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未来を奏でる音色は

作者: Tuku

吹奏楽部に所属している佐々木(ささき)玲奈(れな)はコンクール出場するためオーディションに出るのだった。

狭い教室にトランペットの音が響き渡る。


私は結構人数のいる吹奏楽部の部員の1人。


明日にはコンクールに出場するメンバーのオーディションが待ち受けている。


だから私はいつも誰もいなくなった教室でトランペットの練習をしていた。


「あと一回だけ…」


それだけやって帰ろうと思っていたら…


キーンコーンカーンコーン


と。いつの間にか時間は過ぎていたようで完全下校を知らせるチャイムがなる。

私は急いで楽器を片付けて昇降口に向かう。


するとそこには同じくトランペット担当の坂本(さかもと)結衣(ゆい)が焦って靴を履き替えていた。


きっと結衣も練習していたのだろう。

すると結衣がこちらに気づいたようで


「あっ玲奈(れな)さんも練習?」

「う、うんってことは坂本さんも?」

「そうだよ。明日はもうオーディションだからね」


名前覚えてたのか。彼女と違ってあまり目立つような人間じゃないんだけど…


「それじゃあ。私こっちだから。明日のオーディション頑張ろうね」

「うん。またね」


その後、夜まで何事もなく時間は過ぎていった。


ベットに入る…が眠れない…

そりゃそうだ。明日にはオーディションが控えているのだから。


眠れないからと思考を巡らす…がなぜか悪いことばかり考えてしまう。


明日のオーディションで負けてしまうのではないか?だって自分には実力がない。部活内の誰も私に興味を示さない。それほど実力がないのだから。


それに比べて結衣は?

周りから絶賛され部長を務めるような人物。

はぁ…もう考えるのはやめよう…


待ちに待ったわけのないオーディション当日。


パートごとに呼び出され1人づつ演奏していく。

緊張感が漂っている。周りの空気は重くどんよりとしていた。


ついに私の名前が呼ばれた。


心臓がバクバク鳴っている。


そんな中で私はいつも通りトランペットを構えて演奏を始める。

トランペットの大きな音が音楽室に響き渡る…がそれでも心臓の音はかすかに聞こえていた。


演奏を終えて音楽室を後にする


失敗はしてない。きっと大丈夫…

そう自分自身に言い聞かせる。


その日の夜もまた眠れなかった


次の日、重いまぶたを持ち上げ、結果を確認すると…


コンクールメンバー

トランペット担当


一番上には当然、坂本結衣の名前があった。

そこから下に辿っていくが私の名前はどこにもない。


落ちた。


なんで…どうして…いや…そりゃそうか…

はぁ…コンクール…出たかったなぁ…


その日の帰り校門をくぐろうとすると


「あの玲奈さん…」


そう結衣が話しかけてきた。


「坂本さん?どうしたの?」

「その…オーディションの…」

「あぁ…別に気にしてないからさ。コンクール頑張ってね」


私は結衣の顔を見ずに淡々と返事をする


「うん…ありがとう」


という彼女の返事を聞いてすぐに帰路に着く。


家に着いて早々、トランペットの入ったケースを投げるように置いて自分のベッドに飛び込み、枕に顔をうずめる。


あぁ…もう…今までの練習はなんだったんだよ…

何が足りなかったんだろ…


ドサッ


音がした方向を見ると机の上の棚に置いていた書類やらファイルやらが崩れ落ちていた。ケースを落としたときの振動だろうか…

まぁなんだっていい…気を紛らわせるのにちょうどいいだろう…


そう思い立ち整理を始めて数分、小学生の頃の卒業アルバムが目に入った。


懐かしさを感じながらページを一つずつめくっていく。


クラスページまできた。クラスのいわゆる陽キャと呼ばれる男子は『将来の夢』の欄にお金持ちになるだとかプロゲーマーになるだとか書いていた。


そういえば私はなんて書いてたっけ…過去の記憶を辿りながら探すと…


『色んな人の心に残るような演奏がしたい』


小学生らしい拙い文字で書かれたその言葉は私に強く深く突き刺さった。


あぁ…そっか。私に足りなかったもの…それが何かわかった気がする。


次の日、部室を訪れ深呼吸を置いてから演奏をする。


コンクールに出るための演奏ではなく人を楽しませるような演奏を…

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