のすぐ裏側で、送り犬は音を立てて唾を飲み下す。

 それでも犬は、言葉を選ぶように続けた。


「転んではいない。そうだな?」


 それは、確認というより、言い聞かせる口調だった。

 千春にか、送り犬自身にか。そこまではわからない。


 けれど、そういうことにするしかなかった。


「うん」


 声が掠れた。


「転んでないよ。これは座っただけ」


 獣の荒い息が、首筋と耳を撫でる。

 自分の汗なのか、犬の呼気なのか、首筋がじっとりと濡れていた。


 それでも、送り犬は千春を食べなかった。


「……立てるか」


 少しの間を置いて、そう言われた。

 千春は頷き、手を地面につける。


 でも。


「……すぐには、無理かも」


 足が震えていた。膝に力が入らない。


 立たなければいけない。

 月が落ちる前に、綱をくぐらなければいけない。

 わかっているのに、身体が言うことを聞かなかった。


 千春は唇を噛んだ。

 ここに長く座っていたら、いけない。

 座っただけだと言い張るにも、限界がある。

 送り犬がどれだけそう言ってくれても、自分が動けなければ、きっと──


「ちはる。字は」


 ふいに、送り犬が言った。

 その声が、さっきよりわずかに遠くなっていた。


 距離を取ったのだ。食べないように。そう思っただけで、胸の奥がぎゅっとなった。


「字って?」


「名前の字は、どう書くんだ」


 千春は、すぐには答えられなかった。


 それが、千春が座っていてもいい理由を作るための言葉だと気づくのに、少し時間がかかった。

 弱って座り込んでいるのではない。送り犬に、名前の字を教えているだけだ──そういうことに、してくれようとしているのだと。


 千春は、震える指を砂の上に置いた。


 指先で線を引くと、砂はすぐに崩れかける。

 千春はゆっくりと、深く指を沈めて字を書いた。


 千。


 春。


「千春」


 自分の名前を、声に出す。


「千は、たくさん。春は……春」


 指先についた砂を見ながら、千春は続ける。


「千回くらい春を迎えられるように。長生きできるように、って。そういう意味なんやって」


 送り犬は黙っていた。


 砂に書いた字が、月明かりの中で淡く浮いている。風もないのに、細かな砂が少しずつ線を崩していく。


「おばあちゃんが、言ってた」


 千春は小さく笑った。


「いい名前やろ、って」


「……千春(ちはる)


