アヒルから白鳥へ
『あー、うんうん。わかる、で?』
わたしはてきとうに答える。
『3組の大野ってわかる?大野俊樹』
『いや…わかんない』
『なんか話がしたいみたいなんだけど、明日の放課後時間ある?』
『まぁ…少しなら』
『じゃ、また詳しくは明日ねー。じゃ』
と、一方的に切れた。
《話がしたい?なんで?どーゆーこと?》
《そもそも誰と話してたのかもわからん》
そして、翌朝。一緒に通学しているみきに話した。彼女は、普通科に通っている。すると《なるほど…》という顔をして彼女は言った。
『最近ちょっと聞いた話があって。こっちじゃけっこうね噂になってるよ、ゆまのこと』
『ん?どうゆうこと?』
『気のせいだったらと思って言わなかったけど…ゆまのこと、狙ってる男子けっこういるよ』
『えー?そんなわけないよ。ブスだし』
『ゆま、自分のことわかってないな。高校進学するってなって、ちょっと茶髪にふわふわロングで、しかもコンタクトレンズ。中学のときからすごく変わったよ』
《確かに、ヘアスタイルが自由になって、眼鏡をやめたら世界変わった気がしてたかも…》
『そんなに変わった?』
改めてみきに聞いた。
『うんうん。すごくかわいいよ』
《そんなに変わったとは思ってなかった》
そして、教室に入ると田中さんが近寄ってきた。
『昨日は、いきなりごめんねー』
《あー…この女子が田中さんか》
『全然大丈夫だよ』
『今日の放課後よろしくね』
『わかった』
そんなわたしを一目見ようと、また視線が増えていた。《大野の相手って…》《あーなるほど》こそこそ話が聞こえてくる。そして、放課後。教室で待っていると、彼がきた。
『なんかわざわざごめん』
『いえ、大丈夫です』
『あの、よかったら付き合ってください』
そんな感じなんだろうとは思っていたが、やっぱりパニックになっていたわたしは、つい即答してしまった。
『あ…はぃ…』