ブスの初恋
今見返しても、けっしてかわいいとはいえない中学生の頃のわたしの写真。母親だけが《あら、かわいいじゃないの》という。
そんなわたしの名前は「川田裕真」ーー。
かわたゆうま、じゃなくてゆま。名前もたいして好きになれなかったが、これは仕方ない。
何も取り柄がない、ごくごく普通の女の子。クラスでは、目立たない女子の一人だ。
そんな中学生のわたしでも、ちゃんと恋はしていた。もちろん憧れるだけ。ちょっと派手めなかわいい子たちは、あたりまえのように堂々と恋愛していた。
男子とお付き合いしている友達もいたし、それこそあんなことやこんなことの話を遠くから聞いていた。正確には、聞こえてきたのだ。
毎日、黒髪のおさげで登校し、目の悪いわたしは、授業中は黒縁のめがねをそっとつける。ブスがよけいにブスになる瞬間でもあった。
そんなわたしにも、一人だけラブレターをくれたクラスメイトがいた。今思えば、変わった男子だった。冗談だと思い、気にも止めなかった。
男慣れしてないわたしは全く興味もなく、ただただ片思いの男子を眺めるだけの3年間で終わった。偶然にも、その彼だけがただ一人だけ3年間同じクラスだったのだ。
運命の相手かも、なんて思ったときもあったが、ブスの妄想で終わった。そして、おしゃれでかわいい女子が羨ましいとまで思っていた。
中学3年の冬、思いきってチョコレートを渡した。ブスなわたしからなんて迷惑かと思ったが、受け取ってくれただけで満足だったのに、ホワイトデーにクッキーをくれたのがとても嬉しかった。これはこれでいい思い出となる。