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第5話 ちぐはぐな結婚式

そうして迎えた王子様と聖女様の結婚式の日。

ヴィクトール王子はすぐに癇癪を起す聖女レオノーラ様の扱い方を少しは覚え、何日にもわたって我慢して付き合ってやった結果、なんとかこの日は一緒に迎えらたそうです。

しかし、どう考えても先が思いやられますと、誰しもが思っていました。


そんな中、王城の玉座の間において結婚式が盛大に開かれました。

王城のまわりには多くの民が駆けつけて祝いの言葉を口々に叫んでいると言います。

よかったですわね。

希望通り民には祝福されておりますわよ。


 

「おぉ、偉大なる神よ。ここにあなたの聖女レオノーラと、このメゼルビア王国の王子ヴィクトールの結婚を報告させていただきます。私はこの神殿長の……」

太ったよぼよぼの……失礼しました、高齢のふくよかな神殿長が聖女と王子の結婚を宣言するところから結婚式が始まりました。


この場にいる貴族たちは、みな祝福の表情を浮かべ……ていませんね。残念ながら。


「それでは、この大いなる神の子らの結婚を、どうか祝福したまへ……」


神殿長の言葉が終わると、次は王子の演説です。

特筆すべきことはなにもない空虚な内容で、装飾的な言葉だらけの無意味なものだったの割愛します。

『私は神の名のもとに聖女と一緒になり、ともに支え合って役目を果たしてまいります』と言うのになぜ半刻もの時間がかかるのでしょうか。

ちなみに半刻は日本でいう30分です。


そして、次は新婦である聖女レオノーラ様の父親の演説ですが……その席に誰もおりません。


「どういうことですの?私は正妻の子ではありませんが、確かにオルベール公爵の血を引いており、今日の演説はオルベール公爵にお願いしていたはずですわ。どこへ行かれたのでしょうか?(怒)」

会場中の貴族がなんだかなぁという顔で見つめ合う中、聖女レオノーラが怒りだしました。


「仕方なかろう……」

立ち上がり、そう言ったのは新郎の父……つまり国王陛下です。


「どういうことですか、父上?もしやこの期に及んでなにか……」

ヴィクトール王子が父である国王陛下を問いただします。


「なにかしたのは余ではなく……聖女と、そう、そこにおる貴様だ」

国王が指さしたのはなんとラザゼル侯爵……王子の伯父に当たる人物でした。ちなみに王子の母である、現国王陛下の妃はすでに故人です。


「私がなにをしたと?私は聖女としての役目をこなすため、日々民に祈りを与えておりますわ!」

そうして指さされた聖女様が国王の言葉に反発していますが……。


「つまり、こういうことじゃ。聖女レオノーラ殿はオルベール公爵の娘ではない。捏造じゃったのじゃ」

「嘘だ!!?」

「そんなはずはありません。母は確かに!」

国王陛下の突然の衝撃発言に王子も聖女も即座に否定しますが、国王陛下は姿勢を崩さず、王子たちを見つめています。


「それが嘘だとしても、聖女であることには変わりありませんな。もしオルベール公爵が栄誉を放棄されるのであれば、私、ラザゼル侯爵が聖女の養父であるクライフェルト子爵の寄り親としてかわりにお話ししよう」

ラザゼル侯爵は聖女の父親がオルベール公爵ではないことなど何の興味もないといった風に答えた。


「オルベール公爵はこの数か月、愛人とその娘を不自由な生活に押しとどめていたとずっと非難されておったが、それを関係ないじゃと?」

国王陛下は怒りを露わにしています。彼にとってオルベール公爵は友人であり、従兄妹の夫……つまり親戚でもあります。婚約破棄の際の、口から魂が抜けそうなほど衝撃を受けていた顔は私にも忘れられませんので、国王陛下の怒りが理解できます。

そして、昨夜、この情報を国王陛下に持ってきました。


「そうだったのですか。しかし、事実ではないのであればそう言えば済むこと。なにゆえこの日まで黙っていたのか。なにか後ろ暗いことでもあるのではないでしょうか?それとも、この日、この場で話すことで国民から祝福されている王子と聖女の結婚をまさか邪魔しようなどと思ったのではないでしょうか?」

「なっ……」

しかし、ラザゼル侯爵は全くひるみませんでした。むしろオルベール公爵を責めています。

許すまじ……。


「そうなのか、父上。それはさすがに酷いのではないでしょうか?まぁ、文句はやまやまだが、貴族たちに茶番を見せるわけにはいかぬし、待ってくれている国民の前にお披露目に出る時間もあるのだ。早く式を進めてもら……」


ズゴーーーーーーン!!!!!!!!!!!!!


「なんだ?」

「うわ~~~~」


突如、地鳴りのような音が響いたかと思うと、天井が崩れ落ちてきた。

この堅牢な王城の中心にある、玉座の間の天井が……。


王子は咄嗟に身を隠します。聖女のことなど頭にないようです。

その隣では聖女は落ちてくる天上を凝視して固まっています。こちらも王子が隣にいることなど忘れてしまったようです。


賢明な一部の衛兵たちによって周辺にいた貴族たちは難を逃れましたが、天井が崩れ落ちた玉座の間は大惨事です。




 

そこへ降りてきたのは漆黒の翼をもつ妙齢の女性……


 

 

『ふふふ。世界に希望をもたらす聖女と王子の結婚と聞いて、ぜひ私も挨拶をと思ってはせ参じたのですが、生きていますか?』



 

「だっ、誰だ!ここがメゼルビア王国の王城と知っての狼藉か!?」


 

難を逃れていた騎士団長が剣を構えて女性に問いかけます。


 

彼はラザゼル侯爵の長男であり、聖女を巡る策略を知っているものの一人でした。


 


『私ですか?そうですね、失礼したようです。私はレムネフィア……あなたたちが魔王と呼ぶ存在です』

読んでいただいてありがとうございます!

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