幕間 紅音の夢想3
幕間 紅音の夢想3
月原一騎。
私が、愛している人。
例え彼が死んだとしても、彼との思い出は私の中で永遠に残り続ける。
だから、例え何が起こっても、私は幸せだって、胸を張って言える。
――それに。
一騎が隣に居なかったこの五十年、全く良いことが無かったわけじゃない。
例えば、山崎ひかり。
私の親友であり、ダメ男好きの彼女が、まともな男と結婚できた時は心底ホッとしたし、彼女の子供達の話を聞くのは、結構楽しかった。
今も、たまに聞く彼女の孫の話を楽しみにしている。
例えば、リリア=ウォーカー。
彼女は私の上司という、私を監督しなければいけない立場だったが、私のやりたいようにやらせてくれた。
そのことについて、彼女は『紅音さんに救援要請出すこともありますし、ただのギブアンドテイクです』なんてことを言うが、実際は、ただ優しいだけだ。
死人が出ることを許さず、殺人を嫌悪する彼女が私の上司だったのは、あらゆる意味で幸運だっただろう。
そして、雲林院葉月。
彼女は、可愛い。
素直だし、優しいし、いつも一生懸命で、本当可愛らしい奴だと思う。
そんな彼女と過ごす時間は、私にとって穏やかで楽しい時間をだった。
彼女が私の相棒で良かったと、心の底から想う。
だから、私の人生は、幸せと呼べるものなのだろう。
例え失ったものが大きく、それの代わりはどこにも無いのだとしても、良い事は確かにあった。
そう、本気で思っていた。
それなのに――もう既に幸せだったはずなのに、森の最奥で、私の身に余る奇跡が待っていた。
だから、今の私の世界は奇蹟みたいなもので。
例え、いつかは失われてしまうものなのだとしても。
できるだけ長く続くよう、私自身の手で守りたいと、そう強く思った。