モテ期
学校が終わり、よくわからないままみきと駅に向かうと他校の制服を着た男子が近寄ってきた。気を使ったみきが『先にホーム行ってるね』と、行ってしまった。すると、
『いきなりごめんね。木村といいます。こないだ見かけたときに一目惚れというか…』
と、身長168㎝前後の色白男子は照れ臭そうに言った。
『そうなんですね。ありがとうございます。嬉しいです』
『こないだは友達の彼女だったから無理って、思ってたけど…別れたって聞いてすぐ告白したくなりました!付き合ってください!』
《マジかぁ…てか、こいつ誰?》
前回で学んだわたしは、
『ごめんね。別れたばっかりだし、そんな気になれなくて…』
と、丁寧にお断りできた。入学して2ヶ月がたったころだった。
そして、じめじめと蒸し暑い梅雨の夜。自宅にいるとまた電話がなったのだ。男子の声で…
『8組の橋本といいますが、川田裕真さんですか?』
『はい、そうですが。』
『明日の放課後、会ってもらえませんか?』
『ん?どうゆうこと?』
『いつも教室の前を通るたびに気になってたんだ。時間作ってもらえるかな?』
『あ…はぃ…』
『よかった、明日昇降口で待ってるから』
と、電話は切れた。
《来るもの拒まず》の性格なのか…よく簡単に返事ができたものだ。それにしても立て続けにこんなに告白されるなんて、わたしってそんなにかわいくなったのかと自分でも驚いていた。
翌朝、みきに8組の橋本くんの話をしてみた。
『マジ!すごいね。やっぱりゆま、かわいくなったもん』
『そうかなー』
『うんうん。休み時間に8組覗いてどんな男子か、見てこようかなー』
『いいね、それ。審査おねがーい』
そして、放課後昇降口に行くと彼らしき男子が待っていた。
『橋本ですが…』
といいながら、近寄ってきた。今までの男子に比べると背の高い感じがした。身長180㎝はあるであろう体格で細身の彼。身長150㎝のわたしは少し見上げながら話す。
『話って、なんですか?』
『ここじゃなんだから、駅まで話ながら一緒に帰っていいかな』
『はぃ』
『よかった、じゃ行こうか』
そして二人は駅に向かい歩き始めた。みきも慣れてきたせいか、先に駅のホームに行ってるらしい。
『今日はわざわざありがとう。実は川田さんのことずっと気になってて…』
と、話し出してきた。《あーなるほどね》3回も続くと慣れてくるものだ。
『実はこないだの大野と木村も友達でさ。二人共ダメだったって聞いたから…』
『二人の友達だったんだ。びっくり。わたし、よくわからないまま返事しちゃって。なんだか申し訳なかったよ』
《3人目ともなると、会話もちょっと慣れてきたかも》なんて考えていると。
『とりあえず友達でいいからさ。おれじゃダメかなー』
『なんか、ごめーん。付き合うとかまだちょっと…友達くらいならいいけど。でもだからって別にたいして変わらないよね笑』
『そっかー、残念だなぁ。でも友達って言ってもらえただけで嬉しいかな』
『じゃ、電車来ちゃうからそろそろ行くね。バイバイ』
『わかった。今日はありがとう』
そしていつの間にか季節は夏になっていた。制服も夏服になって、少し身軽な感じになった。
学校が終わりみきと駅に向かっていると、知らない男子が近寄ってきて
『これ読んでください!』
と、手紙を渡され…どこかへ行ってしまった。開けてみると《明日の放課後、駅前の公園で待ってます》とのことだった。みきと顔を合わせると
『明日だって。行ってきなよ。私は、こっそり覗いて見てるから笑』と、興味津々で言った。
『しかし、モテモテですごいんじゃないの?』
『そだね。自分でも驚いてるわ』
次の日、公園には行って会ってきたものの内容は同じで、以下同文だった。自分のモテモテぶりに驚いてはいたが、これでいったんは落ち着くこととなった。
クラスが女子だけだというのもあり、いろいろめんどくさいことも多い。巻き込まれないように地味に毎日を送るのも1つの生き方である。