 送り犬が、低く繰り返した。


「うん」


「長く、生きるように」


「うん」


 歯の音は、もう聞こえなかった。


 千春は手をついた。膝に力を入れる。


「立つね」


 誰に断るでもなく、そう言った。足はまだ震えていたが、どうにか立てそうだった。


「行かなきゃ」


 ろくに砂を払うこともせず、ゆっくり立ち上がる。

 擦れた膝がひりひりとして痛かった。

 手のひらにも顔にも、砂が張り付いてざらついた。


 それでも、顔を上げる。

 綱は、もう目の前だ。


「もうちょっとやから、がんばる」


 ひとりごとのように呟き、歩き出す。

 そうして、少し進んでからだった。


「……以前送った、あの男は息災か」


 送り犬がそう問うた。


「え?」


「腰を抜かした男だ。おまえは、あれの子孫なのだろう」


「ああ……ひいひいおじいちゃんのこと?」


 千春はさっきの話を思い返しながら、少し困った。


「会ったことないよ。私が生まれる前に亡くなってる」


「なくなる?」


 送り犬の声は、本当に意味がわからないようだった。


「百年以上前の話やもん。人間は、そんなに長く生きられない」


「千回の春を願うのにか」


 千春は言葉に詰まった。


「……それは、あくまで願いやから……」


 送り犬はそれきり黙っていた。

 足音だけが、後ろからついてくる。


「送り犬は、長生きなの」


「数えたことがない。……おまえたちに比べれば、そうなんだろう」


「じゃあ、それこそ千回の春も迎えられるんだね」


 綱はすぐそこだった。

 白い紙片が揺れている。

 あと十歩。


 背後の犬は黙っていた。

 月が、綱の真上にかかっている。


「送り犬?」


 返事がない。

 あと八歩。


 もう帰れる、その期待と安堵に、わずかなさみしさが滲む。

 千春は、犬の低い声がもう少しだけ聞きたくなった。


「送り犬。もう少しだけ話したい」


「……なんだ」


 やっと返ってきた声は小さかった。


「ここを出たら、もう送り犬には会えないの?」


「……望んで迷い込める場所ではない」


「そっか……そうだよね。さみしいな」


 傾斜に足をかけ、身体を持ち上げるようにしてまた一歩進む。

 あと六歩。


「さみしいとは、なんだ」


「また会えたらいいのにって思うことかな」


「……理解ができない」


「ナンジが心を欲しがるのに、ちょっとだけ似てるかもね」


 そう言うと、背後の足音が聞こえなくなった。

 砂に音を吸われているのか、それとも綱までもうわずかなのを見て、送り犬が止まったのかはわからなかった。


「最後だから、言わせてね。ここまでありがとう」


 あと四歩。綱はもう目の前だ。


 送り犬の声がぽつりと落ちる。


「……今ほど、なにかを惜しいと思ったことはない」


「さっき、食べ損ねたこと?」


「違う」


 そこから言葉は続かなかった。

 ざっ、と尾で砂を払うような音を鳴らしたあと、送り犬は言った。


「だが、おまえを帰す。はやく行け」


 千春は意味をつかみきらないまま頷いた。

 一歩、また一歩と身体を前へ動かす。


 木の杭に手をつき、綱の向こうを覗き込む。

 揺れる白い紙片が頬を掠めた。


 向こう側には、煌々と光る夕日が見える。

 茜色に染まる、見慣れた景色も。


 草が伸び放題な畑。

 その脇にある平たい岩。

 祖母の家の瓦屋根。


「綱をくぐれ」


「うん」


 千春は振り返らずに、「送り犬」ともう一度だけ呼んだ。別れの言葉を続けたかった。

 しかし、道中ずっと聞いてきた低い声が、それを阻むように、「千春」と先に名を呼んだ。


「千はたくさん、春は春、だな」


 さっき教えたことをなぞるように送り犬は言った。


「うん。そう、そうだよ。それが私の名前。送り犬も、この先、千回の春を迎えられるように、長生きしてね」


 少しだけ顔を横に向ける。振り向ききらないまま笑って、そう伝えた。


 千春は屈み、白い綱をくぐった。足の下で、砂が土に変わる。


「千回、春が来ても──」


 綱を隔てて低い声が落ちた。


「おまえは、もう来ないのだな」


 最後に、その声だけが耳に触れた。

 

 顔を上げて、振り向いたときにはもう、金色の目はそこになかった。


 白い砂礫地も、二本の杭も、低い綱もない。

 おかしな月も、もう空に浮かんではいなかった。


 千春は、祖母の家の裏手の道に立っていた。


 踏み固められた土道に、夕日が木の陰を長く伸ばしている。


 まだ、気持ちがうまく切り替わらない。


 だって、手のひらには、白い砂が少しだけ残っていた。指先には、自分の名前を書いた感触が。

 耳には──送り犬のあの低い声が。

 

「千春ー?」


 祖母の家のほうから、母の呼ぶ声がした。


「お母さん!」


「どこにおったの。ご飯、もう準備できたよ」


 窓から身を乗り出すようにしていた母は、千春の服装を見て目を丸くした。


「え、どうしたんその格好。転んだの」

 

「うん。でも、いま、帰ったよ」


 祖母の家のほうへ歩き出す。もう背後からあの足音はついてこなかった。


 やわらかな風が、山のほうから吹いた。

 千春は手についたままの砂を、そっと握りしめた。


 ◇


 それからも犬は、道を外れた人間を送った。


 山には幾度も春が来た。


 沢の氷がゆるみ、湿った土の匂いが変わるころになると、犬はふと耳を立てる。


 春がどこから来るのかも知らないまま、首を巡らせ、一人の女の足音を探した。


 長い年月のなかで、先に薄れたのが声だったのか、後ろ姿だったのかは定かではない。


 ただ、犬は今もときおり呟く。


「千は、たくさん。春は、春」


 その名前だけは、いつまでもいつまでも覚えていた。

 

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